晩夏
- カテゴリ:小説/詩
- 2021/08/10 16:56:52
あの夏の夜
ここにおいで
あなたは言った
ベンチの隣に座って
私はとても幸せだった
二人星空を見上げて
そこに見える星達は
私達を包んでくれた
そう
もういないあなたと
たった一枚の別れの言葉
これをどうすればいのだろう
何も言わず
何をする事もせず
前から消えたらあなた
ここにおいでと言ったのに
一緒に星空を見たのに
あなたは覚えてないの
そんなに希薄なものだったの
私はそうじゃなかった
愛していたのに
包んでいて欲しかったのに
どこに行ったのか
私もわからない
誰が教えて
夏が去っていく
あなたへの想いは消えない
夏が終わっていく
あなたはここにいない
私一人の晩夏
待っていたい
できることなら
たとえ一人でも
いつ会えるか分からなくても
心が寂しがっている
海に来た
あなたと来た海へ
あなたと見た夕陽は
あの時のままで
だから私もあの時のままで
夏の星、秋の星、輝きは違うけれど、私の心には同じ。
あなたを失ったいまでは。
あなたの代わりに
秋の星たちは
少し離れてその言葉を聞いていた
少し困った顔をして
弱い光を微かに放ちながら
暗い砂浜を歩く
昼間の灼熱を素足に感じながら
海が泣いている
打ち寄せる波がそう伝えた
ありがとう
私のために
見上げると無数の星が滲んで見える
月もない漆黒の空に
瞬間明るく星が一つ流れた
あなたの声がした