【第5話】天使坂のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/05/02 21:36:04
キャンプ場で初めて過ごす夜、俺はちょっと肌寒さの残るなか、テントに寝袋というスタイルで横になった。
手にしたアイフォンの画面には、さっき3人で撮った画像が映し出されている。
ついさっきまで、クマさんのとこでしずかさんと3人、ワイワイ話してたんだけど(クマさんは最初はかなり緊張していたんだけど、だんだん打ち解けてきたらもう近隣に響くような大声でしゃべり、笑ってたのには俺も苦笑だった)時間もあっという間に過ぎ、そろそろ自分のテントに戻ろうってことになり
「あ、本当にありがとうございました。可愛さん、キャンプご飯、とても美味しかったですよ」
と、笑顔でしずかさん。
「いやいや俺も… 桐谷さんのデザートご馳走になっちゃって…」
頭を掻くクマさん。
「何かすみません、俺だけ何も提供できずに…」
申し訳なくて、ちょっとフォローのセリフを入れる俺。仕方ないよな、食材を全部クマさんに破壊されちゃったんだもんな。
でもさ、しずかさんの作ったティラミスは、まさに絶品だった。
「何もないですけど…さっきデザートに作ったティラミスがありますからいかがでしょうか?」
ややおずおずとした素振りで差し出した深めの角皿に入ったティラミス。
しずかさん、ソロキャンなのでもともとそんなに大きくない。実際に3人で分けると、1人ふた口くらいしかない。
「うまいっ!ベースはカステラケーキだね!」
「そうです。カステラがもう甘いので、砂糖はあんまり入れず生クリームをたっぷりめに、それでちょっとビターな純ココアをたっぷり振りかけただけの簡単レシピですけど」
クマさんとしずかさんの専門的な会話に入って行けず、俺はただにこにこして頷いてるしかなかった。
しずかさんは本当によく笑う。クマさんの仕草がツボなのか、ちょっとしたことで笑うんだ。
メイクっ気のないその表情に、焚き火の明りが、しずかさんの髪をキラキラとさせている姿に、俺はぼうっと見とれてしまっていてね。
「天塚クン、なんかおとなしいね?」
二人の会話をボンヤリと聞いていたら、しずかさんが突然話しかけてきたんだ。
「あ、すみません。俺、今日がキャンプどころか料理デビュー…て言うか料理すらデビューできなかったんで。新品未使用って感じで…」
俺は驚いて、思わず泡食って自分でも意味不明なことを口にしちゃった。
すると、はっとした表情で
「ご、ごめんね。天塚クンのこと放置しちゃってた…」
「す、すまん少年!」
思い出しただけでなんだかちょっと笑ってしまう。
夜も更けて、そろそろ各自のテントに戻ろうってなった時、
「なんだか、このままお別れするの勿体ないですよね。可愛さん、桐谷さん、せっかくだし連絡先交換しませんか?」
何気なく言ったつもりだった。
クマさん、俺の言葉が終わる前にやや食い気味にスマホ取り出して
「そうだ!少年が言う通りだ!3人でLINEグループを作ったらどうだろう?」
するとしずかさんも微笑んで
「そうですね。偶然3人とも同じ大学だし…これも何かのご縁でしょうし…」
てなわけで、俺はスマホの画面を見ながら寝袋にくるまってるってわけさ。
真ん中にしずかさん。向かって左が俺、右がクマさん。初めて撮った3人の画像。
初めてのキャンプ(しかもソロ)で、2人と知り合いになり、とても楽しい時間を過ごせたことはホント奇跡みたいだ。
でもさ、これが俺たちの、いわゆる「物語」の始まりだったとは、その時は気が付くはずもなかったんだけど…。
(続く
いや~~個人的には「謎」が解けた! ケースケさんの文章って、本当にスッキリ読みやすい「相手に届く」クレバーなタイプなのよ。それでいて、海千山千のクサいテクニックや“媚”もない。キャンプのことを書いてもウンチクは最小限。プロはプロなんだけど、こういう文章を書くのって「どういう職種の人だろう?」ってずっと思っていました。言われてみれば「なるほど、納得!」です。
私は今は完全隠居で英文意訳の仕事しかしていませんが、もともとはPR会社の社員スタートで、公官庁の英語広報物とかを制作する仕事をしておりました。脱サラして、日経新聞系の月刊誌をメインに20年ぐらいフリーランスのライターをやって、その間、プロのライターを養成する専門学校で講師もしてました。企業の広報の方もけっこう助成金で受講してましたよ~。
ケースケさんの小説をイッキに読みたいのは、そのあたりの事情があって。1回分の分量だと「赤ペン先生魂」がウズウズして作品として全体の流れを味わえないからなのです。
雑誌のライターと広報部さんとは切っても切れない仲なので、久々にお話できてテンション上がっちゃいました。
今でもときどき「ポジションペーパー」という、ニュースリリースの素にするファクトシート(医療・健康食品系)の作成を受注することがあるのですが、今は海外の学会にも出席できず、取材が難しいので、家で論文を読むばっかりでつまらないです。
新作小説のテーマ、募集中とのことですが私としてはソロキャンプをシリーズ化して、クマさんたちに「もっといろいろ起こってほしい」という希望が。でも、新作を挟んで少し寝かせたほうがおいしくなるのかなぁ。
とにかく新作、とっても楽しみにしています。
私は頭に浮かんだことがそのまま言葉になってしまうタイプで、けっこう「口が悪い」と言われているんですが、失礼があったらお許しくださいね。
これから本当の物語ィ(ーー;)3人の、それぞれの思いが、どんな事になるのやら( ^ω^)・・・
天塚少年!
クマさんの邪魔しちゃだめなんだからねw
天塚蕃って天使坂の別読み?
なんか、けーたンの脳内鮮やかで性能良さそうw
どんな物語が待っているのか、楽しみ!