Nicotto Town



傷心旅行2

つづき



     五


すでに時間で行くと夕方6時から7時あたり、すぐにでも辺りは星空に包まれそうな民宿街を歩いていると、垣根の上から縁側の引き戸を開け離された明るい部屋が見え、中には豪華で美味しそうな料理がこれでもかとテーブルの上に溢れんばかりに盛り付けられていました。
自分達2人は、昼から何も食べていない事を思い出し、見ただけでよだれが出てきそうなお互いの顔を見合わせていると

今風呂から上がってタオルを首にかけた宿泊客が部屋の中に入ってきました。 それはさっき会った3人組でした。

今までは野宿してレトルトカレーでも食べれば良いと思っていたのが、そんな豪華な食事を見るとやはり期待せずにはいられない。

そこで、もしかしたらと淡い期待を抱きながら垣根のそこから手を振り、おーい!と合図を送りましたが、3人はその料理から目が釘付けで いや、たぶんこちらに気付いていたはずでしたが、ちらりともこちらを見る事もせず
黙々と食べ始めました。

そこで、まあさすがに民宿も当日飛び込みの客分の食事は用意出来ないだろうし、もはや料理を目の前に彼らは他人の事などかまってられないのだろうと思いそこを立ち去る事にしました。

その瞬間、マッチ売りの少女が雪の降るクリスマスの夜に、寒い路地から暖かそうな部屋の中で家族仲良く豪華な食事をとっている所を見ながら独り寂しく死んでいくお話を、保育園の頃に読んだ絵本の挿絵とともに思い出しました。


さすがに自分は家に帰れば家族はいるし、そこまで貧乏でもない。 しかし、世界にはこんな境遇の中死んで行く子供もいる、過去を遡(さかのぼ)れば中世の時代、いやもっと昔には沢山いたのだろう。 たぶんその子らのその時の気持ちは今自分が感じているひもじさとは比べ物にもならない位寂しかったのだろうか。

などと考えながら、無言でバス停に向いました。




       六


バス停は、薄っぺらい板を張り合わせた簡易の建物で小さい窓と出入り口の引き戸があるだけの公園の休憩所みたいな広さの建物でしたが、冬にはバスを待つ人が寒くないよう風が中に入らないような構造にはなっていました。

H君:「時間表にはもうこの時間以降バスは来ないはずだからここで朝まで寝よう」っと

確かに良い考えだ屋根は有るし、まあ日中しか利用しない場所なので照明器具は無いけれど長椅子なら地面よりは快適だw
しかし腹が減っていたもののカレーを湯がこうにも水が無い。 それに近隣のお店はすでに閉まっているので、何かあった時の為にバックに入れておいたキットカットをパキッと正確に2等分に割り2人で食べながら色んな話をしました。


自分はキャンプには蚊取り線香が必需品と思い2巻き(1対)だけ持ってきていた事を思い出し、また蚊に刺されるのは御免だ!とライターで火をつけ、ついでに2人でタバコを吸いながら腹の減りを我慢しました。

H君が「もう寝よう。疲れた。でもこの場所は道路沿いなので真夜中に暴走族に襲われるといやだから窓と入り口の戸は閉めよう!」

っと全部の扉を閉めて寝ました。


・・・・・3分後 ゲッホゲッホ! 2人とも咳をしながらバス停を飛び出て そんな狭い部屋に蚊取り線香を焚いて2人でタバコ吸いまくったら煙がすぐ充満して煙たくて寝れない。 出入り口の扉から飛び出て小窓を見てみると隙間から煙がモクモクとw


大笑いして朝まで煙草は禁止! 蚊取り線香も消して その後中の長椅子に横になった瞬間意識は無くなり気付いたら外は明るくなっていました。


自分は時計すらはめてなかったしH君のは暗くて見えなかったので、昨晩は何時に寝たのか分からなかったのでどれくらい寝ていたのかは不明でしたが、バスの運行時間より前に立ち去らねば誰かに怒られるといけないので、H君を起こしまだ草に露がついていそうな早朝に2人でビーチに移動することにしました。


さすがに2人とも腹ペコだったので、海の水でカレーを温めればとりあえず飢えは凌げると、又早朝でお客さんのいないこの時間帯にそれを行うにはベストな頃合い!
って事で鍋に海水を汲んで、持ってきた固形燃料に火をつけ温める事にしました。 しかし、固形燃料の火力は意外に弱く加勢するための何か燃えそうなものは無いかとその付近を捜しても、ロケット花火の枝の部分くらいしか燃えそうなものは無く、ほとんどぬる燗程度の人肌のレトルトカレーを無理やり食べましたw


そしてH君が「あー、背中が痛い。硬い椅子で寝たからかなあ。 あー、柔らかいベッドが恋しいなー!」などと、ビーチの真ん中の砂の上で横になっていたので

じゃあ、砂で思いっきり上等なベッドを作ろう! 

と自分らは砂をありったけかき集めて高さ約60cm幅50cmの身長くらいある砂のベッドを作りました。
H君は「すげー、高級なベッドみたい寝てみてもいい?」って言うので

いいよ。と言ったら。ゆっくりそのベッドの上に横になり目を瞑って満喫していました。

自分はもう少し小さいので良いのでとせっせと作っていたら、H君はいびきをかき出したのでよほど疲れていたのか腹が少しは膨れて眠気に襲われたのかw
その後自分も横になり又意識を失いました。




3へつづく




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