【第11話】天使坂のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/05/14 21:38:01
「でな…少年よ」
「なんですかクマさん…?」
「お前に聞きたいことがあるんだが…」
クマさんが振る舞った牛肉の玉ねぎ炒めを4人はペロリと一瞬で平らげた後、俺はカレーの準備に、神田さんは焼き鳥の串打ち、しずかさんは得意のデザート作りに入ったんだ。
料理の準備中も、華々しい空中戦が展開されていたのはホントげんなりだけどね。
「神田さん?焼き鳥がお得意なのですか?なんとなくお酒好きな人だと直感で分かったんですけどやっぱりですね。ウワバミだとか言われてせんか?」
リンゴやバナナ、キウイをスライスしながら、余裕の笑みで先制攻撃のしずかさん。
「ああ 桐谷さん、当たりですよ。わたしお酒が好きなもので…でも、なんでしょうね、『私って、フルーツやデザートが好きなんですよ』ってかわい子ぶる女子って何となく信用できないでしょ?何だかあざといって思いませんか?」
先制パンチをひらり、とかわしてボディーに一撃を加える神田さん。
「あはは、そうですね!でも純情な男の人って、そうゆーデザート女子に惹かれるんじゃないかなって思いますよ?酒ばっかり飲んでるへべれけ女子よりもね」
スライスしたフルーツをスキレットに並べ、バターとグラニュー糖を載せていくしずかさん。
「そうですよねー そんな計算高い女に引っかかる男性も多いんだから、困ったものなんですよっ。私はそんな馬鹿な男はもう最初からNGですけど」
焚き火台の上の網に串打ちした焼き鳥を並べ、岩塩振りかけながらそう答える神田さん。
内心何を考えているのか隠しつつ、ヘビー級のタイトルマッチって感じの打撃戦だよ…君たちね。やめて欲しいよなぁ…。せっかくのキャンプなのにさ。
なんだかんだ言いつつ、俺たちは(未成年の俺を除いて)ビールだ缶チューハイだウイスキだって…夜更けまで盛り上がったんだ。
俺のカレーは、クマさんがいただきますって言った途端、先を争う女子二人の胃袋に収まっちゃったんだよな。
早すぎます。あなたたち… クマさんは茫然と、空のままの皿を手にして立ち尽くしてたっけ…。
あのね、カレーは飲み物じゃないんですよ?
じっくり炒めたカレー粉の風味味わってほしいよ。
でも、神田さんの打った焼き鳥は塩味で最高に旨かった。
そして、しずかさんの焼きフルーツも、デザートとしては最高だった。
この勝負は引き分けかなって思ってたんだけど。
「で、何でしょうか?クマさん…」
熾火になった焚き火から吹き上がる無数の火の粉を視界の隅で捉えつつ、俺はコーラを入れた紙コップの中身を一気に空けて
「正直に答えろよ、少年… お前はどっちなんだ?」
クマさんは焚き火台に焚き木を追加していく。焚き火台の上に乗ったスキレットの中は、
「ぇ?どっちって…?」
クマさんは、女子二人がテントの中に消えたのを、ちゃんと見計らってたようだ。普段のガサツさからは想像もできない。
「だからっ しずかさんか神田さんか、どっちが好きなんだ?」
クマさんの表情は、めっちゃ真剣だったよな…。
分かってるよクマさん。
あなたはしずかさんに惚れてるんだよね?
最初から分かってたよ…
だから、さっきのバトル見てたら、不安になっても仕方ないよね。
どう見ても、彼女たちって俺の取り合いに見えたからさ。
でもそういう俺だって、焦ってはいたんですよ。
「正直に答えろっ!もし、もしもそうなら俺は諦めるからっ」
俺に詰め寄るその顔、怖いくらいだったよな。
「な、なんで諦めるんです…か?諦める必要なんてないじゃないですかっ!クマさん、27歳にもなって、そんな消極的でどうするんですっ」
「少年よ、俺は昨日28歳になったんだっ!」
「それはおめでとうございます…って いま、そんなの関係ないでしょう?」
(続く
意外と少年だったり・・・なんて可能性も・・??
天塚少年のゆーとーりだぞクマさん
人(しずかさん)の心を勝手に決めて自己完結しちゃいけません
がんばれークマさん♡୧(⑉• •⑉)୨❤︎*゜