オスプレイ（中編）
- カテゴリ：自作小説
- 2021/09/23 23:39:54
爆薬の威力を増すために、3日間、ガレージでアルミホイールにグラインダーをかけ続けた。アルミニウムと酸化した金属を混ぜ点火すると、テルミット反応と呼ばれる爆発的な反応が生じる。
第二次世界大戦中、ドイツの爆撃にテルミット焼夷爆弾が使われた。紙と木で出来た日本の家屋は、焼き尽くすだけで良かったので、油脂焼夷爆弾が使われた。武田のババアを驚かすことが出来れば十分だ。火災まで引き起こす必要ない。
グラインダーをかけ続けていると、腕や腰が疲れてきた。ソファーに座り、一息をついたが、煙草は厳禁だ。アルミホイールを研磨していて、粉塵爆発を起こした工場が各地にある。
3日間、グラインダーをかけ続けて、コップ一杯のアルミニウム粉末が手に入った。酸化した金属は、手に入りやすい陶芸の釉薬用の酸化鉄を使うことにした。Amazonで調べると500gが500円だった。点火に使うマグネシウムリボンも売っていた。苦労して削ったアルミニウム粉末80gが1680円で売っていた。おそるべしAmazon。
硝酸アンモニウムにアルミニウム粉末、酸化鉄、マグネシウムリボンと爆薬の材料は準備できた。あとは、点火のさせ方だけだ。起爆装置を調べるためにサイトにアクセスした。サイト名は、”Make a Bonbon"。爆弾を意味する"Bomb"を使うと、FBIやDHS（国家安全保障省）に追跡される。この手のサイトは、隠語を使う。
サイト上のチャット掲示板に書き込んだ。
” I am Japanese so I can hardly speak English.How should I make a detonator? "
直ぐに返事が返ってきた。
” I like a triangular-shaped rice ball, usually wrapped with a sheet of laver. What do you like about Japanese food?
なんだこいつは。質問に質問で返してくるなんて、気の無い女子に告白したときの反応のようだ。とっぱじめから、起爆装置について質問したから、警戒されているのだろうか。容器に使う圧力釜について聞いてみることにした。
" Udon, which is a thick white noodle made of wheat flour. There is a type of Udon being famous for its smooth texture called "Sanuki-Udon" from Kagawa.Can I use a pressure cooker for the container? ”
返事は返ってこなかった。讃岐うどんの説明が長くなり、質問に気がつかなかったのだろうか。ガソリンスタンドの外に出て、煙草に火をつけた。オスプレイのローターが空気を切り裂く振動が伝わってきた。
翌日、もう一度、同じ質問をすると返事があった。
“ Pressure cookers can be made improvised."
圧力釜は時短になる？。いや、IED（Improvised Explosive Device.）、圧力釜は、テロリストが使う即席爆弾になると言っているのだろう。
「私も日本人なの。圧力釜に興味があるなんて、料理が得意なのね。私も質問していいかしら。職場のアメリカの人に聞かれたんだけど、どうして、日本の食器は四角形や小鉢のようにいろいろな形があるのかって質問なの。知ってる？」
日本人というのも驚いたが、女性だったことにもっと驚いた。日本語には、男言葉と女言葉があるから、男女が分かるけど、英語は明瞭でない。初めての女性とのやりとりにドキドキしてきた。
一人で暮らし始めてから、食べることしか楽しみがなかった。どうやったら、お金をかけずに美味しく食べることができるかばかり考えていた。縁がないと思いながら、ネットでは高級レストランのサイトをよく見ていた。俺は、知っていることを書き込んだ。
「日本料理の形式は、室町時代に確立した本膳料理に由来し、料理はお膳に据えらる。そのため、食器を置くスペースが少ない。丸い皿ばかりだと効率が悪いので、四角い皿や鉢が使われる。料理はお膳に置かれているので、視線は上からになる。小鉢でも料理でも、よく見ることができる。西洋はテーブルに料理が置かれるので、皿が深いと料理が見づらくなる。それで、平らな皿が多い。」
「へー、詳しいのね。それと、アメリカは、真っ白の食器ばかりだけど、何で、日本の食器は、色とりどりで柄物も多いのかって聞かれているの。今度教えてね。」
その日のやりとりは、それで終わった。二コタの伝言板のように、短いやりとりだった。パソコンを閉じ、調合するために火薬の重さを量ることにした。火薬や爆薬は、「薬」の文字が使われる。火薬が日本に伝わったの火縄銃と同じ室町末期だ。当時の火薬は、黒色火薬で炭と硝石、硫黄が材料だった。
火薬の材料をすり潰し、細かくするほど威力が増した。漢方薬をすり潰す「やげん」を用いてすり潰した。やげん軟骨は、このやげんに形が似ていることから名づけられている。威力を増すためには、材料のバランスが重要だ。炭、硝石、硫黄の割合は、0.15：0.75：0.10。すり潰し、調合するのが薬づくりに似ていることから火薬と「薬」の字が使われるようになった。
関西には、「かやくうどん」があるが、爆発したうどんではない。大根や人参、里芋など具が豊富な香川の郷土料理「しっぽくうどん」が大阪に伝わり、かやくうどんになった。
かやくは、漢方薬の「加薬」から来ていて、主剤の効果を増すための副剤の意味だった。うどんが主役、かやくが脇役である。カップラーメンのかやくも同じ意味であり、香川県民がいなければ、今頃、カップラーメンは素ラーメンしかなかったかもしれない。
明日、彼女の名前を聞こうと思った。妄想が膨らんでいく。一度も女を抱いたことがなかった。風俗に行く、金もなかった。
「日本料理は、派手な器には地味な料理、地味な器には派手な料理を盛るのが基本で、赤絵や色絵の器には、筑前煮のように地味な料理を、備前や織部のような器には車海老の焼き物のように、料理と器が一体になっている。料理を食べ進むと器の柄が目に入るように変化も楽しむ。料理にふさわしい器を大事にしている。僕の名前は、謙信ですが、名前を教えてもらってもいいですか？」
「ほんとに詳しいのね。私の名前は、”ゆう”、理由の由に、布と書いて由布っていうの。」
俺は、爆弾のことなんて、どうでも良くなっていた。由布のことで、頭の中が一杯になっていた。会いたいけど、車も無ければ金もない。彼女がどこに住んでいるのかも分からない。彼女の柔らかな身体を想像しながら、ベッドに入った。
流石、英文学科卒。数十年ぶりに英語の辞書を開いて、bombに似た言葉を探したけど、全くなかった。やむを得ず、bonbonにしたけど、それを見破るとは、才女の名をほしいままにするたまちゃんだけのことはある。正解は、一つだけではない。上半身のボリュームを増やすという解決策もある。
なんで「かやく」っていうんだろう？と
いつもぼんやりと不思議に思いつつ放置していましたが、
そういう由来だったんですね。
何事もバランスが大事ですよね～私も下半身の比重を減らしてバランスの良い体にしたいです～
おっさんは、駄洒落が大好きなのです。若い人に、馬鹿にされてもやめられません。Amazonで爆弾を検索すると、「コリ爆弾 指圧ボール」が見つかりました。香川では、かやくご飯とは言いますが、かやくうどんがありません。オリジナルのしっぽくうどんになってしまうのです。
珍しく、外国人とのやりとりが新鮮でした。
Amazonには何でもありますね～笑。
かやくうどんはこちらは定番ですね。これとかやくごはんのセットがあると有難い店になります笑。
つながりは、Improvised しかしないので、まったく合いません。関係のないことを書くのが得意です。
合わないようで、合うのだね。
女の子に興味がうつって、危ない方向から、変わるのかな？
そのほうがいいね。
後編はどうなるのか、想像がつかないな。
女の子と初デートかな？？？
大丈夫です。ストーリーと関係ない讃岐うどんのPRだったり、おにぎりの英語解説だったり、時数を稼ぐために書いたとしか思えない内容です。
苗字が、ブーブやと知らんかったわ。
ベティー・ブープの方が馴染みがあるの。
作者は、ワンパターンを脱することに決めたのです。綾瀬はるかは、出てきません。ベティー・ホワイトが登場するでしょう。おそらく、ゴジラも登場するのではないでしょうか。
後編では、爆弾じゃなくて、花火を作ることになってたりして。うふふ。
作者の執筆意欲を、消滅させるコメントでんがな。もう、激辛マーボー豆腐を作って、胃と執筆意欲に火をつけます。