オスプレイ(前編)
- カテゴリ:自作小説
- 2021/09/19 01:24:24
収集袋に入れたゴミを持ち、100m先の収集場所まで歩いて行った。カラス除けのネットをめくり、既に捨てられていたゴミ袋の隙間に押し込んでいたら、おばさんが近寄ってきた。
「あんたさ~、ちゃんとゴミの分別をしているの。ここは、近所の人が当番で掃除をしているの。あんたは、掃除をしていないでしょ。ここに捨てないでくれる。分かるわよね。」
ゴミ袋を持ち、来た道を戻った。居間代わりにしている事務所で、ゴミ袋を開けると、腐敗した匂いが立ち込めた。コンビニのゴミ箱に捨てるために、レジ袋に、ゴミを小分けした。手を洗い、あちこちが破れたソファーに座り、煙草に火をつけた。
隣の米軍基地で、オスプレイが離陸の準備を始め、爆音が轟いた。薄っぺらな窓ガラスが、割れそうになるほどガタガタと音を立てている。近所の人に会わないように、収集間際の時間を選んだが、見張られていたのだろう。ゴミを見るのと同じ目で自分を見ていた顔を思い出し、煙草を灰皿に押し付けた。
米軍基地に隣接するガソリンスタンドに住んで15年になる。父が経営していたガソリンスタンドだ。今は、ペンキがはがれ、錆が浮き、敷地は草でぼうぼうになり廃墟のようになっている。
物心がついたころに母が家を出ていき、ガソリンスタンドを経営していた父と二人で暮らしていた。米軍基地相手の商売だったが、中学生の頃に、米軍との契約が打ち切られた。営業を続けたが、赤字が膨らみ、高校2年の時に潰れた。
住んでいた家は、借金の形に差し押さえれ、父は、あてもなく大阪に出ると言った。一緒に行くかと言われたが、その頃の父は、疲れ果てて、死んだ方が楽だというのが口癖だった。そんな父と一緒に暮らしたくなかった。
ガソリンスタンドは、昼間はヘリの騒音でテレビの音も聞こえない二束三文の土地で、地下のタンクから漏れた油で土壌は汚染されていた。施設も老朽化している不良資産だった。土地も祖父の名前で登記したままだったので、そのまま放置された。ガソリンスタンドの事務室に住むことした。
ガソリンスタンドの経営が傾き人を雇えなくなってから、父を手伝っていたので、高校にもほとんど通っていたかった。そのまま、高校には行かなかった。生活費を稼ぐために、コンビニでバイトをしていたが、高校を辞めても店長はそのまま雇ってくれた。
小分けしたゴミ袋を2つ持って、バイトに行った。コンビニは、米軍基地の近くにあり、客の多くが軍関係者だった。15年、ここでバイトをしていたので、片言だが英語でやりとりができようになっていたが、早口でしゃべる客に尋ねられたことが分からなかった。レジを手伝って欲しくて、ベルを押したが、同じシフトに入っている武田がバックヤードから出てこなかった。
一息つき、バックヤードを覗くと、武田はスマホで話していた。武田は、地元の高校生だ。ドアを開けようとすると武田の声が聞こえてきた。
『それでさ、バイトのおっさんの髪形が、まじおもしろくってさ。右と左で長さが違うの。絶対、自分で切ったんだぜ。三十二なのに、バイトで食ってんの。俺と自給50円しか違わないし。人生、詰んでんじゃん。』
扉を開けて、中に入った。
「なんで、ベル鳴らしたのに、来ないんだよ。」
「おっさん、バイトのプロじゃん。一人で出来んじゃん。」
武田の胸倉を掴んで、壁に押し付けた。
「熱くなんなって。悪かったよ。」
武田を離して、レジに戻ったが、武田は、バックヤードから出てこなかった。
翌日、武田の勤務態度を店長に話そうと思っていたが、逆に、店長に事務室に呼ばれた。そこには、ゴミ捨て場にいたババアがいた。
「上杉さん、昨日、武田君に暴力を振るったんだって。」
「バイトをさぼっていたので、注意をしただけです。」
「武田君のお母さんが、警察に通報するからビデオをダビングさせてくれって来ているんだ。」
店長は、僕に武田の母に謝れと言って、武田の母には、僕を辞めさせるけどビデオのダビングは渡さないと言った。
バイトをクビになり、ガソリンスタンドの事務室でネットゲームをしていたら、外から呼ぶ声が聞こえた。ドアを開けると、ネクタイを締め、カバンを持った男性が二人立っていた。
「丹古田市役所ですけど、上杉さん、ここにお住まいでよね。ここは、居住用の建築物でないので、建築基準法違反になるんです。今日は、建築基準法第10条3項に基づく是正措置命令をお持ちしました。従っていただけないと、第4項に基づく代執行をさせていただくことになります。固定資産税も、ずっとお支払いをいただいていないので、督促状を送付していますが、お支払いもお返事もいただいたことがないようです。このままだと、こちらも強制執行で競売になりますので、早めにお支払いください。」
男達は、書類をテーブルに置くと出て行った。外に出ると、武田のババアがいた。役場に通報したのだろう。あちこちが破れたソファーに座って、煙草に火をつけた。オスプレイの爆音が聞こえてくる。
希望もなく、住むところすら失い、存在すら疎まれる。生きることに疲れ、生きる意味も分からなかった。この町から逃げ出した父の気持ちを理解できた。15年間、父からの連絡は一度もなかったが、生きてはいないのだろう。
死ぬことは怖くなかったが、廃墟のようなここでは死にたくなかった。死ぬなら、景色のいいところがいい。オスプレイの爆音が響いた。死ぬ前に、アメリカに行ってみよう。片道くらいの金ならある。飛び降りるなら、東尋坊より、グランドキャニオンの方がいい。
目的ができたら、気が楽になった。窓の外を見ると、爆装したFA-18ホーネットが滑走をはじめ、翼の下には、MK-83、1000ポンド爆弾を10発抱えていた。倉庫に、硝酸アンモニウムがあったことを思い出した。
硝酸アンモニウムは肥料の原料だが、210度に加熱すると爆発する。硝酸アンモニウム96%、軽油6%の割合で混ぜると爆薬になり、躯体に圧力釜を使えば爆弾になる。
事務室の中には、中身が入ったままのゴミ袋がまだ残っていた。このまま、いなくなると武田やその母の思惑通りになってしまう。爆弾もどきで驚かしてからアメリカに行くことにしたが、材料はあるが、起爆のさせ方が分からなかった。ネットで調べたら、海外のサイトで爆弾の作り方が載っているが分かりにくい。検索を続けたら、質問を受け付けているサイトがあった。
https://www.youtube.com/watch?v=0hbTYXgMjek
いつにない作者の意気込みを感じたに違いないでしょう。作者は、シリアスな社会派、あるいは、ハードボイルド作家への転向を図りました。このまま、オチを滑り続けていたら、読者に見放されかねないと危機感を持ったに違いありません。エロ作家にならなかったことを褒めてあげましょう。
そんな無理を言ってはいけません。作者は、全編だけでやめてもいいんじゃないかと思っているところです。それか、皆さんが忘れた頃に書くという姑息なことも考えています。私は、そんな男です。
アメリカ軍と言えば、沖縄の軍用地主・・・左うちわで東京に住んでるらしいですねぇ
女の子の4人グループ、歌手だった「スピード」今井議員・・・軍用地主で日本政府から借地料ゲットしてる←手堅い(^^♪
ニコタの日記だけでも、オチが浮かばず苦悶する日々です。プロの作家さんの偉大さを感じています。
本屋大賞狙って!
今日は、パエリアを作ったので、ゴミ箱から魚介類の匂いがします。燃えるゴミの日が今日だったので、水曜日まで待たないといけません。隣の町内会に捨てに行こうと思いますが、武田のおばさんがいたら困ります。
ドキドキ。上杉君はどうなっちゃうのかしら。
確かにゴミ問題はね~・・・うちの近所もしょっちゅう問題が起きてますよ。
ゴミってどうして共通の臭いがするんでしょうね。生ごみのせい?
そればかりでもなさそうですけど。なんだろ。
初のハードボイルド作品です。R18指定で、これから、バイオレンスシーンが続出です。PTAから苦情間違いなしですので、良い子は読んではいけません。
日光に行きましょう。東武ワールドスクエアに行けば、世界各地の世界遺産を楽しむことができます。ゴジラになった気分で踏み潰すこともできます。
後編は、アッと驚くような
オチと笑いを期待します (*≧m≦*)
にしても、沖人さん 博識ですね (^O^)/
死ぬ前に一度はグランドキャニオンを見てみたいと思い続けてきましたが
叶いそうにありません^^;
世界遺産巡りなどしてみたいと思ったらグーグルアースがいいかしら( `ー´)ノ
アメリカに行かれたことがあるのですね。一度、ブロードウェイで本場のミュージカルを見てみたいです。
環謝さん
YouTubeまで、ちゃんと見るとは、暇じゃの〜。お墓参りに、行かないといけません。お供えは月餅を。
すごいいい景色だったよ。
遠いけどね。
主人公さんが、可哀想だったよ。
次から次へと。
こういう事、あるかも。と思いながら、読んだよ。
いつも、勉強になるよ。
リンクも見ていただいて、ハナマルです。子供の頃、お米は持ち込みで、50円だったと思います。
最後まで暗い感じで終わるのかなと思ったら、
URLのオチに( ,,>З<)ブフ`;:゙
ってなりました笑。
東尋坊か浮かんだので、グランドキャニオンになった。華厳の滝が浮かんでいたら、ナイアガラの滝になっていたでしょう。