Nicotto Town


あなたに会えてよかった♪


【第3話】青空の行方~ゆくえ~


「さぁ、いよいよ2年生最初のイベント、林間合宿が来週に迫ってきましたね。てなわけで今日のホームルームは、合宿の班分けをやります!じゃあ、適当に別れちゃってください!1班8名、男女各4名の混合で、合計4班だからそのへんはうまくやってね!」

槇原先生がそう言って両手を胸の前で、ぱんっと叩く。

天使坂高校は、2年生になった4月の3週目に、毎年2泊3日、林間合宿の共同生活を通じクラスの団結を目論むのが恒例だった。

「沙也加どーする?俺と組む?」
クラスの面々が探りを入れるように声を掛け合う中、拓海はぼんやりと座ったままの沙也加にそう言って誘ってみた。
「そうだね…でもあと6人、誰かいるかな?」
ちょっとだけ頬を紅潮させ、沙也加は周囲を見渡す。そしてふと、悪だくみが浮かんだ表情になって、

「拓海さぁ… 天塚さん誘いたいんでしょ?早くしないと他の班に取られちゃうわよ?」
「な、なに言ってるんですかっ」
本当に分かりやすい奴。そう沙也加が思ったのは間違いないところかな。


合宿と言ってもテントに泊まったり、薪を拾ったり魚を釣ったり、などというハードなものではない。ちゃんとコテージが準備されていて、男女混合の班に1つづつ、合計4棟の立派なもの。

「へぇ…てことは…思春期真っ盛りの16から17歳男女が、一つ屋根の下で2晩過ごすってことかぁ…」
「何ニヤケてんのよバカ。ちゃんとコテージは2部屋に別れてて、鍵だってついてるってこれに書いてあるじゃない」
沙也加は、ホームルームの最初に配られた「合宿のしおり」を拓海の顔の前に突き出して睨みつけてきた。

まあそうのんびりもしていられない。班のメンバーを決めないと…と思っていたところ

「西藤クン、俺も班に入っていいかな?」
そう言って二人に同意求めるように近寄ってきたのは辰衛健人だった。

「もちろん歓迎だよ。てか、辰衛クンとお話するの初めてだよね?」
頭のてっぺんから突き出るようなソプラノで答える沙也加。

「おい…辰衛クンは俺に話しかけてんだぞ?…てか、俺と話す時、そんなよそゆきの声出してたか?…」
「うるさいっ! 黙れっ!」
脇腹を肘で突かれ、呼吸が止まって目を白黒させる拓海を放置した沙也加は
「あ、でも私たちで本当にいいの?わちゃわちゃ五月蠅いメンバーだと思うけど、辰衛クンって何だか真面目そうじゃない」

「大丈夫だよ。合宿は自炊がメインだから、調理同好会の椎名さんがいる班だと安心だしね」
「いや、キミは知らないんだ… こいつってこんな同好会に入ってるくせに、めっちゃメシマズ… いてっ!」
にっこりとした表情を浮かべつつ、辰衛に見えない角度で再び拓海にエルボーを見舞う沙也加。

「沙也加っ 私たちも同じ班でいいかな?」
次に声を掛けてきたのは中森由紀菜だった。
ふんわりボブが窓から差し込む春の陽光にキラキラと輝き放つ彼女の隣には宝生結衣が、申し訳なさそうな感じで立っている。

「へぇ… 中森さんは、宝生さんと仲が良かったんだ?」
拓海は目を丸くしてそう訊ねた。

「うん。席も隣同士だし、最初に仲良くなったのが結衣ちゃんなんだよ」
「ん…まあいいんじゃない?これで5人だし…調理同好会で同じだし、由紀菜は私と同じで、料理めっちゃ上手だから心強いわ」
その言葉とは裏腹に、ちょっと複雑そうな感じではあるけど、沙也加は参加を認めたように頷く。
もちろん拓海は反対するわけがない。

「さーて、…そろそろ決まったか? まだの人っ手を挙げて!」
班分けって結構手間取るんだよね。まだ所属が決まっていない生徒たちがうろうろしているのを見咎めた槇原先生は目をすっと細めて

「なんだ?まだ決まってないのがいるのか?仕方ない、もう時間ないから、残ってる連中は先生が決めちゃうぞ!」
まぁそうなるだろうな…と拓海が思った瞬間だった。
「天塚さんは西藤クンの班にっ!あ、あと男子2人、誰か希望者いる?」

天塚さんが同じ班?
えええっ 
拓海と沙也加は、同時に同じような驚いた表情を浮かべた。同じ反応なんだけど、二人の心の奥は全く違うものだったのは誰も気付かなかった。

「よろしくお願いします…」
ペコリ、と頭を下げる天塚楓。ツインテの髪が眩しい。拓海は声も出せずに頷くだけ。
「うんうん、天塚さん、よろしくねっ!」
本心はどう思っているのか、でもそれを押し隠して満面の笑顔の沙也加。


「俺も同じ班だから、よろしくなっ」
「俺もだな…よろしくね」

槇原先生が最後に、拓海たちの班にぶっこんで来たのが、モテ男の富岳一平と、彼とは全く正反対キャラの由宮涼だった。

ワイワイ言いつつ、何だかんだで班分けは終了したが、これは槇原先生の絶妙な匙加減もかなり貢献していた感じだ。

「はいはいっ 決まったら、次はリーダー決めといてね!」
黒板に班のメンバーの名前を書き留め、槇原先生は軽くウインクして。一番面倒くさい行程を終えた満足感に浸っているようだった。
「2泊分の夕食のメニュー決めるんだよ!準備とかも班ごとにちゃんとやれよ!分かった?」

運命を分ける林間合宿が始まろうとしている。
(続く







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2024/02/07 18:32
拓海君と天塚さんが、同じ班か~。
それに沙也加ちゃんも加わって、どうなるのか、気になる^^
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2021/08/14 21:03
林間合宿って、楽しそう~~♪
きっと、何か起こる気配^^
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2021/08/14 15:49
高校でこんな行事あったら面白そう!
神奈川県の高校はなかったよ~!

修学旅行しかないけど昨今はそれも行けないみたいだから可哀そう・・
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2021/08/14 14:46
林間合宿のお話し、これからが盛りだくさんなんだろうね~(⌒∇⌒)
泊りがけとか夜とかなにかありそう~w
好きな人と同じ班だなんて、私は女子高だったからそういう経験なかったから、こういうのうらやましいな(o^―^o)ニコ




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