1406番:トニオ・クレーガー(14)
- カテゴリ:日記
- 2021/10/31 08:43:11
トニオ・クレーガー(14)
———————————【14】———————————————
Plötzlich schob Hans seinen Arm unter den
Tonios und sah ihn dabai von der Seite an, denn
er begriff sehr wohl, um was es* sich handelte. Und
obgleich Tonio auch bei den nächsten Schritten
noch schwieg, so ward er doch auf einmal sehr
weich gestimmt.
————————————(訳)——————————————
突然ハンスはトニオの腕の下に自分の腕を差し入れた.そ
の際に横からトニオをじっと見つめた.というのはハンスは
今何が求められているかをしっかり理解していたのだ.トニ
オのほうも、次の歩調で尚も無口だったにもかかわらず、気
分は急転して晴れていた.
————————————〘語句〙—————————————
略号追加:1格=N、 2格=G、 3格=D、 4格=A
尚、他にA、や Bなどを使った場合は、まぎれを避けるため、
それぞれ、Nom., Dat., Gen., Akk. と記すことにします.
——————————————————————————————
begriff <begreifen (他) Aを理解する、把握する
schob (過去3単) <schieben (他)❶押して動かす、
❷押し込む
schieben / schob / geschobben
dabai (副) その際に
an/sehen (他) Aをじっくり見る
wohl (副) よく
obgleich (従属接)[定動詞後置]~にもかかわらず (obwohl)
gestimmt ❶(形)[…の]気分の; gut gestimmt sein 気分がよい
schlecht gestimmt sein 気分が悪い、
gleich gestimmt sein 同じ気持ちの、気の合った
zu + D + gestimmt sein / …Dをする気になっている、
gestimmt❷(過去分詞)<stimmen (他)❶(楽器⁴を)調律する
die Gitarre stimmen / ギターを調弦する
❷[A + 状態][Aを…の]気分にさせる
weich (形)柔らかい、優しい、穏やかな
schwieg (過去3単)<schweigen (自) 黙っている、黙る
schweigen、schwieg、geschwiegen
Schritten (複)<der Schritt (Eタイプ)❶歩み、❷一歩の距離
ward [文語] werden の過去1単、3単 普通はwurde,
過去分詞はgeworden
Meine Mutter ist heute 60 Jahre alt geworden.
私の母はきょう60歳になった.
Mein Traume ist Wirklichkeit geworden.
私の夢は現実のものとなった.
bei den nächsten Schritten 次の歩みの際に → 歩いている次の瞬間に
auf einmal 急転して、突然に、急に
Sie lachte auf einmal laut auf. / 彼女は突然笑い声をあげた.
* auf/lachen (自) (突然)笑い出す
—————————≪重要フレーズと解説≫———————————
um was es* sich handelte
es handelt sich um + A Aが問題である、重要である.
Es handelt sich um das Kind. その子のことが問題だ.
um was es sich handelte 何が問題なのか
この小説の下りでは、少し読み手の方で行間を補う必要
があります.何が問題なのか、よくわかっていた.
これはどういうことかと言うと、
約束を忘れられていてつらかったトニオの気持ちがよく
わかっていて、その問題にどう対処するかをハンスは
しっかりわきまえていたということです.
意味が取れないと言って語学力を嘆く必要はありません.
このあたりの独文解釈は、ドイツ語力ではなく、物語の
筋から行間を読み解く力になります.語学力と別ものです.