Nicotto Town



さよならさよなら

今朝、目が覚めたら8時35分だった。結局3時過ぎまで部屋で飲んでいたので、端的に酒が抜けてない。でも、そんなことも言っていられない。サッと着替えて寝癖を直し、昨晩のうちに作っていおいたパスタと鶏の胸肉の入ったミネストローネを飲み込んで、慌てて駐車場に。

ハーバーについたのは、9時40分ごろ、10時に出港と聞いていたが、まだいろいろと準備をしていて、少し遅れそうな様子だ。車を駐車場に入れるほどの時間を考えていなかったので、ハーバーのすぐ脇に車を路駐したままだが、まあいいだろう。

何時も見慣れた鶯色のヨットは、いつもと変わらず船台に乗せられ、当たり前のように梯子が掛けられ、人が乗り降りをしていた。ただ一つ違うことは、このヨットを目にするのは、これが最後だということ。

今日、私が17年間に渡り乗ってきたヨットは、このマリーナから離れていく。売却され、遠く彼の地に向かっていく。船歴30年余。今となっては古臭いデザインだが、全体が穏やかでゆったりとしたラインを描く、美しい船。

10時10分ごろ。船はゆっくりと海面におろされ、新しいクルーが乗り込んでいく。なんとも不思議な感覚。あそこにいるのは、いつも乗っていたいつもの船。それなのに、なぜ私はあの船に、いつもの仲間ではない人たちが乗り込んでいく景色を、こんな離れたところからボンヤリと眺めているのだろう。どうしてあそこに私はいないのだろう。

そんなことを考えている暇もなく、船は出港した。船は滑るように進み、ハーバーを離れていく。どうして私も、私の仲間も乗っていないのに、あの船は海を進んでいくのだろう。

遠く離れていく姿は、最後まで実感のない姿だった。でも、間違いなくこれでサヨナラだ。でもまあ、いつかまた、遠く時の輪の触れるところで出会うこともあるだろう。この世から消えてなくなるわけでもない。

だから、その時まで、さようなら。




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