【第1話】黄昏のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/06/12 20:47:02
冬キャンはやはりハードルが高い。
正月が明けた3連休の最終日、天使坂キャンプ場はさすがのつわものどももほぼいないロケーション。
いちおう、初めてのことなので、結構準備してきたはずだったんだけどね。
テントは汎用のだけど、シュラフはバイトで貯めた資金をフル活用したナンガのダウン。そしてベースには銀マット。割と完璧?って感じだったよ。
でもまさか雪が降るとはなぁ…
湿った雪は、テントに積もって危険なんだ。
だから仕方なく、俺はアクティの荷室に戻ったのさ。
「ねぇねぇ、私もそっち行っていいかな?」
スマホが鳴って、メッセージがぽつん、と液晶画面いっぱいに広がった。
そう、俺は神田さんと2人で天使坂キャンプ場に来てたんだ。
「そりゃもちろんいいですけど…」
「よかった!」
それは、メッセージではなく、アクティのドアが開いたところから覗き込む神田さんのナマの声だったよ。
おいおい、車のそばにきてメッセージ打ってたんかい…
「ん… 何か飲みます?」
「ん… 天塚クンこそ何か飲む?」
「質問返し辞めてもらえます?」
「いいじゃんもうっ!」
俺たちはシュラフを2枚並べ、その中に潜り込んで横になって。
窓の外をちらつく雪明りが切ないんだ。
神田さんはキャンプの時は、長めの髪をポニーにシュシュで纏めてる。そして冬だからボーイッシュなダウンを羽織ってる。
俺は、狭い軽ハコバンの中に、大好きな女性と二人きりで(しかもほぼ密着状態だっての)いる緊張感にガチガチになってたんだろうな。
「あのさあ天塚クン。もしかして、彼女できたのって初めて?」
神田さんがいきなりそう切り込んできたよ。
「あ、え…そんなことないですよ」
俺は慌てて顔を両手の甲でこすって、ややどもってしまった。なんだかみっともない返事だったよなあ。
「ウソだな。見栄張らなくていいじゃん」
神田さんは微かな雪明りの中、小さく微笑んでいたのが分かったよ。
「ほんとっすよ!高校2年の時に、下級生から告白されましたしっ!」
「なんて言われて、告白されたの?」
間髪入れずに突っ込んでくる神田さん。
「えっと、えっと…」
「んもぉっ バカだなあ天塚クン…」
一瞬だった。
神田さんが素早く身体を起こして俺の顔を見つめた時にね、分かったんだよね。
神田さんの唇が、俺の唇に重なってきたんだ。
車外は、いつの間にか激しさを増した雪。風が強くなってきて、舞い散る雪は窓を白く覆っていく。
遠くの街灯の灯りはもう差し込んでこない。
俺はただ、神田さんの温かな体温を感じながら、初めての唇の感触に気が遠くなりそうだった。
ただ、俺の両手は神田さんの身体を抱き、ぎゅっと抱きしめるだけしかできなかった。
あとになって思い出せば、この時は本当に幸せだったんだろうなって。
(続く
8話まで(6/28現在)アップしてますよ。
あちこちふらふらする流れですが我慢して読んでくださいね!
なんだか、深入りしていいのか、悪いのか・・・・アハハ!
Pale Blueかぁ…youtubeで聴いてみたけど切ないですね。
天塚のこれからはどうなるのか…ってねw
お楽しみにー
この時は本当に幸せだったんだろうな、、←
切なさを予感しますね!
私の脳内で(続く の前で曲が流れます。
「ずっと ずっと ずっと 恋をしていた」
我らが米津玄師くんの Pale Blue です。
(宣伝ですww)
コメさんきゅです!
俺って案外、ハッピーエンドよりはサッドエンド好きなのかも(謎
12~15話で1シリーズなので、じっくりと書ききれる自信はないんですけど…でもま、
ガンバってみますね!
早速見に来ました、波乱の予感だ・・・
天塚くん頑張れ~!