【第11話】黄昏のソロキャン
- カテゴリ:小説/詩
- 2021/07/06 20:55:12
結構強い雨足。俺の軽箱バンはフロントウインドウが滝のようになっていて。
「先輩、この車ってやっぱり遅いですね~ほらまた抜かされたっ」
大型トラックが、夜の国道を一気に、俺の車を置き去りに抜き去って行ったんだよな。
「うるさいなぁ… ちょっとは黙ってろよっ!」
カーラジオからは某公共放送のアナウンサーの声。これから朝にかけてこの一帯を暴風雨が…ってしゃべってるのが聞こえてさ。
「先輩 やっぱり焦ってますね。 いいんですよ?ここは坂道だし、軽自動車だし、もう20年目くらいだし」
サイドシートで両足を胸の前、両手で支えるような姿になった沙也加がけしかける。
「やかましいわっ!ちょっとは黙ってろよ…」
すると沙也加は
「あれー?先輩… やっぱり焦ってるんだ。いいなぁ、こんなに心配させるくらい先輩に愛されてる神田さんってさぁ」
「そんなんじゃねーよ… だから黙ってなさい…」
「…はーい…」
ん?なんだ意外に素直じゃないか?ちょっと怖いぞ?
車は激しい雨風の中、ややふらつきながらも黄昏坂キャンプ場に到着して。
車から降りて傘広げて、周囲見渡したんだけど。
やっぱり、台風並みの低気圧の影響か、オートキャンプサイトには殆ど車が停まってないんだよ。
みんな避難しちゃったみたいだ。
「あー もう誰もいませんね…やっぱり撤退しちゃったのかなぁ。神田さん…」
俺の傘に潜り込み、きょろきょろと目線泳がせる沙也加。こんな暴風雨だから傘なんてほんと役に立たないんだけど。
「せっかく風呂まで入れてやったのに、もうびしょぬれになってるじゃねーか…」
「そうですね先輩、じゃ帰ったらまたお風呂いただきます。着替えもよろしくですよっ!」
小さく笑って俺の顔を覗き込んでくる。
「…」
「そのあとは、美味しいご飯もご馳走してくださいねっ!キャンプ飯で料理の腕前を磨いたって、しずかさんから聞いてますよ」
「…」
「なんなんですか先輩っ!返事くらいしてくださいよっ!」
沙也加は頬を膨らませて抗議してきたんだけど、俺は返事どころじゃあなかったんだよな。
停まってる。
見覚えのある、黄色いホンダのN-VAN。
大きな木の隣に、1台だけ停まってる。
「あ、あの黄色い車… ひょっとして?神田さんのN-VANじゃないですかっ?」
沙也加が目ざとく見つける。
そして俺の脇腹を、うりうりって感じで肘を押し付けてきてさ、
「ほらっ 先輩っ ここで得意のアレ、やっちゃいませんか?」
「はぁ?得意の…って なんだよ?」
俺は視線をN-VANから沙也加に移して、聞き返して。
「あれですよ あれ、例の…」
にまにま笑いながら、沙也加はすぅっと息を吸い込んで、
「天使坂でやった、 アレですよってば…
かんだ~~っ!!さおり~~っ!
って やつですよっ」
はぁっつつ???
何でお前がそんなことを知ってるんだ??
その時、俺が瞬間的に閃いた。
「しずかさんだなっ!!」
「しずかさんだよっ!!」
大笑いしながらオウム返しする沙也加。全くこいつってやつは…
「でも良かったじゃないですか、神田さんが残ってて。私がアドバイスしたからここに来たんだし、結果オーライですよね?」
俺と沙也加は、神田さんの車に向かって、雨水含んでぬかるんだ通路を進んでいく。
「ま、まぁな… 沙也加に背中押されたから来たんだしさ。ちょっとストーカーっぽくてなんなんだけど…」
「照れないでください先輩!」
「あはは、まあいいさ。でもなんて声かけようかな…悩むぞ…」
「だからっ 例のアレですよ、アレ」
「あほかっ!」
そんな会話をしつつ、神田さんの車に到着した俺たち。
キャンプサイトのLED照明は、こんな悪天候でもそれなりの明かりを提供してくれてる。
ちょっと戸惑ったけど、俺と沙也加は車の中を再度ウインドウ越しに覗き込んでみた。
一瞬、天空を雷光が走って、車内がはっきりと見えたんだよ。
なんだ?
なんなんだ?
なんだこれっ??
「… あっ…」
『…神田…さ…??』
小さく叫ぶ沙也加。
声も出せずに、固まる俺。
車の中、バックシートを倒した車中泊空間。
そこに、俺は、一番見てはいけない、最も見たくない光景を見たんだよ…
(続く
これはちょっと、まいったなあ、、
( ↑ だれ?ww)
天塚くん頑張るんだ~
沙也加ちゃん、ひっかきまわしながら話進めますね~(^^♪
次は修羅場ですか・・?