Nicotto Town


もふもふ0304


9.~結果は上々~


その日は意外に早くやってきました。


ある日の森への散歩の時、こっそり王女も2人の後を付けて行きました。
森番は、5人以外は決して人を入れてはならぬと厳しく言い渡されていましたが、王女はその5人に含まれていたため、止められることはありません。

蛙になった王子はどうしていたかって?

急に蛙になって混乱したものの、元いた場所から動かない、という、迷子になった時の鉄則を知っていた賢い王子は、池のそばでじっと隠れていたのでした。
王の呼びかけも、全部聞いていました。
不意に空中から姿を現した姫が、自分を救うものであるということも、少なくとも父王は、そう信じているということも。
しかしながら、蛙になった自分がどうふるまえば問題解決につながるかということまではわかりません。
一般的に蛙とは、娘さんには好まれないものであるということは承知していたため、姿を現すことに躊躇いがあったのです。
あの姫に嫌われたくない、と王子は思いました。
自分を救ってくれるかもしれない姫に嫌われたら、救ってもらえないかもしれないからそう思うのでしょうか?

踏み出せないままに数日が過ぎていきました。
その間も毎日、姫は森にやってきます。
彼の友人であり側近でもある乳兄弟の青年は、いつも姫の隣にいて、楽しそうに2人で笑い合っています。
少なくとも、王子には楽しそうに見えて、見るたび胸がチクチクするのでした。
このままでは何も変わらない、と、思い切って前に進み出た時のことです。
「きゃああああ、かえる~~~~~!!」
妹姫の大きな声が響き渡りました。
思わずぴょんと飛び上がってしまった(蛙ですから、無理もありません)王子は、青花姫の顔の上に着地してしまいました。
姫は寄り目になって、顔に留まった生き物を見、そっとつかみあげました。
「あのう、これは、なんですか?」
卒倒した王女を抱えた青年に、青花姫が聞きます。
「かえるという生き物です」
青年は、顔を青くして言いました。
あの蛙が王子に違いないと直感したのです。
王子が振り払われて怪我でもしたらと、青年は気が気ではありませんでした。
「なんて可愛いの!」
そういうが早いか、青花姫は手に持った蛙にくちづけしました。
手の中の蛙は、瞬時に王子へと戻り、逆に姫を腕に抱く格好になりました。
「元に戻してくださってありがとう、姫。
唐突ですが、私と結婚していただけますか?」
いきなりのプロポーズです。
青年も、意識を取り戻した王女も、ポカーンとして見ています。
「それともあの男のほうがお好きなのでしょうか?」
「妹にべたべた触るな」
「蛙くらいで卒倒するんじゃない」
王子は矢継ぎ早に3人に声をかけます。
「あの人は好きだけど、結婚する程じゃないわ」
「べたべたなんか触ってない」
「だってきらいなんだもの」
3人は口々に答え、王女と青年は、ぱっと身を離しました。
「まああなた、わかってないのねえ」
青花姫は2人を指して言いました。
「あの人は、貴方の妹姫が好きなのよ。
姫の方だって同じだわ。
この森で歩いているときにも、あの人の口から出てくるのは、貴方やご両親への忠誠の言葉と、その倍の量のあなたの妹姫への賛辞だったのよ。
そんなわかりやすい人、めったにいないわ。
当の姫様には、伝わっていないようだけどね」
「む、私は知らなかった、本当なのか」
問う王子の目の先には、ほほを染めて見つめ合う2人がいました。
何も答えはありませんでしたが、答えたのも同然です。
周りの声が耳に入らない様子の2人は放っておいて、改めて王子は結婚を申し込みました。
知り合う時間が必要なら待つと王子が言うと、青花姫は言いました。
「待っているうちに、貴方たち人間は、あっという間に老いてしまうわ。
いいわ、結婚する。
あの王様の子供なら、いい人間に違いないし、蛙になった経験を持つなんて、ちょっと他にいなさそうだし」
それだけの理由で?と王子は思いましたが、そもそもこちらが一目惚れしたのです。
「それから、私は長命だから、貴方が老いてもこのままだけど、いいかしら?
あなたが亡くなるまでは傍にいるけど、子供が亡くなるのを見るのは嫌だから、この国には100年くらいしかいないけど、いい?」
承諾が嬉しくて、細かいことは気にならない王子でした。

その夜、森番は、首をひねっていました。
3人だけ入れたはずの森から、4人が出てきたことが、どうしても腑に落ちなかったのです。
青花姫の時もそうでした。
王様一人だけしか、森にはいなかったはずなのに…。
しかし、長らく国を留守にしていた王子が帰国したのは嬉しく、王子と王女の同時の婚約発表もまた喜ばしかったため、そのうち忘れてしまいました。




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2020/08/16 23:13
展開早くて楽しく読ませていただきましたぁ
一件落着ではないのですね~
コメントあまり読めてなかったから
気になるぅ
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2020/08/16 16:19
ひとつの物語にたくさんの恋物語\(//∇//)\
カエルさんを囲んでのドタバタが可愛くて楽しい!
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2020/08/16 09:27
ここまるさん、あと1話あるのよ。
エピソード1に、おまけの10話目を付け加えたので、びっくりスパイスは次の回よ。
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2020/08/16 04:50
びっくり展開即効解決素晴らしいわ
スッゴイ気持ちよく読ませていただきましたw
そして、例のお話に続いて行くのねぇ〜ワクワク
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2020/08/15 22:34
そうそう、昨日流れ星を見たのよ。
ペルセウス座流星群が、たしか昨日くらいまでよく見えたんだよね。
外に出た拍子に空を見上げたら、ちょうど流れ星が見えてラッキーだった。
比較的大きめなのが流れる流星群だから、見ようと思えばまだ見られるかもよ?
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2020/08/15 22:07
あっという間の解決!
そしてプロポーズ!
展開が早くていいね!
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2020/08/15 20:19
過去の非公開で保存してある文章をコピペして、今日の日付で投稿すればいいことに気が付いた。
昨日は旅行中で投稿できなかったから、最終話は明日かなー。




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