あめちゃん
- カテゴリ:自作小説
- 2022/01/01 12:50:35
ニュースを見るたびに、天気キャスターが、大雪への注意を呼びかけていた。健二は、高速バスで帰省することを諦めて、新幹線で帰ることにした。
朝早く東京駅に着くと、キャリーケースや大きなバッグを持った帰省客で混み合っていた。新幹線の当日券売り場には、長い行列が出来ていたが、1時間後ののぞみの座席をとることができた。
ベーカリーでパンを買い、お土産を選んでいると発車の時間が近づいてきた。コンコースの表示板には、オレンジ色の文字で、雪のため10分遅れと表示されていた。
健二は、網棚にリュックとコートを置くとシートに座り、缶コーヒーを一口飲んだ。ホームの自動販売機で買ったばかりたが、もうぬるくなっていた。
窓越しに、発車を知らせるベルが聞こえてきた。岡山駅だと、「銀河鉄道999」や「瀬戸の花嫁」が流れる。健二は、無機質で機械的な発車音に、表面だけ華やかで冷たい東京の街を感じた。
列車が、滑るようにホームから離れていく。外を見ると、ガラス張りの東京国際フォーラムや有楽町の駅がゆっくりと後ろに流れていった。
隣には、白いニットを着た女の人、健二より少し年上の女性が座っていた。コートを膝にのせて、目を閉じていた。健二は、視線を戻し、スマホでゲームをし始めた。
新幹線のフリーWi-Fiを使っていたが、回線が何度も切れた。満員の乗客が利用し、回線容量をオーバーしているのだろう。健二は、イヤホンをすると目を閉じた。
新横浜を過ぎた時、ワゴンサービスの声で目を覚ました。飲みかけの缶コーヒーがシートポケットに入っているが、ホットコーヒーを頼んだ。
いくつものトンネルを抜けて平地に出ると、白い雪を被った富士山が見えた。写真を撮りたかったが、眠っている女性も一緒に写ってしまいそうで、写真を撮るのはやめることにした。
東京は晴れ渡っていたが、静岡に入ると雲ががかり始め、名古屋の街は、薄らと雪をかぶっていた。名古屋をでても、のぞみはスピードを上げずにゆっくりと進み、関ヶ原で停車した。車内放送が流れ、米原の間までに、列車が10本停まっていて、間隔が開くまで停車すると告げた。
窓の外を眺めていると、女性が目を覚まし、健二と目があった。
健二は、まずいと思った。寝ている女性を見ていた変態だと思われてしまう。
「雪国みたいですね。」
健二が咄嗟に呟くと、女性も窓の外を見た。一面の銀世界が広がり、家々の屋根には厚く雪が積もっている。道路を走る車もなく、時間が止まった世界に、雪だけが空から落ちていた。
綾香は、まずいと思った。実家に帰る前に済ませなきゃと、昨夜遅くまで、掃除や洗濯をしていて、ほとんど眠ることが出来なかった。三十を過ぎた頃から、飛行機や電車の中で熟睡するようになり、いびきをしているかもしれないと不安になっていた。
同性やおじさんだと気にならないが、隣のイケメンにいびきを聞かれていたら恥ずかしい。綾香の頬が微かに赤くなった。
「綺麗ですね。あっ、飴いかがですか?」
綾香は咄嗟に呟くと、鞄から飴を取り出し、健二に渡した。健二は飴を受け取ると、包み紙を外し、飴を口に入れた。
健二は、まずいと思った。朝が早くて、マスクをしているからと、ひげを剃っていなかった。実家に帰るだけだからいいと思っていたけど、隣が綺麗な女性になるなんて思ってなかった。イテッ、飴を舐めていたら、虫歯を放置していた奥歯がズキズキし始めた。
綾香は、まずいと思った。おっさんの無精髭は不潔にしか思えないけど、イケメンの無精髭はセクシーだ。しかめっ面も渋いけど、どうして、しかめっ面なの。
知らない人に飴をあげるなんて、オバチャンに思われたのかしら。まだ、32歳よ。でも、彼から見たら、おばちゃんだわ。いや、違うわ。みな、コロナに神経質になっているのに、手渡しで食べ物を渡すなんて、きっと非常識な女だと思われたんだわ。
「列車、動いていないですよね。」
綾香は咄嗟に呟いた。
「大雪で、米原まで、列車がつかえていて、しばらく停車するみたいです。」
健二の頬が赤くなった。綾香はぴったりしたニットを着ていて、滑らかな身体のラインがはっきりと分かった。田舎育ちで気後れしてしまい、大学に通う3年間、彼女が出来なかった。
大人の女性の色気を感じ、窓の外をを見ながら、何度も綾香を見てしまった。ちらちら、見ていたのを気づかれたのかもしれない。
綾香の頬が赤くなった。昨夜、洗濯ものを乾燥機にかけたらニットが縮んでしまった。実家に帰るだけだし、コートを着たら分からないと思って、そのまま着たが、身体の線がはっきりと出ていた。30を超えたころから、下っ腹に肉がつき始めていた。綾香は、膝にかけていたコートを、少しだけ手繰り寄せた。
列車が動き始めた。
「新大阪までですか?」
「はい。どちらまでですか?」
「岡山までです。倉敷まで出て、伯備線に乗り換えて、米子まで帰ります。」
「米子?」
「鳥取県です。松江の隣です。外のように、雪が積もっていると思います。」
「私、大阪生まれだから、雪景色を見ることができて嬉しかったわ。とても、綺麗ね。」
「雪景色は見なれているけど、僕も嬉しかったです。綺麗でした。」
「景色?」
「あなたが」
綾香の頬も健二の頬も真っ赤になった。車掌が京都駅に着いたことを告げた。二人は、新大阪までの列車の中で、LINEを交換し、東京で再開することを約束した。
大学時代は、アニメにハマっていたのだと思います。秋葉原に行くのが、何より楽しみで、買ったDVDで、紙袋がパンパン。初恋の人は初音ミクだと思います。
歳の差関係なくline交換出来ましたね~。
大学ではどれだけ奥手だったのかも、気になりますし、
東京再開後の展開が楽しみです。
添削します。
北海道に行ったことがあるのに、何よんな。そうそう、美味しいもん食べて、うどん広めてこないかんわ。
薩摩弁と津軽弁をマスター出来たら、小説の幅が広がりそうな気がする。台詞も、誰が話しているか、はっきりしていいかもしれない。
フランス語は、ハードルが高いので、讃岐弁を標準語にしましょう。のをつければいいので簡単です。
wineさん
実家に帰って捨てようと思ったのでしょう。私は、実家に帰るときは、着古したシャツを着て帰ります。今回は、母に、ちんちくりんな格好と言われました.
東京の再開が楽しみですね。
大丈夫やね
社交界にデビューした時に、恥ずかしくないように、標準語とフランス語をマスターしているかもしれない。
設定が32歳やけん、大阪弁やとおばちゃんになってしもて、うまくいかんかったかもしれん。大阪弁より、標準語の方が、お嬢さんらしいなるの。
小説の誤りを発見しました。その台詞の箇所は、飴をいかがですかでなく、飴ちゃんあげるでとかにしないといけませんでした。
「新大阪までですか?」ってどして言えたのかなって思ったのです
数行前に、「新大阪までですか?」と聞いたのです。飴ちゃんを貰ったので、大阪のおばちゃんじゃないかと予想したのです。
いやいや、京都駅に着いて、あっ、新大阪まで30分もないという時間のなさが、二人の背中を押して、LINE交換にたどり着けたという設定なのです。おかしかったかいの?
笑う角には福来たるです。スマホで変換すると「服着たる」と出てしまいました.私の文章は誤字脱字が多いですが、iPhoneのせいだと思います.今年も誤字脱字をお許しください。
あずさちゃん
そうやと思うで。オタク同士の仲がええんも、こだわりやツボが理解しあえるからやと思うんや。合う合わんが、一番大事やの。
自分にぴったりの人と一緒に居れたら幸せゆうことやの(*´ω`*)
沖人さんの小説に
笑わされて始まりました (*≧m≦*)
綾香と健二 うまくいくといいですね
今年が全ての人にとって幸せな年であることを願います♪
美しいもんが好きなんは、男女とも同じやけど、好みは人それぞれやし、うどんも大事なんは、見た目よりコシや出汁やけん、大事なことは一つだけでないゆうことやの〜
メリザンドさんにも、いいところがあるかもしれない。支離滅裂なのは、天才肌だからでしょう。天才肌より、すべすべお肌の方がいいです。孤独のグルメは録画しました。東京に帰ってから、楽しみます。
観ました お尻蹴っ飛ばすとか言ってても、目の前にしたらたじたじになってるのが
目に浮かびます
あめちゃんじゃなくて、冷凍みかんにすれば良かったかもしれません。列車の旅感がアップしました。緑色のコップ兼用キャップがついたプラスチックのお茶もあれば完璧でした。
あずさちゃん
好みは人それぞれですが、私がメリザンドさんと付き合っていたら、お尻を蹴っ飛ばすでしょう。今日録画していたEテレの100分で哲学を見ていたら、外交官としてマキアベリがでてきたのです。
オベラ「ペレアスとメリザンド」を読んでるけど、聞かれたことに答えない、突拍子なく
関係ないことを言い出す、すぐに泣く、わがままを言う、がメリザンドの印象です
そういう女性に男性はアプローチしたがるのかな
昭和の香りがして、こういう出会いの雰囲気ってロマンチックです。
LINE交換が今時ですね^^
大阪の人って飴ちゃんを必ず持っていて人と繋がってますよね。
関東からすると、温かい文化だなって思います。あと、カバンに入っているのがみかんとかb
これから、恋の駆け引きを覚えないといけません。分かっていても分からなふり。相手にボールを預けたり、外交交渉と同じでしょう。マキアベリの君主論をお勧めします。
たまちゃん
年に一度のサービスデーです。テレビも朝から漫才です。正月くらい、気にせず、食べたいものを食べないといけません。雑煮は、おかわり必須です。たまちゃんも、たくさん食べましょう。
男性主人公がまさかのイケメンだったり、再開を約束したり、
去年までとは全然違うめでたい展開に収まるとは。
やはり年明けくらいは明るく行かなくちゃ、ですね!
あ~冬休みがどんどん過ぎて行くわ~
「飴いかがですか?」と綺麗でしたって言われて「景色?」はやらせっぽい
大学生に戻りたいです。米子は出雲そば圏内で、うどん文化圏と異なりますが、一番大きな相違点はイケメンでないところです。一致点は、東京駅で、クロワッサンとミルクフランス、缶コーヒーを買って、関ヶ原でのぞみが停まっことです。
やっだーん沖人さんっっ
32歳は、私から見たら小学生のようなものですが、大学生視点で、おばちゃんとさせていただきました。しかし、若い頃は、歳上の女性に惹かれるので、白ニットを着ていたら、モテモテでしょう。
こんなロマンティックなことが起こるのなら万々歳です。
個人的に32歳はまだまだお姉さんだと思います。