ティラミス(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2020/02/07 23:11:14
「真由美に、ちゃんと言ってね。」
そう言うと、妻は、珈琲を口に運んだ。そしてちらりとこちらを見る。40歳も半ばになったが、目元に小じわもなく、肌も艶々している。ドレッサーの引き出しに収まらず、溢れ出している数々の化粧品のなせる技だろう。
しかし、娘に言っても、言うことを聞くとは思えない。新聞を読むと、半数の女子大生が父親のことをウザイと思っている。おそらく、父親に相談すると、論理的に説明されて、上から目線だとか、そんなことは、言われなくても分かっていると感じるのだろう。こういう時は、会社で使いなれている論点をずらす作戦が有効だ。
「ママと初めて、旅行に行ったのも学生の時だし、真由美にだけ、だめだというのは、ちょっと理不尽じゃないかな。それに、真由美も大人だし、信用をしてあげよう。それより、俺たちも、久しぶりに二人で熱海にでもいかないか。」
「旅行に行くのが嫌じゃないの。付き合っている彼がダメなの。長男で一人っ子よ。結婚したら、お正月もお盆も帰ってこないかもしれないわ。お正月に、あなたと二人だけなんて嫌よ。」
新聞を手に取り、将棋の棋譜を眺めた。先手6五銀、後手8二香、7三馬、同金・・・・・・全く頭に入らない。この家に自分の居場所がないと思いながら、新聞を読むともなく、視線だけを動かしていたら、『男の料理教室、受講生募集』と書かれた広告が目に入った。
妻に家事を任せて、これまでキッチンに立ったことはなかった。翌日、会社から料理教室に電話をかけ、受講の申し込みをした。
毎週、土曜日に料理教室に通うようになったが、料理がこんなに楽しいものだとは思わなかった。魯山人は、『自分の料理を他人に無理強いしてはならず、相手のことをよく考慮し、医者が患者を診て投薬するように、料理も相手に適するものでなければいけない。』と言った。
女性は、その姿勢が、自然に出来ていると思う。食べてくれる人の姿を想いながら料理を作っているのだろう。食べてくれる人がいるから料理をしているとも言える。
男性は、料理自体を楽しんでいるように思う。私には、工作やプラモデルを作っているように、料理をしていることが楽しく、食べることや食べてくれる人がいるかどうかは二の次だ。
料理教室は、男の料理と銘打っているだけあって、手の込んだ料理を習うことは少なかったが、2月になりバレンタインが近づいたころに、お菓子作りに挑戦することになった。
若い講師の女性が、誰にもチョコを貰えなくても、自分を作ればいいんですよと言い、ティラミスづくりの講習がはじまった。材料を正確に量り、かき混ぜて、グラタン皿によそって冷やすと出来上がり。なんとも簡単である。
出来上がったティラミスを見ていると、独身時代に妻とデートしていた時のことを思い出した。イタリアンが大ブームになり、スパゲッティーがパスタと呼ばれるようになり、デザートは決まってティラミスだった。
ティラミスの語源は、『私を元気にして』や『私を気にかけて』だ。妻や娘の笑顔が浮かび、私は、料理教室で食べずに、家に持って帰ることにした。
夕飯が終わった後、私は、冷蔵庫からティラミスを出し器に盛って、妻と娘の前に置いた。
「今日、パパが作ったティラミスだ。そんなに甘くないし、美味しいぞ。」
「私、ダイエット中だから、いらない。」
「私も、夕飯食べ過ぎたから、冷蔵庫に入れておいて。」
そう、男の料理は、食べてくれる人がいるかどうかは二の次だ。
たんまりと蓄えがあるのでしょう。それだけ、売れていたということですね。無料で、お城の中で、白い恋人を作っているところを見ることができるのは、かなりお得なような気がします。海外に出張に行く時の、お土産は、白い恋人が喜ばれると聞きました。日本のスイーツのレベルは、相当高いみたいです。
あったって事でしょうか。
白い恋人パークは確かにアジア系の人しか工場見学がいなかった感じもしますけど
お菓子は傷まないだけに賞味期限が気になった今日のニュースでした(^_^;)
ココアパウダーがかかっていて、少し苦いエスプレッソ。それと、甘いクリームの対比を楽しむ大人の味ですね。向かいのファミマを味わってみることにします。
久々に食べたら美味しかったです(^O^)
明日も仕事なんですね。休日も働いているとなると、ティラミスだけでは足りませんね。イチゴショートも買いましょう。
でも、食べるのは好きかな~久々にティラミス食べたいですね♫明日の仕事帰りに
ケーキ屋さんに寄ってみようかな~いま、売ってるかな~どうかな~
それは、ひろあきさんの娘さんが、優しいからです。そして、お母さんが、じゃあ、私が代わりに食べてあげる。パクパクという展開になるのでしょう。
「夜、食べると太るから明日食べるから置いといて」かと。
そうなのだ。特に、自分は外しまくりだ。当たったことがないと言っても過言ではない。そもそも、当てる以前に的に届いていない気がする。まずは、女心を理解するより、筋トレから始めないといけない。
悲しい結末になるのですね(爆笑)
ティラミスの泣き言が聞こえてきそう^^
男性って、良かれと思ってやったことが、ポイントをはずすこと、よくありますよね。
でも私もそうかもしれない。自分にとっていいことと、他の人にとってのうれしいことって
違うことありますし。お父さん、めげないで♪
看板に偽り有りと言われないように、ティラミスまで、話を持っていった努力を褒めていただきたい。瓦煎餅の話も面白そうだけど、どこまで知名度があるか不明だ。名物かまどだと、香川県民と岡山県民にしか、通じない気がする。
『瓦せんべい』とか『かまど』とか『和三盆』とかに変わるかと思ってました。
プラモデルを作るときも楽しいけど、おもちゃ屋さんで、どれを買おうか悩むのも、とても楽しい。リアルにするために、塗装をするけど、少ししか使わないラッカーも買ってしまう。たくさん、プラモを作れば、ラッカーも使い切れるけど、たまにだと、塗料が余ってしまう。同じように、我が家には、使いかけのライスペーパー、チリソース、カルダモン、タイム、何だか分からないアジアの麺が戸棚に溢れかえっている。なんと、無駄の多いことだろう。
冷蔵庫にあるもので夕飯作ってくれた方がいいのにーって主婦である友人がぼやいてますw
どんまい。
チーズと生クリームが入っているから、カロリーは高いけど、カロリーは活力そのもの。おそれては、いけません。タピオカは、もう終わりです。この夏は、餡餅雑煮のブームで間違いありません。
そんな話ありましたねぇ
今、タピオカドリンクがカロリー高いと言われて・・・
言われても言われなくても、もう流行は終息かな?
家族を守ろうとするスズランさんの気持ちが伝わってきます。その秘訣は、お父さんが娘さんの耳かきを使わないことです。名前シールを貼っておいてあげましょう。
環謝さん
ティラミスは、ようやく半分食べ終わることができた。これまで、スイーツを作っても、コンビニで作った方が安くて楽だと思っていたけど、ティラミスは自分で作った方がいい。二男の人気商品は、予約をしておきましょう。
これが沖人さんのことなら、うちに持ってきてもらえれば、間違いなく完食させて頂きますよ(*´∀`*)
昨日次男が実習で作ったあまおうのエクレア(←1個だけ持って帰ってたw)を食べ損ねた母より(-_-;)
こういう家族って、ありますよね。
やはり、私の家族には近づいて欲しくない一家だ(;´Д`)
これが一般的になりつつある今、
見る目を養えてるように祈るしかない(。-人-)☆
いや、娘にも妻にも、蔑ろにされた寂しいお父さんの話だ。小津安二郎の映画に、「さんまの味」というのがあって、いいおうちの出の奥さんに、平凡なお父さんは、いつも馬鹿にされていたけど、一緒にお茶漬けを食べたら、分かり合えた。そのあと、仲良しになったという話だった。一緒にご飯を食べるのが大事。あずさちゃんは、お父さんが作ったティラミスを残さず食べてあげましょう。
のお父さんって感じる~
家の中でちょっと鈍くさくても、外で沢山嫌な思いもして
家族を守ってくれてるのだから自然体でいてくれたらそれでいい
自分の父も、下手くそなインスタントラーメンくらいしか作れずに、お茶漬けと漬物や、残り物ばかり食べていました。だから、昔は、佃煮や漬物が家にあったのでしょうか。今は、料理男子が増えたので、そのうち、キッチンの主導権争いが始まるかもしれません。
父親が料理好きって楽しそうだと思いました^^
思い出のティラミスっておしゃれ~
妻よ気づいて笑
生意気でも娘は娘。パパにとっては、目に入れてもちょっとだけ痛いくらいの可愛いらしさです。ティラミスを食べて欲しかったのだと思います。食べれば、臨時のお小遣いも貰えたでしょう。
でも、離れないのが家族といふもの
私には、、、、ない
ティラミスは、フィンガービスケットがクリームの水分を吸って膨らんで、弾力のあるスポンジケーキのようになる。大抵のスイーツは、出来上がりを想像をしながら作っているけど、想像と違った意外な出来上がりとなり新鮮な驚き。おっと驚いたスイーツ第1号になりました。
私なら喜んじゃうけどなぁ~
はぁ~食べたい(*´ސ`)。。