バレンタイン
- カテゴリ:自作小説
- 2020/02/15 18:04:35
遠い昔、昭和の時代の話である。
太一は、給食を食べ終わり、ごちそうさまの合図とともに、野球をしに校庭に向かって走り出そうとしていた。すると、同級生の茜から、「ちょっと」と言われた。茜は何も言わず、ついて来いという雰囲気を醸しながら歩き始めた。
茜は、教室を出ると、端っこにある音楽教室の隣の階段を登り、踊り場で立ち止まった。手提げ袋の中から、「はい」と言って、紙袋を太一に渡した。茜は、すたすたと教室に戻り、太一は踊り場に取り残された。
小学校3年生でも、紙袋の中身がチョコだろうということは想像できた。太一は、誰かに見られていないか辺りを見回し、紙袋を身体の後ろに隠しなが教室に戻り、急いで、ランドセルの中にしまった。
幸い、男子は校庭に出ていたので、誰にも見られていない。太一は、ランドセルを気にしながら、野球をしに校庭に向かった。
午後の授業が終わり、家に着くと、ランドセルから紙袋を取り出した。その中には、不二家のハートチョコが入っていた。昭和10年から続くハート型のピーナッツ入りのチョコ。それと、カードが入っていた。
カードには、『ホワイトデーに、友達ならばキャラメル、恋人ならばホワイトチョコ、結婚ならばマシュマロを贈ってください。』と書かれていた。
どの選択をしても、茜にはお返しが返ってくる。女性は、幼い頃から、したたかである。太一は、9歳にして人生の選択を迫られた。愛読書の小学3年生にも、コロコロコミックにも参考となる情報はなかった。
太一は、その手の分野に一日の長のあるかっちゃんに相談することにした。放課後、かっちゃんの家に遊びに行き、テレビゲームのブロック崩しをしながら、質問をした。
「かっちゃん、チョコ貰った?」
「ゆかりちゃんから、手作りチョコを貰った。」
かっちゃんは、ピコピコとコントローラーを操りながら答えた。チョコを競っているわけではないが、太一は、手作りチョコに負けたような感じがした。
「お返しは、どうするの?」
「ママが、クッキーを焼いてくれるって言っていた。」
母親のことをママと呼んでいるのにも驚いた。太一は、かーさんと呼んでいた。それに、母親公認のカップルであることにも驚いた。太一は、母親に見つからないように、勉強机の引き出しに隠していた。太一は、かっちゃんは参考にならないと、相談することを諦めた。
しばらく、お返しのことは忘れていたけど、お腹が減ったときに、何度かハートチョコを食べてしまいたい誘惑にかられた。太一は、食べちゃいけないような気がして、大事に机の中にしまっておいた。
ホワイトデーが一週間後に迫った。お返しを準備しないといけないが、まだ、お小遣い制になっていない太一には、お金がなかった。貯金箱の中も空っぽだった。母に、3月号の小学3年生とコロコロコミックを買うからとお小遣いをもらった。太一が、初めて母についた嘘である。
太一は、茜ちゃんの友達になりたかったし、もっと、仲良くなりたかった。しかし、結婚ということはピンとこなかったが、選択肢として提示された中で、最上位のような気がして、マシュマロにしなければいけないような気がしていた。
迷ったあげく、太一は、スーパーでキャラメルとホワイトチョコとマシュマロの全てを買った。キッチンから手ごろな紙袋を選ぶと、友達になってねと書いたカードを一緒に入れた。
3月14日の昼休みに、茜に「ちょっと」と言うと、階段の踊り場に向かった。紙袋を渡すと、茜はその場で紙袋を開けた。茜は、怪訝そうな顔をすると、太一に向かって、「ゆうじゅうふだん」と言うと、教室に戻って行った。
太一は、50円のハートチョコのお返しに、小学3年生とコロコロコミックの購入費を費やし、それでも満足しない女心が理解できず、9歳にして、つるかめ算より難しいものがあるのを知り、野球をしに校庭に向かって走っていった。
誕生日のプレゼントは、ネックレスか、バッグか、海外旅行のどれかでいいわよと、早速、旦那さんに試してみましょう。
ああ、こうすれば良かったんだなと、今更ながら勉強になりました(笑)
優柔不断と言うのもおませさんですね( *´艸`)
ここで、「まずはゆっくり仲良くなっていきたい」と言えば
上級者になったのかしら!?
私にもまだまだ難しいです。
間違った人が他にもいたから、案内が悪かったのでしょう。きっと。
会議が1時からだと思ったら、1時半からでした。急いで、お昼ご飯を食べたのに、のんびり食べればよかった。喫煙ルームで、時間潰し中。
今ので確認とれました( ̄▽ ̄)
やっぱり実話やったんですね、わかります(*´-`)
てか、優柔不断でもかわいいじゃないですか(*´꒳`*)
創作である。子供の頃の沖人君は、段ボール箱いっぱいのチョコをもらって、お返しに、お小遣いの前借りをしていたはずである。
このお話は、沖人さんの過去の実話なのかしらん??( ゚д゚)
いや、平均年齢は、相当高いような気がしています。しかし、みなさん、気だけは小学生の輝きを保っているのでしょう。
沖人さんの読者って若い人が多いのかな?
夜のこの時間になると、目がぼやけて小さい字読むのつらいわぁ・・・。
ハートチョコは、今は88円だったかな。バレンタインの前に、coopのレジの横に置いていました。ちょこは、きっと、机の引き出しに入れたまま忘れてしまって、見つけたお母さんが、食べちゃったのでしょう。
で、ハートチョコはいつ食べたのかな?!
素直だね~。コメントありがとう。友達になってと書いたのは、照れ隠しで、ほんとは、仲良くなりたかったのでしょう。でも、小学3年生だと、仲良くするのがどういうことか、よく分かりませんね。女子と遊ぶより、男子と遊んでいた方が楽しい頃です。野球やサッカーが楽しくてしかたない頃。今は、ゲームかな。
友達になってねと書いた手紙が本心なら、キャラメルだけでよかったのにねw
お返しの意味が、今と昔では変わってるとは知らなんだ@@
誰からもチョコを貰えなかったので、残念ながら、3月14日はお休みです。
確かに 私が若かりしときはそうでした(*‘∀‘)
が!今の時代もそうなのでしょうか?
今年の3月14日は 心温まる微笑ましい素敵な物語を
是非、『沖人さん女性ファン』にプレゼントしてください♪
宜しくお願いいたします(✿◡‿◡。)ペコリ
きっと、お返しのお菓子の意味を気にしている人はいないでしょう。トリュフチョコが、ティファニーやブルガリに変わることを期待しているのではないでしょうか。
なんか・・・お返しって怖いですね~
だって~昭和生まれの男性が昭和感覚で『マシュマロ』を贈ったのに
受け取った女性が令和の意味で受け取ったら・・・・
結構、修羅場ですよねぇ~怖い(/ω\)
ハートピーナツちょが昭和10年からあるのは、驚きでした。昭和の頃は50円。今も80円くらいでしょうか。卵と並ぶ、物価の優等生です。
ゴディバも美味しいけど不二家のハートピーナッツチョコもとても美味しいですよね♫
昭和と令和では、お菓子の持つ意味が変わっているらしい。お返しは、マカロンかキャンディーをリクエストをしましょう。
マシュマロ :あなたのことが嫌い
クッキー :あなたは友達
キャラメル :一緒にいると安心します
キャンディー:あなたが好きです
チョコ :特段の意味はないらしい
マカロン :あなたは特別な人
オレンジ先生
そうです。短刀直入に聞けば答えが分かります。しかし、あーでもない、こーでもない、あーどうしようというのが、恋の悩みで、それが楽しいのでしょう。純粋に好きかどうかだけで悩めるのが若者の特権。若返りたいです。
カードにそう書けば
1ヵ月後には
相手の気持ちがわかったのですね・・・。
良い方法ですねー^^
私の昭和の子供のころは・・・アメ、マシュマロ、クッキーがお返しの定番でしたw
じゃぁ~クッキーは?キャンディは何でしょうか?
まだまだ、バレンタインの過ごし方の最終レベルに達していません。ボランティア精神に目覚めなければいけない。ここに、チョコを一個も貰えなかった男がいる。さあ、今からでも遅くない。
寧々子さん
女性をひとくくりにしてはいけませんが、地下鉄の空いている席にダッシュするのは、ちびっ子とおばちゃんです。
れんげさん
昭和の時代は、女性は、受け身だったのですね。それなら、一層、バレンタインは大事な日だったと思います。れんげさんは、手づくりチョコで果敢に攻めたのでしょう。
ひろあきさん
優柔不断とは、軽薄ではない。沈思黙考ということです。自分のように、何も考えずに行動するタイプは、きまって失敗するので、優柔不断もそれほど悪いことではないと思います。
Wineさん
今夜、子供が眠ったら、机の引き出しを開けてみましょう。チョコが5つくらい出てくると思います。ホワイトデーには、美味しいクッキーを作ってあげましょう。
麻衣さん
子供は切り替えが早いので、太一君も緊張の一瞬から解放されて、野球に夢中になったでしょう。小学校3年生だと、恋より野球やドッチボールです。茜ちゃん、男を泣かす女性に成長したでしょう。
茜ちゃん、わずか9歳にしてこの言葉の意味を
正確に理解したうえでのご発言だったんですねo(≧∇≦o))))
ホワイトデーの、太一くんと茜ちゃんの緊迫のツーショット♡♡
笑い転げながら拝見させていただきましたw
「ゆうじゅうふだん」の部分にひらがなを使われている辺りに
沖人さんの文才をヒシヒシと感じ、より一層尊敬してしまいました_(_^_)_ハハー
おませサンだった茜ちゃん・・・今頃どんな女性になっているんでしょうね^m^
登場人物が小学生だから、ウチの小学生と比べてしまいます。
(何度も言われたW)
茜ちゃん的には、どれを選べば正解だったのでしょうね、、(~_~;)
昭和の頃は、まだ女は選ばれる立場(そういう体に甘んじていた^^;)
今は、どんな生き方も選べる時代!
やっほーーい♪ (*´▽`*)ノ
私は学校に行っているときは渡したことはないんですが、
友達が渡すとなると、一緒に準備したり、作戦を練ったり、結果に大騒ぎしたり、
傍観者としても結構楽しかったです。
高校のときは女の子からよくもらってました。
今はもっぱら自分のためのチョコ祭りですが、これが一番楽しいです♪