【第10話】黄昏のソロキャン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/07/03 22:18:57
ん… レスないなぁ
もうこんな時間か…とデスクの目覚まし時計を見たら、夜まっさかりでさ。
俺は自分の部屋で、スマホをベッドに置いたまま、さっき送ったメッセージを画面上で目で追ったんだ。
『どもーっす! 今夜は天気が急激に悪くなるみたいだから、テントはやめた方がいいですよ(絵文字絵文字)』
ん…
既読もつかねーなぁ…
もう、送信してから30分も経つのにな。
朝、神田さんからメッセージが届いたんだけど、そのやりとりはこうだ。
『天塚クン、今日は久々マジなソロキャンしてくるね!』
『そうなんですかーー?俺、今日はバイトだから…』
『うん、こないだ聞いたからね。だいじょぶ、もともとガチのソロキャンパーなんだからっ』
神田さんは、ここんとこちょっとメッセージのやりとりも重苦しい感じだったような気がしてた。でも、今日はなんだか吹っ切れたような、以前の彼女の雰囲気に戻ってたように思えてね。
ちょっとほっとしてたんだ。
窓の外、急に風がきつくなり、そして最初はぽつぽつ、でも一気に雨足が強まってきたんでさ、心配になってさっきのメッセージ送ったんだ。
確か黄昏坂キャンプ場って言ってたよな… ここから割と近いから、天気もこんなな感じなんだろうって思うと心配になってきてね。
でも、反応がないんだよ。
死んでるのか? なわけねーし…って。
やっぱ心配だよね。
ベッドに俯せに寝転んで、テレビのバラエティ番組見てたけど全然内容が頭に入って行かない。外の雨はまるで嵐のようでさ、俺のアパートの部屋の窓にばんばん打ちつけてくる。
その時さ。
スマホが着信したんだよ。
俺は慌ててスマホを手に取り、画面も見ずに着信ボタンタップしていたんだ。
「もしもし?」
「あ、先輩ですかっ!」
その相手は、神田さんではなく、沙也加だったんだよ。
俺はちょっとがっかりして。でもそれを悟られないように声のテンションを無理やり上げてみたさ。
「おお 沙也加か?こんな時間にどうした?」
「先輩、悪いんだけど雨宿りさせてもらえません? 友達のとこから帰ろうと思ったらめっちゃ雨になっちゃったんですよっ!ずぶ濡れですよっ 濡れネズミですよっ!もう大ピンチなんですっ!」
「あのな沙也加…俺は部屋の窓際に立って、階下の舗道を見てたんだぞ?オマエ、今そこから電話してきてるよな??」
電話の向こうから、一瞬戸惑ったような沈黙が。でもそれは本当に僅かな一瞬でね。
「バレてましたかー でも、こんな暴風雨の中に、私みたいな可憐な少女を放置したりはしませんよね? 先輩っ」
俺はため息ついて
「わかったから上がってこいよ。401号室だから…」
「あざーっす!先輩!今日はキャンプ行ってなかったんですね。ラッキーでしたよ」
玄関に立った沙也加は、確かにびしょ濡れでさ。ショートヘアの髪からも水滴がぽたぽたと落ちていていたんで、俺は慌ててバスタオルを渡して、
「いいから上がれよ。風邪ひくぞ…とりあえず風呂入れ。さっき沸かしたからすぐ入れるぞっ」
「いいんですか? ふっふっふ さすが先輩、優しいですねっ」
「わわっ ここで服脱ぐんじゃないっ!」
「いいじゃないですか先輩~ 減るもんじゃなし… あはは」
「減るっ 減るっ 確実に減るから、風呂場で脱げっ!」
「脱げって…命令ですか? 案外先輩ってどSなんですねっ」
からかわれてるのか?俺…
てか神田さん以外の女性をなんで部屋に入れてるんだ? だめだろ?
仕方ないだろ?こんな状況なんだし、やむを得ないんだしっ
すりガラスの向こうで、ゴキゲンな調子で鼻歌歌いながら風呂に入ってる沙也加をよそに、俺はそんなことを考えてたんだ。
「…で、神田さんからレスホントにないんですか?」
風呂から上がった沙也加は、俺のTシャツとジャージを着てテーブルの前で体育座りした体勢で、そう突っ込んできた。
「あ、うん…でもまあ神田さんは俺なんかよりベテランキャンパーだし、とっくに避難してるさ」
ちらっと窓の外を見やりつつ答えてみた。
「でも心配じゃないんですか?先輩…」
沙也加が俺の顔を覗き込むように下から見上げてくる。俺はわざと何でもないように
「心配なんかしてないしっ」
「嘘ですね先輩。うそつきは泥棒の始まりですよ?」
ん、『泥棒の始まり』ってのには同意しないけど、心配なのはビンゴだ。
ドキドキしてる。
神田さんに何かあったんじゃ…って…。
沙也加は、にへらっと笑っていた。
「じゃ、行きますよ先輩。あんなポンコツ軽自動車でも大丈夫でしょ」
「え?」
俺はぽかん、としちゃったんだよな… なんだ?って思ってさ。
「馬鹿ですか先輩?今から神田さんをレスキューしに行くんですよ!さ、行きましょう! もちろん、私もついて行きますよっ!
(続く
ああ・・・魔法使いに魔法かけられてるかもぉ~~~
黄昏のソロキャン~蟻地獄編~
少年負けるなw
沙也加ちゃんは良いタイミングで天塚くんのところに来ましたね。
いよいよかな~?
天塚くん、どっちにしろ振り回されてそうね
あともう少し感でてきましたね、続きも待ってます