ネイル
- カテゴリ:小説/詩
- 2021/08/30 11:27:24
夜中の零時
日付けが変わった
昨日まで付き合っていたあなたが遠くなる
もうカレンダーは今日なのだから
こんなものだ
ネイルを塗り直す
こんな夜更けに
昨日までの私にさよなら
今度はどんな色にしようか
あなたの好みを考えることはない
もう一度考えて欲しかった
私達二人のことを
短いものではなかった
寄り添い歩いた
あの空気は何
愛していた
あなたを誰よりも
あなたもそうだと思っていた
だからこんなに悲しい
ネイルを塗る手が震える
これからどうしよう
あなたなしで
車の音が響く
こんな時間に
あなたに送られて来た時のように
何一つもいとしい
あなたにもらったものが
そしてあなたが
もうその手にも触れられず
過去になってしまったのに
もう一度抱いて欲しかった
あなたの大きな胸に
でももうそれすらなく
あなたの愛もなく
どうしろと言うのか
ネイルが乾いていく
爪先を白くしてしたは肌
地味な色だけど
今の私にはちょうどいい
華やかな色の影は眩しくて
夢がありますよね。
爪の先のネイル。その色はあなたは知らない。
ステキでロマンチストな時ですね。
無言で指先がにじむ
ネイルを塗る手が震える
もう少し待とうかな
このまま夜の明けるまで
悲しみの色ってどんな色
深く暗い海の色
独り寂しく見るくすんだ夕暮れの色
涙をぬぐい目をつぶる
私だけの遠ざかる愛を
かざす小さな指先が見えた