夕暮れ
- カテゴリ:小説/詩
- 2019/11/22 10:48:46
夏が去って
秋が冬に変わる頃
あなたは別れを告げた
理由を聞く言葉さえ出なかった
あなたは席を立って行った
私の指に輝くリング
あなたが初めて買ってくれたもの
はめ通しで傷だらけだけど
傷の分まで思い出があった
それなのに
指に食い込んで外せなくなってる
まるで私の中のあなたのよう
私の心に深く深くしみ込んで
消すことなんかできない
外せないリングの様に
訳が分からない 何か言って
悪いことでもいいから
あなたを苦しめたことでもいいから
本当のことを教えてほしい
でも無理ね
じっと座ったまま
外の人を見ている
皆幸せなんだろうか
心暗い人もいるんだろうか
同じような顔をして流れていくけど
ずいぶん時間がたった
たったような気がする
あなたを見送って
カフェオレをもう1杯
静かなジャズが流れている
ずいぶん日の入りが早くなって
夕暮れが出番を待っている
2敗目のカフェオレを残したまま
どこへ帰ろうというのか
あなたの元じゃないのは確かだ
苦しむのはもう嫌
だから都会に背を向ける
どこにあなたがいようとも
もう目を合わすことのない
闇が街を飲み込む頃
見上げても星は見えない
それが苦しみの原因となっている
行先を失った心のしこり
バランスを失ったかのように歩むあなた
思い出が沈んでいる
夜の街へと飲み込まれていく