タケシの武勇伝…(14)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/10/13 02:16:03
注射と酸素吸入が効いたのか、ものの数分後にはシンさんの咳も止まり、顔色も元の青白さが戻ってきた。青白いのに元に戻ってきたというのもおかしいな話だが……
呼吸が落ち着いて吸入器が外されると、シンさんは白衣の男たちに退出するよう手で合図した。途中、男の一人がジロリとタケシをにらんで行ったが、あっけにとられたタケシはまったく気付かなかった。
すると、男たちと入れ替わりにペンギン服じいさん( 塙さん )が部屋に入ってきた。塙さんは、慣れた手つきで乱れたシンさんの服装を整えながら背中越しにタケシに話し掛けた。
「北野さん、真也さんは貴方のファンなのです…お話は伺われましたか?」
低音で落ち着きのある声だった。
シンさんは、タケシを見つめながらうっすら口元を微笑ませて小さくうなずいた。
「えっ!ええ、それは聞いたんですけど、急にシンさんが苦しみ出して…」
尻もちをついたままのタケシは、シンさんのうなずきに応じて答えた。
「では、貴方のケガのことも聞かれましたか?」
タケシは、急に塙さんの口調が厳格になったように思えた。
「いいえ、ただ、おれの力になれると…」
自分の格好に気付いたタケシは、いそいそと立ち上がりながら答えた。たしなめられた気がしたからだ。
「では、詳細はまだ聞かれていないのですね。なら、わたくしが代わってお話いたしますのでこちらへ…」
塙さんは、シンさんの車椅子を押しながらタケシを別の部屋へといざなった……
タケシは、深紅のじゅうたんを踏みながら訳が分からないままトボトボと二人の後についていくと、ふいに目の前が明るくなってきた。そこには玄関よりも広いホールがあった。
そこはガラス張りの天井になっており、上からありあまる日光が差し込んでいた。
それを見たとたんタケシは、ここはまるでデパートの吹き抜けか、家じゃなくって磐石なお城のようだと思った。
完璧と磐石の使い方を間違っているのがスポーツ馬鹿のタケシらしかったが……
※※つづく※※
シンさん宅はかなり高度な医療設備がありそうなので、まさかこれから緊急手術…?
最後の一行が緊迫した内容をちょっと和ませてるのがいいですね。
なんか怖いお話ですなw
でも僕こういう話は好きですw
いつもコメントありがとうございます