豚寝る
- カテゴリ:自作小説
- 2020/10/11 16:56:54
祖父の三回忌があり、家族を連れて、実家に帰った。親族だけで、こじんまりとする予定だったが、祖父にお世話になったという人が多く訪ねてきた。祖父は、漁の道具や養殖の筏を修理する鉄工所を営む傍ら、地区の役員をしていた。持ち回りでやるような役職だったが、祖父は、地域の悲願であったトンネル建設の要望活動に熱心だった。
山に囲まれた小さな漁村で、町に出るためには、九折の急な山道を抜けていかなければいけなかった。地区には中学校がなく、スクールバスで峠を越えて町の中学に通っていた。
自分が生まれる前のことだ。台風が近づき、長雨が続いていた。路肩が弱っていたのか、スクールバスが崖下に転落し、女の子が亡くなる事故が起こった。祖父の姪っ子だった。それから、祖父は、トンネル建設の要望に、役場や県庁、時には代議士のところに何度も足を運ぶようになった。
要望活動が実り、幼稚園の時に、立派なトンネルが開通した。祖父がテープカットの列に並んでいたことを覚えている。町に出るのに1時間かかっていたのが、15分もせずに行けるようになった。すると、裏山を削り、団地の整備が始まった。
団地が出来上がると、転校生がやってくるようになった。漁師や農家の子供ばかりの中で、町に通うサラリーマンの子供は、都会の香りがする憧れの存在だったが、そのうち、転校生が増え、小学校の校舎が立て替えられるようになると、地元の子供の団地の子供のグループに分かれてきた。
放課後の遊び場所が違うということも理由だが、大人たちの影響が大きかった。大人たちも最初は、団地が整備され、賑やかになることを期待していたが、これまで一つだった地域が、バラバラになったもどかしさを感じるようになっていった。
水路の掃除や道端の草刈は住民が手分けしてやっていたが、団地の町内会は団地の範囲は共益費で行っているからと参加しなかった。お祭りも住民がお金と手間をかけて準備をしていたが、団地の人達は氏子でないと参加をしなかった。
商店の人達は、団地の人達で多少は潤うと思っていたが、団地の人達はトンネルを通り、町のスーパーに買い物に出かけていた。農家の人達は、山を削ったせいで川が溢れるようになった、漁師は雨が降ると海が濁るようになったと、不満を口にすることが多くなっていた。それに、真新しい高台の住宅から、毎日、見下ろされて暮らしているいのが、気に入らなかった。
まり子は、小学3年の時に転向してきた。前髪をパッチンで留めて、おでこを広く出している元気な子だった。僕の一つの後ろの席になったが、プリントを振り向いて渡すたびに、ありがとうと言ってくれた。
漁師や農家の男社会で育った地元の女子は控えめな子が多かった。まり子は、はきはきとして男子にも物おじせず、直ぐにクラスのリーダーになった。今まで会ったことのないタイプのまり子に好意を覚えた。
誰にも、まり子への好意を漏らしたことはなかったが、ガキ大将だった田中に、「お前、まり子のことが好きなのか?」と聞かれた。僕は、うなずいた。田中は、しょっちゅう、まり子にいたずらをしていた。田中なりの、まり子への好意の表現なのだろう。
その頃から、僕へのいじめが始まった。暴力を振るわれたり、いたずらをされることはなかった。爺さんが村の役員だから、手加減をしていたのだろう。ありがちな仲間外れになった。僕は、地元のグループにも団地のグループにも入れず、教室の中で孤立していった。
昼休みに、田中が団地グループのリーダーの町田に、放課後野球をしようと話していた。クラスの男子のほとんどに声をかけていたが、自分は無視されていた。すると、まり子に、背中をツンツンと突かれた。
「今日、探検に行かない?」
「うん、いいよ。」
「じゃあ、放課後ね?」
授業が終わると、まり子と一緒に、団地に向かった。あがってと言われて、まり子の部屋に入った。自分の部屋は、まだなかったから、まり子の部屋が羨ましくて、でも、じろじろ見るのも悪いような気がして、落ち着かなかった。まり子は、お母さんに、「行ってきます。」と言うと玄関を出た。
「剛志君は、家に寄らなくていいの?」
「遠くなるから、寄らなくていい。」
まり子は、団地の脇を抜けて、山を登っていく道を歩いてみたいと言った。歩いていくと、煉瓦を組んだ四角い煙突のある建物があった。
「なんの建物?」
「かそうば。死んだ人を焼くところ。1年生の時に遠足で来たよ。」
まり子は、僕の手を掴み、手をつなぎ歩き始めた。火葬場を過ぎると、途端に道は細くなり、車一台が通れるくらいの幅しかなくなった。しばらく、誰も通っていないのか、道路の上には、石ころや木の枝が落ちていた。
しりとりをしながら、二人で歩いた。大抵、僕が続きの答えに窮してしまった。そのたびに、まり子は僕のほっぺを軽くつねった。たまに、まり子のほっぺをつねると、柔らかく、僕の胸はきゅんとなった。
1時間ほど歩くと、道幅が広くなり開けた場所に出た。大きな石に二人で座り、海を眺めた。
「あの島は淡路島?」
「あれは、小豆島。」
太陽が沈みかけ、海面が黄金色に輝いていた。島々の間を、シルエットになった船が行きかっていた。
「あのお地蔵さんは何?」
「昔、バスが落ちて、子供が死んだって言っていたら、それでかな。」
まり子は、僕の腕をぎゅっとつかんで、「怖い」と言った。僕たちは、立ち上がって、引き返し始めた。行くときは元気だったまり子がふさぎ込んでいる。傾き始めた日が沈むのは早く、木々に囲まれた山道は暗くなってきた。
うずくまったまり子が、我慢しきれず泣き始めた。僕は、どうしていいか分からず、まり子を抱きしめた。まり子の嗚咽が小さくなったので、僕は、ランドセルからコッペパンを取り出した。いじめが始まってから、給食を全部、食べられなくなっていた。
半分こして食べると、パサパサのコッペパンがとても美味しかった。食べ終わると、真っ暗になった道を歩き始めた。まり子は、僕の手をギュッと握り締めていた。まり子は、大きくなったら、私をお嫁さんにしてねと言った。僕は、いいよと答えた。
風が木々を揺らす音に驚いたり、石ころをけ飛ばすたびに、ビクッとしながらも、まり子に声をかけながら歩いていた。すると、向こうからライトの灯りが近づいてきた。
「たけしー」と叫びながら、爺ちゃんが軽トラから降りてきた。「まり子ちゃんか」と爺ちゃんは言って、二人を軽トラに乗せると、車を転換させ、麓に戻っていった。
爺ちゃんは、まり子を家まで送り、公民館に向かった。そこには、大勢の大人たちがいた。爺ちゃんは、皆に、見つかった、見つかった、ありがとう、ありがとうと声をかけていた。しばらくすると、有線から、「たけし君とまり子ちゃんは、無事見つかりました。」と放送が流れた。
地区の雰囲気が変わった。団地の人達も麓の人達も、総出で手分けして僕たちを探した。初めての共同作業だった。それが、きっかけになり、地区の掃除やお祭りも一緒になってするようになった。
僕へのいじめも終わった。爺さんと一緒に、手伝ってくれた人の家に、一軒、一軒、お礼に回ったりするうちに、少しだけ強く、そしてちょっぴり大人になっていた。
爺ちゃんが亡くなる前に、ひ孫を見せることが出来た。まり子にそっくりな可愛い娘だ。煙草を吸い終わったら、じっちゃんの墓参りにも連れていこう。
大丈夫です。饅頭1個食べても、ウォーキング50分すれば消費できます。半日歩けば、10個は食べられます。煙草を吸いながら、珈琲を飲むのが至福の時間なのに、迫害されて居どこがありません。
医者に体重かわってないのにへその下、10センチ増えてる←えええっ!饅頭コワイ!
ドトールにきょう入ったら「喫煙コーナー」3分の1ほどあったのが
「喫煙ボックス、立ちっぱなし、三人まで」に変更されて、つれあいが3人→人が出てくるの待ってました(-_-)
饅頭、凍らせて大丈夫なのでしょうか。饅頭怖いというくらい、たらふく、食べるようにしましょう。
検索履歴を消しているあたり、間違いないでござる。
お姉ちゃんと密着感が大事ですからな。
人間の適応力には、素晴らしいものがあるのです。香川でうどんを食べまくっているのも転勤族の人だと思う。ススキノに行くなら、上着は邪魔かもしれません。
いつやろうかなーと、ずっと、心にひっかかっていたと思うので、一安心でしょう。特に、高齢の人が集まることが多いから、今年は家族だけでやりますと、とっとと済ました方がよかったと思いますが、親戚縁者に口煩い人がいたら難しいのでしょう。
健全な身体に健全な精神が宿るとしたら、背筋を伸ばしたら、作者を温かく見守る真っ直ぐな心が宿るかもしれない。
あずさちゃん
全てを言わなくても通じることは、大事だね。
旭川でラーメン食べて、みよしのに行って、お腹がいっぱいです。
ろくさん
お腹を冷やさないようにしましょう。スッポンポンにワンピースでは、寒くなっちゃいます。
あずさちゃん
離れても思い続けるには、何かが必要だと思う。なんだろう。
clefさん
やんちゃ坊主な弟さんですね。誰しも、ちょっとした冒険をしたことがあると思いますが、川を渡るのは珍しいです。
私は祖父の記憶がなく、ある意味おじいちゃんに憧れはありますね~w
子供の頃、私も少しは冒険ぽい経験もありますが、弟ほどではありませんw
弟は友人達と壊れかけた船の上で一斗缶で焚火をしながら川の対岸まで行って戻って来たらしいです==
その川は大きくて深い一級河川で、万が一沈むと遺体が上がらない時もある深みで渦を巻いている様な
川らしく、よくもまぁそんな川を壊れた船で渡って無事に戻れたなぁと。。。
おまけに自分の服を焚火で燃やしかけてたらしく、開いた口が塞がりません。。。
この話は最近きいた話で、両親はおそらく知らない話だと思います><
子供って時には無謀で、無知と言うのはある意味恐怖をおぼえます。。。
大人には心配かけたけど、たけしくんとまりこちゃんは、まだまだ可愛い冒険ですよ(笑)
旅行や探検は非日常だから、告白やプロポーズしやすい雰囲気だと思う。一人旅が好きなのが、敗因かもしれない。
マオさん
小豆島に行かれたのですね。昔は、寒霞渓の猿と孔雀園くらいしか無かったですが、今は、恋愛のパワースポットやオリーブ園と見所も増えました。
wineさん
庵治半島一周のジョギングをしたら、自動販売機も無くて、喉が渇いて困りました。大串半島は、もっと無さそうだから、水筒持って走ります。
目から心の汗が出そうになりました。
小豆島は「島バス舐めんなw」的なアドバイスを受け、レンタカーを利用した思い出があります。
いや、島バスで通学している学生さん、大変だと思いました。
何も言わずに剛志くんに抱きしめてもらったまり子ちゃんの気持ちになると
こころがぽかぽかします お嫁さんにしてねって言ったらすぐに
いいよって言ってもらえて、そこが一番いいなーって思いました
パサパサのコッペパンを食べたら、喉が渇くのではと思いましたが、牛乳を半分残すのははおかしいので、二人は喉が渇いたままにしておきました。ひ孫までの過程を書こうとしたら、ネタに困り、マーキュリーが出てくるかもしれません。
パサパサのコッペパンの半分こが甘酸っぱかったです( *´艸`)
この2人のひ孫までの経緯をもっと読みたいと思いました。
ほっこりしました。
馬に乗れるなら、行ってもいいな。実家に帰ったとき、ジョギングのついでに寄って、馬に乗って帰ります。
ええせんついとる。さすがじゃ。西讃は、よく分からないので舞台にならないのです。リアリティーを追求しとるからの~
れんげさん
小学3年で、駆け引きは難しいかもしれません。しかし、女性は、生まれつき魔性の存在かもしれないので、怖くないのに、怖いーと言っていたのかも。
りんごちゃん
きっと、コッペパンが美味しくなかったのだと思います。パサパサで、牛乳がないと食べられなかったのでしょう。
wineさん
大串半島の先端にあった温泉もなくなって、ワイナリーになってしまったし、じっちゃんとばっちゃんしか住んでいないところばかりになってます。
あずさちゃん
ヒントは、重箱読み。前が音読み、後ろが訓読み。
リンゴさん
小豆島には、猿がいます。気を付けましょう。リンゴを持っていたら、かっぱらわれます。
るるもさん
あと1000字あれば、夫婦喧嘩が始まっていたかもしれません。3000字の制約があってよかったです。
環謝さん
ぶら下がり健康機を買って、性格を真っすぐに伸ばした方がいいかもしれません。マーキュリーが出てこなくても満足できるようになります。
たまちゃん
まるで作者が、ひねくれているので、微笑ましい話は、滅多にないとおっしゃっているみたいではありませんか。当たってます。
初恋(かどうかは定かじゃないけど)を実らせるって、ほほえましいですよね。
たまにはこういうあったかいお話もいいですw
おじいちゃんにひ孫の顔も見せられたとか、万事ハッピーエンドでいいはずなんやけど、
何故か落ち着かないのは私だけ!?www
小さな二人が、このまままっすぐ育ってくれて良かったです。
行ったことないのに何故でしょうね。
子供心の恋のような気持ち。沖人さん自身の物語かしら♪
けど、今はまり子ちゃんと「ほっぺが落ちるくらい」美味しいご飯を食べてるんでしょうね
羨ましいです でもやっぱりわからないのは 『豚寝る』ってタイトル(?_?)
「たけしー」って、ジャイヤンを思い出しました(*´艸`*)
まりこちゃんの行動が、大胆なんだか怖がりなんだかはたまた駆引きなのかもやもやしましたが
ハッピーエンドで安心しました♪
タイトルに通ずるオチがあるのかなと、ちょっと期待してました^^;
甘酸っぱいのは、苫小牧名物「よいとまけ」ではないでしょうか。日本一、食べづらいお菓子と言われています。酸っぱいカスカップジャムとカステラ生地の組み合わせです。
アリスさん
残念ながら、子供の恋しかかけません。大人は対象外です。したがって、18歳以上立ち入り禁止の看板を出しておきます。
地元と団地の人たちが共同作業ができるようになったところがホッとするかなあ。
最後には、成人して、結婚して、幸せなんですね!
良かったです。
ふふふふふふら
初恋を80回くらいしているので、どれが初恋か分かりません。ゴボウを揚げたら、歯ごたえがあって、美味しい~
休日の夕方 ちょっぴり憂鬱な気分だったけど
なんか・・・清々しい心持になりました^^
沖人さんこそ 素敵な初恋物語じゃん♪
それは、藪の中である。
わからない小説のコメント苦手~(;´・ω・)