Nicotto Town



思い込むということ

今日、仕事の打ち合わせをしていました。とあることについての習慣化がテーマです。


それで、打ち合わせ中にある人がこんな発言をしました。「最近はリモートで仕事をしてるけれど、週に2回くらいは朝のうちに駅前のカフェで仕事をして、そのまま会社に出るんです。それを習慣というのか気分転換というのかはよくわかりませんけど…」。ハッとしましたね。私は、「習慣」というものを無意識のうちに「何らかのルールに基づいて、定期的に行われること」と定義づけてしまっていました。もちろん、何時何分から10分30秒だけ英語の勉強を二日おきにやる、といった厳密性はないにしても、おおよそのルールと定期性があるということです。
彼の語ったカフェ通いには、私の定義した習慣のようなルールや定期性はありません。しかし、では来週以降は突然やらなくなってしまうのか、いままでもポッカリ一か月間はやっていなかった時期があるのか、というとそんなことはありません。つまり、ルールや定期性はないものの、「継続性」はあるのです。これも習慣と言えば習慣でしょう。つまり習慣とは、ルールや定期性というミクロな定義の外側に、習慣性というもう少し大きな定義があってもいい、ということです。これは落とし穴でした。久しぶりに、自分の無意識の予断による落とし穴を自覚しました。


シジュウカラという鳥がいます。
街中でも見かけることのできる鳥ですが、シジュウカラは言語を操る鳥として知られています。鳥の中には、鳴き声の種類ごとに意味があるものがいますが、シジュウカラはさらにその鳴き声の組み合わせで文章を作ることができます。例えば、「警戒せよ」と鳴いた後に、「集まれ」と鳴くと、それは「警戒しながら、集合せよ」という文章になり、実際にある群の中で任意のシジュウカラがその鳴き方をすると、周囲のシジュウカラがその個体の周りにキョロキョロ(=警戒)しながら集まってくる(=集合)そうです。さらに、シジュウカラはコジュケイと群れを作って行動することがあるようですが、驚くことにシジュウカラ語で「警戒せよ」+コジュケイ語で「集まれ」と鳴いても、ちゃんと警戒しながら集合をするそうです。つまり、群れの中で過ごした結果、コジュケイ語で「集まれ」と鳴くとコジュケイが集まっている姿を観察することで、後天的にコジュケイ語を学習して、別言語の組み合わせでも文章を構成し、理解するようになる、ということです。

ゴリラに手話を40年間教え続けたら、人間と手話で会話をするようになったという実験もあります。例えば、ゴリラが自分の意志で「猫が欲しい」と飼育員にアピールし、飼育員が子猫を数匹連れていくと、その中から一匹を選んで、本当に育て始めたそうです。そして事故でその子猫が死んでしまうと悲しんでうつ病になり、飼育員が手話で「猫はどうしたのか?」と聞いてみると、「猫は寝た」と返事をしたそうです。「死ぬ」という概念の言葉を知らなかったので、「寝た」と近時の状態を表す言葉で表現したのです。
またキュウリを見せたときに、キュウリを知らなかったそのゴリラは、「その緑色のバナナをくれ」と、形状の似ているバナナにキュウリを置き換えて、緑色のバナナと表現する工夫をしたそうです。
にわかには信じられませんが、本当の話です。ちなみにそのゴリラのIQを疑似的に確認したところ、推定でIQ90と出たそうです。人間の平均的なIQは90~110と言われていますので、人間の平均値の下端レベルの知能があったことになります。

動物には意思はない、動物は思考しない、動物には言語がない、昔はよくそう言われていました。しかし、そこには一つの思い込み、あるいは予断としての前提が存在しています。


意思を持ったコミュニケーションとは、人間が言語として認識可能な手段によって行われるものだ


しかし、人間が理解不能なコミュニケーションの手段が存在するかもしれません。テレパシーだって通常の人間には判読不能ですが、しかし実はカブトムシはテレパシーで普通に会話をしているのかもしれません。ただ、それを肯定も否定もする手段が人間にはない、というだけのことです。
シジュウカラは、人間が気が付いていないだけで、はるかに複雑な人間には理解不能な文法での会話をしているのかもしれません。
ゴリラは、人間の言語文法に則っていないだけで、人と同程度の知能による会話を普通にしているのかもしれません。ただ、我々にはそれが会話だと気が付くことが出来ていないだけで。むしろそれだからこそ、ゴリラは人間の言葉(手話ですが)を自身の持つ言語システムをに置き換えながら学習し、駆使することができたのかもしれません。

人間が理解していることなど、この世界のほんの一部でしかなく、人は自らの生きるこの世界のことなど、なにも分かっていない。人が自らが地球の王であるという、何の根拠もない不遜なまでの尊大さ故に自滅することがないことを、祈るばかりです。




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