PYG 今年で50周年
- カテゴリ:音楽
- 2021/06/13 11:03:36
子供時代に近所の還暦爺の家から大音量で半世紀前の大正歌謡が流れたら、
浪曲や小唄、骨董や書画に凝る年寄りと同一視して敬遠しただろう。
さて本日、朝から大音響でPYGを聴いている私も同じなのであろうか。
ジュリーとショーケン、井上堯之、大野雄二、岸部修三……
タイガース、スパイダース、テンプターズにサムライのメンバーも在籍した、
1971年デビューのスーパーグループがPYGです。
「いい」とは言いませんよ、とにかく好きなのです。
花火大会みたいに絢爛な現代の分厚いデジタルサウンドに比べりゃ、
場末の呑み屋の縁台でシケた線香花火やってるみたいに薄っぺらい音です。
PYGは本格ロックファンにはとにかく差別され敵視され迫害されました。
ナベプロ所属で超売れっ子GSの中心メンバーばかりで結成したうえ、
ライブも歌謡リサイタルみたいなプログラムだったので。
ただし、沢田研二と萩原健一の個性的な歌唱はもちろん文句なく素晴らしく、
本気でロック演ってるメンバーの技量も感覚もピカイチ。
コーラスだってバッチリ。ジャニーズ系の男闘呼組や嵐みたいな位置でしょうか。
私はジュリーがソロ活動を本格化させ、ショーケンが映像に進出し、
井上大野バンドもTVや映画の劇伴、どれも好きで遡りPYGを聴いたため、
偏見無く感心しちゃいました。同時期の日本ロックとタメ張ってます。
半世紀前なんですよねコレ。大瀧詠一の名盤は40周年らしいけど、
私にとってはこのアルバムのほうが遥かに大切です。
ショーケン、井上さん、大口広司は逝去してますが、記念公演ないかしら。
ここからマニア向きの話題。井上さんの後継者ってのがいないんですよ。
GSi以降の日本のギタリストは二種に大別できまして、
一方はスーパーギタリスト系、もう一方はスタジオ系。
前者は成毛茂、石間秀機、竹田和夫、竹中尚人(Char)……と続々現れ、
後者は鈴木茂、松木恒秀、大村憲司、松原正樹に今剛……こちらも大勢。
井上堯之の独自性は「ROCKマインドのスタジオ屋」という部分です。
PYG以降に井上さんは「自分の演りたい音楽を演るのはやめる」と決めた。
大病から復活した晩年まで、人を支えるミュージシャンとして活動した。
じゃあ下手なのか? バカ言わんでください。真似できないですよ。
スーパーギタリスト系もスタジオ系もコピーしたが、井上堯之という人、
一音のトーン、アーティキュレーション、ピッチが超絶に個性的なんです。
沢田研二の70年代ヒット曲を彩ったあのトーンとフレージングは唯一無二。
GS期の人でブリティッシュに影響受けたギター弾きは多いけど、
井上さんはジミヘン的ギミックトーンやフレーズには走らなかったし、
アルヴィンリーやジェフベック的ハイテクにもさほど影響されていない。
おそらく、イギリスだとポールコゾフとピーターグリーン、
アメリカだとレスリーウエストとマークターナー、クロッパーを好んだのかな。
「うたごころ」のあるフレーズとパンチある刻みなんか、凄く似ています。
こういうスタンスのギター弾きがいないんです。PYG再編を阻む大きな壁。
リスペクトを込めた模倣というレベルなら鬼怒無月氏あたりが楽々こなすが、
できれば同世代の名手で固めてほしいので……。
今、子供が数名、前の路地を小走りに駆けていった。
家に帰った彼らは、あの家から古臭くてうるさい音楽が聞こえたよと
親御さんに報告するのかな。PYGは現代のオッペケペ節かもしれん。
(付記)白眉は田園コロシアムライブ『Black Night~Walk in my shadow』かな。
ジュリーとショーケンのダブルリードボーカルにもシビれるけど、
俺たちゃロック演ってんだ文句あっか!という捨て鉢なバンドサウンドが尊い