地下鉄
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/11/18 10:24:26
地下鉄の駅に行った
あなたといつも待ち合わせの場所
あなたといつもさよならの場所
「またね」と言って
見えなくなるまで見送った
「またね」がなくなった時
どうやって帰ったのだろう
ガラスの外の暗闇を見つめて
必死で涙をこらえて
でも心は泣いている
「君は強いから大丈夫」
なんてことを言うの
強くなんかない
地下鉄から逃げるように
必死で走っていったのに
駅から出ると
そこは真っ青な空
地下鉄の入り口から切り取ったように
鮮やかな色を見せる
静かに薄い雲が流れてくる
私はロイヤルミルクティー
あなたはカプチーノ
シナモンの香りに包まれて
一日の余韻を楽しむ様に
口数も少なく
心弱い人に会ったのね
でも私も強くなんかない
泣いて 泣いて 泣きはらして
あなたが忘れられない
裏切りにあったよう
私はまたあの駅に行く
あなたは降りてこない
いつか忘れる日が来ても
この駅は残るだろう
人々を飲み込んで交差していく
偽物の入り口に
人は入っていく
そこにあるものが
本当のものじゃないことを知りながら
暗い闇のかなたに浮かぶものは
目覚めた恋と本当の愛
闇の中でも目覚めた愛は
本当の光を浴びに進んでいく
嘘の偽物の光が私たちを照らす
そんな中でも出会いと別れが起き
笑いと涙が生まれ出ている
それらはすべて本物
偽物の光の中に置き去りにされ消え去っていく
その残像を求めて
人はまたやってくる