Nicotto Town


黒沢 大和


定食屋「雪月亭」にて 鏑木


「あっ・・・月鬼・・・」

鏑木の声にびっくりした顔を向けている常連客らしきOLに気づいて、鏑木は、はっと我に返った。
(しまった・・・声に出しちゃった・・・)
生徒会グループと入った定食屋「雪月亭」に見知った顔を見つけて、つい反応してしまった。
向こうはこちらを知らないのに・・・。
それもあちらの世界で見かけた顔だとか、生徒会メンバーにすら伝えていない話だった。
俺は、仕方なくにこやかにOLに声をかけた。
「こんばんはーっ」
なごやかに、敵意がないことをわからせないと笑顔で挨拶をしてみた。
胡散臭いものを見るように、OLが目をすっと細めた。
「いきなりすみません。 えーーっと、俺は高校生で、友達と一緒に来てまして・・・あー、えーっと・・・」
いや、何を言っても唐突だよね。
そりゃそうだ。
初対面なのに、いきなり声をかけるとかナンパだよな、うん、ナンパ以外のなにものでもない。
「・・・で・・・」
聞き取れないほど小さな声で、OLがつぶやいた。
「はい???」
鏑木は少し耳を近づけて見る。
「なんで・・・」
「え?」
「なんで、月鬼って言ったの? 私のこと知ってるの?」
あぁ、まずい。
やっぱり聞かれてたか。
あなたとは初めてお会いするけれど、あちらの世界ではお目にかかったことがありますとか・・・言ったところで信じてもらえないだろう。
「いえ・・・ちょっと・・・」
こんなことで誤魔化せるとは思えないが
「以前もこちらで拝見して、素敵な方だなぁって思ったんですよ」
「高校生が?」
「あぁ、はい」
「ひとりで定食屋のカウンターで日本酒飲んでるOLを?」
「きれいだなぁ って」
「何やっても楽しい高校生が仲間と来てて、ひとり酒飲むOLに興味持つとかある得ると思う?」
「うーん」
「ないでしょ」
「それがですね・・・ホントのこと言うと俺は占いができるっていうか・・・人のことが見えるっていうか・・・人の近い未来がわかる能力がありまして・・・えーっと・・・」
「うさんくさい・・・」

ですよねー って言って退散するのが、この際手っ取り早いような気もした。
そもそも、このOLと高校一年生の自分の接点がなさすぎて、これ以上関わらない方が良いだろうと頭の中では考えている。 あの世界の月鬼がその後人間たちとどんな風に交流するかなんて、この人に言っても無意味だ。 それでも・・・関わりを持ってしまった以上、少しだけ俺に見えたものを伝える努力をしてみよう。

「えーっと、お姉さん、いろいろあると思いますけど、言ってることは間違ってません。 ちゃんと理解してわかってくれる人が現れますから、そのまま、そのかっこいい姿勢のまま、まっすぐ生きてください。そのうち、お姉さんと一緒にお酒飲みたいって人がたくさん・・・っていう俺の占い的なことをお伝えしとこうかとw あー、すみません、差し出がましいこと言ってる自覚はあります。ただ、俺の頭の中にそういう風景が見えちゃって、ついでに『月鬼』って言うフレーズが浮かんじゃいまして どっかで聞いた言葉なんだろうなぁって思うんですけど・・・」
照れ笑いをしながら しどろもどろになって汗だくで説明をすると ぽかんとした顔をしたまま聞いていたOLが口を開いた。
「ありがとう・・・」
「は、はい??」
「わかった」
何がわかったのか、わからないけれど、うっすらと微笑んだまま 日本酒をちびっと飲んだOLを見て、鏑木はほっと胸をなで下ろす。
「なんか、占いの能力がありそうだね、きみ」
「いや、あのー いつでもできるわけじゃないんですけど。それと、鏑木です、俺の名前。」
「そうか、鏑木くんね。覚えとく。私は月緒。月鬼じゃなくてツキオ。」

「かぶらぎーーーっ OLさんナンパするとか10年早いぞーーっw」
と、生徒会グループから野次が飛んだところが頃合いだ。
「友達が呼んでるんで、行きます。月緒さん、また」
「うん。鏑木くん、またね」
軽く手を振って月緒の側を離れた。
月鬼をナンパするとか、10年どころか1000年か2000年はえーよw と心の中で思いつつニヤニヤと笑いながら生徒会グループの元に戻った。
「で・・・あれは誰なんだ?鏑木」
白藤の金眼が光る。
緊張が走る。
「い、いや・・・ナンパです・・・ただのナンパです・・・」
鏑木が白藤から眼をそらして逃げようとするが、シンリンオオカミみたいな視線に射すくめられて動けない。
ホントにこの人の勘の良さは・・・
「おまえ、ナンパとかしないだろ?」
「えーーーっと・・・」
「何が見えた?」
「うーん・・・話は長くなりますので、今度また・・・」
白藤がふっと笑って眼をそらした。
そう。 長い話になりそうだ。
どこから話そうか・・・

定食屋「雪月亭」は今日も大繁盛。 ここに通う楽しみがひとつ増えた。

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2020/11/30 18:56
お~鏑木君たら、ナンパですか?と誤解を呼ぶ?w
上手にフォロー出来たみたいで。
鏑木君いい人っぽい^^

空木さんの所にも行ってこよう
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2020/11/30 17:08
これってマジ、月鬼なの?
ってことはおおよそ2050歳で人間のフリしてOLとかしてんの?
まぁそんだけ生きていたら、心境の変化のひとつやふたつ、無い方がおかしいけどw
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2020/11/30 13:59
_(L〃_ _)ノシ バンバンバン‼
後でまた読みに来ますwww
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2020/11/30 09:21
>意味がわからなかったのでした
空木さんところを先に読んじゃったんですねw
空木さん、誤解してるんですー
和泉さんにコロされるw
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2020/11/30 09:15
ああーーこの話を読んでいなかったので意味がわからなかったのでした。

月鬼をナンパするって大物だな(o´艸`)
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2020/11/30 09:09
>つづき書いてみたよー(*´艸`*)
誤解がーーっ
空木さんに誤解がw
和泉さんにぶっとばされる前に
もうちょっと詳しい情報を和泉さんに伝えないと。
そして また密会してるとか噂が立つヤツですねw
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2020/11/30 09:08
>星野源とかみたいなポップさ
おおぅ
わかりやすくて重くなくて明るいヤツ。
鏑木くんのキャラはそんなです。
軽いけどチャラくはなくて
真面目だけど固くはない という後輩キャラにぴったりw
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2020/11/30 08:50
>とりあえず月緒さんの酒はまずくならなかったようで
ほっと胸をなで下ろす鏑木・・・
怒らせたら大変なことは、いろいろ見聞きしてるはずw
あの世界ほどの物理的な毒は吐けないけど
性質は同じだと理解してるんで 鏑木、冷や汗ものでしたw
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2020/11/30 08:27
つづき書いてみたよー(*´艸`*)
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2020/11/30 01:25
脳に美味しかったー うわあああ
この会話のテンポの良さと自然さが星野源とかみたいなポップさで好きなんだよなあ

鏑木と月鬼めちゃくちゃ相性よくないかw
如才ないフォロー役と、ちょっと尖ったキャリアウーマンw
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2020/11/30 01:15
とりあえず月緒さんの酒はまずくならなかったようで、鏑木くんの
ためによかったと思うww じゃないと・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
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2020/11/29 23:50
そうそう そのあたり、話がこんがらかるところですよねw
たぶん鏑木くんは、和泉さんにその後の話をしていいもんだかどうだか
すごく悩んでると思うんだよねー
で、ちょっと和泉さんにいろいろ話しかけてるうちに
変な噂が流れそうっw
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2020/11/29 23:45
思うにそれを見ていたうっちゃんは
月緒さん|´∀`●) ポッとか思っている模様

うっちゃんは鏑木くんが和泉さんを好きだと思っているので
「なんだ鏑木、和泉さんに言いつけるぞ(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
とか言いそう
それを聞いて鏑木くん
(´・ω`・)エッ? (;゚Д゚)エエー なんでー(゚▽゚;)
とかなりそう( ´艸`)ムププ
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2020/11/29 23:29
鏑木くん、髪の毛切りましたw



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