コックオーヴァン
- カテゴリ:自作小説
- 2021/08/21 14:43:53
駅近くにあるファミレスで、ブレンドコーヒーを飲みながら、亜希子を待っていた。ファミレスに入ったのは、学生の時以来だと店内を眺めた。日曜日の昼過ぎの店内は、学生らしい若者や女性客で賑わっていた。香りのしない珈琲を飲むのをやめて、スマホを見ていると、亜希子が向かいのソファー仕立ての椅子に座った。
亜希子は、時計を見ずに「お待たせ」と言った。そもそも待ち合わせ時間を守ろうとも思っていないのだろう。店員に、ブレンドコーヒーを頼むと、「呼び出しちゃって、ごめんね。賑やかな場所の方がいいと思ったの。」と言った。
珈琲がテーブルに置かれると、亜希子は、「私、好きな人ができちゃったの。ごめんね。」と切り出した。次の言葉を待っていたが、彼女は何も言わなかった。あれこれ言われるより、その方が、さっぱりしてていい。
亜希子は、養成所に通いながら役者を目指していた。この春、養成所を卒業し、芸能事務所に入り、先月受けたオーディションに合格し、端役だが映画に出ると言っていた。
新たなステージに立つと、それまでの世界が色あせて感じる。亜希子にとっては、自分も色あせた世界の一人なんだろう。長居は無用だ。席を立とうと、伝票を手に取ると、亜希子に「ちょっと待って」と言われた。
亜希子に頼まれ、自分のスマホを渡すと、彼女は、LINEのトーク履歴を削除した。写真のフォルダを開きながら、「私の写真って、全然ないのね。」と言った。旅行に行っても、写真は撮らない。記憶に残していれば十分だ。
亜希子は、「ここに、保存しているんじゃない。」と言いながら、お気に入りフォルダを開き始めた。
「料理の写真ばっかりじゃない。一人でお店に行っていたの?」
「自分で作った料理。親父が、店をやっているんだけど、緊急事態宣言で、店閉めてて暇だから、料理を教えてくれているんだ。」
「お父さん、コックだったの。どこのお店。」
「青山のQueue de cochon」
「予約が取れないお店で、有名じゃない。」
「今、店閉めているから。」
「そうじゃないわ。健二の作った料理を食べたくなったわ。これから、作ってくれる。」
「いいけど、時間かかるよ。」
亜希子は、ソファーで寝転がってスマホをいじり、料理を手伝う気はなさそうだが、キッチンに立つと、亜希子のことは、意識から消えていった。一人で給仕もしないといけない。あらかじめ作って置けるように、スープも前菜も冷たいメニューにすることにした。
スープはじゃが芋のビシソワーズ。じゃが芋と長ネギをバターで炒めて、コンソメで煮たてる。木べらで潰しながら、ミルクを注ぐ。火を止めて、ミキサーにかけ、生クリームを入れて、塩・胡椒で味を調えて、冷蔵庫に冷やしておく。
前菜は、夏野菜と甘エビ、ホタテのマリネ レモングラスのジュレ添え。鶏ガラスープに長ネギの緑の部分とセロリ、白ワインに浸けて臭みをとった海老の頭、それとレモンの皮を刻んで入れて煮込む。濾したあと、ゼラチンを入れて氷水をあててジュレにする。
グラスに、胡瓜、ホタテ、甘海老、半分に切ったプチトマトを盛り付け、塩・胡椒でアセゾネして、ガーリックパウダーとバジルオイルをかける。ジュレを注いで、冷蔵庫に冷やしておく。
メインは、調味料は塩だけのシンプルな鶏肉の赤ワイン煮のコックオーヴァン。鶏モモ肉の両面を焼いて、焦げ目を作り、フライパンから取り出しておく。玉ねぎ、マッシュルーム、人参、ベーコンを炒め、赤ワインを注ぎ、鶏肉を入れて、1時間半煮込む。塩も小さじ1杯入れておく。煮込み終わったら、バターと小麦粉を混ぜたブールマニエを加えてトロミを出す。塩で加減を整えたら出来上がり。
食卓に、グラスを置いて、冷やしておいたドメーヌ・タリケを注ぐ。魚介類に合う白ワイン。前菜とバケットをテーブルに並べると、亜希子を呼んだ。
ブリヤ・サバランは、食卓に必要なものは、「そこそこ美味しい料理、よいワイン、感じのいい会食者、十分な時間」と書いた。昨日までは、感じのいい会食者だったが、今日は微妙だ。しかし、女優を目指すだけあって、カラフルな夏野菜と甘エビ、ホタテのマリネ レモングラスのジュレ添えより華やかで美しい。
亜希子は、自分から別れを切り出したと思えないほど、最近、仕事忙しそうねとか、忙しいからニコ店回りができないんじゃないのと話しかけてくる。愛想がなければ、芸能界では生きていけないのだろう。
デザートは簡単に作ることができるイルフロッタント。カスタードクリームの上に、焼いたメレンゲを浮かべる。デロンギでエスプレッソを淹れた。
皿を洗っていると、リビングの亜希子が、「今夜、泊まっていい?」と言った。空腹が満たされると、女は性欲が増し、男は無くなる。それ以前に、自分にもプライドがある。亜希子を駅まで送っていった。
部屋に戻り、エスプレッソを淹れて、煙草に火をつけた。何も考えずにぼっとしていたが、心に何かがひっかかる。
コックオーヴァンの最後に、チョコレートを入れておけばよかった。赤ワインは酸味が強い。仕上げに、チョコレートを入れるとまろやかになる。悔やみきれない。
もう一本、煙草に火をつけた。心に何かがひっかる。最後に、もう一回やっておけばよかった。悔やんでも悔やみきれない。
平安時代から1000年が経ちましたから、美の概念が変わってもいい頃です。人類もそろそろ、ニュータイプとして覚醒し、物質界を超越した精神の流れで美しさを競う世の中になるはずです。
じゃぁ~私は、平安時代以来豊満さが美の象徴を重んじて
腹周り強調派で (*´σー`)エヘヘ
想像するに、健二君は女性と付き合うより、料理の楽しさに目覚めて、求道者のように過ごすような気がします。父の店を継ぐために、フランスに旅立つ気がしてきました。パリジャンと恋に落ちるかもしれませんが、シュークリームの食べ歩きに精を出すようなるかもしれません。
mさん
お百姓さんのことを考えると、残さず食べずにはいられません。一人分の量を作るのは難しく、少なくとも二人分の分量はできてしまいます。うどんを茹でる時も、こんなにお湯を沸かしたのに、一人分だけ茹でるのはもったいないと思ってしまいます。コンビニ弁当の方が、一人分で無駄がないかもしれません。
たしか言ってました。これから結婚することがあれば気を付けてください。
今日全部食べたから、妻が「足りなかったのか?」と翌日「量を増やす」→夫が全部食べ→次の日、さらに量が増え(-.-)(-.-)
次の女性の出会いが楽しみ。
美しくて派手な女性が好みのタイプかもしれないけど、
控えめでふんわりとした女性が似合うんじゃないかな?って思いました^^
文化人類学的な考察が必要です。江戸時代から平均身長が20cm伸びたことから、豊満なバストになった理由として栄養面の改善が考えられます。それと、平安時代以来豊満さが美の象徴でしたが、国技が相撲であることからも豊満さの対象は腹周りでした。現代の日本文化と言えばアニメですが、ヒロインの大半の胸が大きいことからも、豊満さの対象が変わってきたことが考えられます。一方、文化は長年にわたり少しずつ変化するから、現代の女性においても、豊満さを胸で強調する派と腹周りで強調する派が混在していることが考えられます。
mさん
武士は食わねど高楊枝と据え膳食わぬは男の恥という言葉があり、どちらが正解か難しいところです。据え膳を食べたら、たいていは、その後が大変になることから、プライド優先が正解かもしれません。しかし、自分は、出されたものは残さず食べるタイプなので、気をつけないといけません。
ろくさん
最後の一回と口に出す男は、そうはいないとは思いますし、多くの場合は、そんな気分になるシチュエーションではないでしょう。しかし、最後の一回と男性に未練を感じさせながら別れることが出来る女性が、一枚上手です。たいていは、男のプライドを徹底的に木っ端みじんにする女性が多いのではないでしょうか。
wineさん
好き嫌いで別れるのではなく、これから有名になって、フライデーされたら不味いわと、なんとなく別れようとしているからでしょう。それに、なんとなく付き合っているからかもしれません。若い頃の恋愛は、そんな感じじゃないでしょうか。青山にうどん屋はないと思っていましたが、一軒ありました。しかし、メニューの貼り紙意外に、うどんが登場しません。
https://meetia.net/feature/bokuranoikitsuke-udonai/
じゃがいもと長ネギのビシソワーズ、作ってみようと思う。いつも玉ねぎなんです。
別れ話から、食事して泊まっていい?などと言えるのが、わからんのう。
さっさと、次へGOーーー!
天気どうです?こっちは降ったり曇ったり風が強かったり・・・(-.-)
ネットがざわついてますね~w
大人女子のバストは何歳まで成長するのでしょうかね?
20代に豊満バストだった「優香」や「MEGUMI」は
20代後半には小さくなったぁ~って聞いたことありましたけど・・・
沖人さんはじめ 世の男性陣の強い思いが彼女のバストの成長を促しているのでしょうかね?
以前、ANAは、立派な超合金の747型の模型を配っていました。大人も欲しくなりました。
涼華さん
主人公は自分が食べたかっただけだと思うのです。それと、フランス料理で一人飯は、忌避されているので、やむを得なかったのでしょう。
空港からバスに乗り込んだら、ほとんどの人が機内でもらったボトルをリュックの脇に挿してました
わたしはおもちゃもらってる子が羨ましかったです
ペットボトルが貰えるのは、国際線みたい。昔は、ワインのミニボトルやミックスナッツを好きなだけもらえたり、カウンターバーがありましたが、寂しい機内になりました。
太さがあって腰があって、いりこ出汁が気に入ってるから五島も稲庭も及びません
機内サービスではペットボトルのお水をもらってる人が多かったです
JALとANAは、乗る機会がなかなかありません。LCCばかり乗っているので、珈琲も出ません。あごだしは、五島うどんの特徴だった記憶があります。
AIRDOのじゃがバタスープと、ソラシドエアのアゴユズスープが気になりました
機内食のコンソメは、Airdoがお気に入りでしたが、ネットの評価によるとJALの優勝でした。
https://flyteam.jp/news/article/132495
コーンもカボチャも好き クラムチャウダーも('ω')ノ
ANAの機内で雲海みながらいただいたコンソメも美味しかったです(^<^)
フランス料理と和食と同じように文化の違いを感じます。我が家には、ラーメンどんぶりがありません。実家にもラーメンどんぶりがありません。おそらく香川県民は、生まれつきのミニマリストか本能的にラーメンの存在を認めていないのでしょう。そのせいで、ラーメン次郎に一度も行けていないことが、悔やんでも悔やみきれません。
つん
我が社はブラック企業なので、夏休みをまだ貰ってません。それと、女優の玉子より、国民的女優の方がいいでしょう。今ホットなニュースは、ルキアのCMで『綾瀬のバスト、迫力増してるねと絶賛と驚きの声が上がっている。25歳の時から大きく進化した36歳の綾瀬はるかバスト。その魅力は今後さらに増しそうだ。』。
あずさちゃん
じゃが芋に風味をつけるためかな。じゃが芋600gにポロネギ100g、玉ねぎ100gの分量だから、メインはじゃが芋。だけど、調べてみると、たまねぎのポロネギだけのビシソワーズもあった。白状すると、ビシソワーズより、温かいコーンやカボチャのポタージュの方が好きです。
食洗器はほしいな
人生っていろいろありますね・・・
ファイト!(^^)!
ふと振り返れば、ちゃんとしたフランス料理を最後に食べたのはいつだろう?
誰かの結婚式が最後だろうけど、かな~り昔のはず、と遠い目になりました。
今日はフライパンでできるカレーラーメンというものを作ってみたのですが、
うどん用の丼にうっかり入れてしまいました。
悔やんでも悔やみきれませんが、もう1食あるので、明日はラーメン丼でリベンジします。
健二さんも、別の女の子でリベンジすればOKです。
女優の玉子と付き合うと、ノルマの演劇チケットをたくさん買わされて、お金がなくなってしまいます。つきあうなら、アイドルの玉子の方がいいと思います。チェキの1000円ですみます。
りんごさん
料理の定義は分かりませんが、から揚げの定義は、揚げ油を使用した調理方法、またその調理された料理を指す。 食材に小麦粉や片栗粉などを薄くまぶして油で揚げたものです。
時間を守るって大切なことだと思う。それに利用的な亜希子さんだと、また繰り返しになりそうだから、紳士的に駅まで送った僕は素晴らしい人だと思いました。
最後の1行は、もう未練がない女性に対して思う気持ちだと思ったよぉw
沖人さんの日記を読んで、料理を作る楽しさ、食べる楽しさを学べました。ありがとう。
沖人さん、新作料理に挑戦してください。
別れを切り出したのに、手料理を作らせるなんて、したたかだね。
泊まっていたら、二股をかけられていたのかな?
料理の細かな表現がすごいね。
空腹につけ込むのがチャンスかもしれません。渋谷でナンパするなら、夜ではなくて、午前11時とか午後6時、もしくは、午前7時でしょうか。焼き鳥のいいにおいを嗅いだら、赤ちょうちんに引き込まれるお父さんたちと同じでしょう。
目の色が変わったなと思いました笑。
どれもプロレベルで美味しそうだし・・・
このまま帰さなかったら、うやむやにされていたんだろうなと
容易に想像出来たかも。
男のプライドって難しいですね。
でも態度を変える女性だと思ったら、それで良かったかもね・・・