【無題】 第1回
- カテゴリ:自作小説
- 2022/01/04 16:45:32
ラストチルドレン。
僕達の世代と言うか僕が生まれた年に、同じように生まれた子供は皆そのように呼ばれている。
なぜなら僕達が生まれた年が、人類にとって最後に子供が生まれた年だからだ。
そう、人類は滅ぶことが確定している。
確定させられている。
それも呪いによってだ。
大掛かりな呪い、いや、正確には大規模呪術と言うらしいけど、その呪術はある日突然世界の全てを覆った。
それが発生した当時、僕はまだ生まれていなかったから、生き証人とも言うべき親や周りの大人達から幾度となくその様子を聞かされて育った。
曰く、数多の魔方陣が空を覆いつくしたとか。
曰く、全ての男が生きる目的を失ったとか。
曰く、これは亜人の復讐によるものだとか。
曰く、とにかく人類は今の世代で滅びるしかないとか。
幼心にその意味がよくわからなかったけど、今こうして17歳を迎えある程度知識も多くなると大体わかる。
要約すると男性側の生殖機能が呪術によって失われたということらしい。
らしい、と表現したのは知識としてはわかるけど、感覚として僕もいまいちよくわからないからだ。
それまでは生殖行為というものも、そしてそれに付随する性欲という感情も、当たり前だったらしいけど。
呪術によってそれらが無くなった今、本来それを教えるべき学校ですら「教えても意味がない」と触れもしない。
その学校の教室に座っている僕は、退屈な授業の内容を聞くふりをしながら窓の外に視線を向けていた。
「ねえ、ねえってば、聞いてるの? ラス!」
いつもと何一つ変わらない窓からの景色をながめていたら、僕を呼ぶ声が耳に届いた。
授業中なので大声ではなく、周りに聞こえないように小声ではあるが語気は少し強めだ。
ラスと呼ばれているけど僕の本名はライアス・リーエン。
ラスは昔から家族や友達から呼ばれている渾名だ。
「ん? ああ、聞いてるよ」
「で、どうするの?」
「どうするって何が?」
「ああもう、ほら、やっぱり聞いてないじゃない!」
「ゴメン、聞いてなかった」
「だ~か~ら~、今日このあとどうするかって話よ!」
若干怒り気味に話しかけてくるのは、隣の席に座る幼馴染のシシル・ダリアンだ。
親同士が親友で物心がつく前からずっと何をするのも一緒で、一家ぐるみの付き合いで育った兄弟みたいなものだ。
やや赤みがかった外跳ねの髪は肩にかかるくらいで、快活な性格をそのまま現しているようにも見える。
自分で言うのもなんだけど、僕はおとなしめの性格で、シシルはどちらかと言うと正反対の性格をしている。
「ラスが女でシシルが男だったらバランスがいいのにねぇ、どうしてこうなったのかしら」
などとシシルの母親がよく口にするくらい、僕は男っぽくないし、シシルは女っぽくない。
大きなお世話だ、僕は父親似のこの穏やかな性格がとても気に入っている。
感情の起伏が激しく、気性が荒いなんて、疲れるだけじゃないか。
そんなシシルの性格は豪快の一言に尽きる。
誰に似たのかと言えば、それはもう間違いなくシシルの父親だろう。
シシルの父親であるドイル・ダリアンさんは木材の加工卸しを生業にしていて、性格も体格も豪快そのものだ。
対する僕の父親であるトレイズ・リーエンは研究職で細身の人間だ。
正反対なこの二人が親友だっていうのが僕にはいまだに理解できない。
教室では史学の教師が説明をしながら板書をしていく。
「え~、このようにして長きに渡り交流を結んできた亜人国家連合ですが。
科学の発展とともに急成長を遂げようとしていた人間に恐れを抱き、同盟は一方的に破られ戦争が仕掛けられました。
これが何年かわかるか? えーと、ライアス・リーエン」
「1443年です」
「宜しい、正解だ」
突然問題を振られたけど、この程度誰でも答えられる。
するとシシルが耳打ちしてきた。
「よく年号なんて覚えてたね」
「え?」
訂正だ、誰でも知ってるわけではなく、隣に座るアホは例外だった。
「これはさすがに常識だろう」
「歴史なんて大雑把に覚えておけばいいのよ、ラスは細かすぎるんだってば」
「まあ、シシルがそれでいいなら僕は何も言わないけど、大雑把すぎるのもどうかと思うよ」
今受けているのは史学の授業だ。
だけど僕が退屈だと思うように、当然ながら隣に座るシシルでさえ、その内容は知っている。
なぜならこの手の歴史は習うまでもなく大人から子供へと事細かに口伝されていくからだ。
人類の歴史なんて言っても、そんなに複雑で大層なものではない。
最初、人間はこの大陸に亜人がいるなんて知らなかった。
人口が増えていき、活動範囲を広げていくなかで亜人と出会った。
言語の壁も越え、友好的にお互いの技術や文化を輸出入しあい、供に発展することを目的とした同盟を結んだ。
これがだいたい今から250年前だ。
それから約50年交流を重ね、今から約200年前の1443年に、突然亜人国家連合は人間に一方的に戦争を仕掛けた。
強調して語られるのは、戦争を仕掛けたという亜人の非人道的行為と、人間側の英雄譚だ。
発達した科学の力をもって開戦からたった3年で戦況をひっくり返し、亜人国家連合の領土の半分を占領し勝利したことだ。
半分になった亜人国家連合は、停戦協定と言う名の事実上降伏に近い提案を打診し、人間側もこれに合意して現在に至る。
占領した領地は植民地化され、その亜人の全ては奴隷として人間側に隷属している。
多種多様な種族の亜人が敗戦国の奴隷として人間社会に組み込まれて200年の歳月が流れた。
そして終戦したのが1446年、そこからきっちり200年経った1646年に人類を悲劇が襲った。
亜人国家連合による大規模呪術が発動され、人間は子孫が残せなくなったのだ。
男性機能が完全に不全になり、さらに性欲がまったくなくなるという呪いだ。
僕にはよくわからない感覚だけど、当時の男性社会に大混乱を巻き起こしたらしい。
これが簡単な人類と亜人の歴史だ。
授業として覚えなければならないのは、人物や年号などの試験に出る内容くらいで。
どの生徒も聞きかじった内容ばかりの話に、一応授業を真面目に受けている風に装いながら聴いている。
1647年に生まれた子供を最後にそれ以来人間に子供は生まれていない。
僕もその年に生まれ、今は1664年。
僕の年代の学年が来年卒業したら、この学校も閉鎖される。
言うまでもなく、僕達より年齢が下の子供がいないからだ。
滅びるとわかっている人類が学校に通う必要があるのかはわからないけど。
それでも生きている以上、死まで人間社会を守らなければならない。
そんな史学の授業の時間がいつものように平和に流れていく。
教師の声だけが静かに響き渡る教室に、その静寂を破る大きな音がバンと響き渡った。
生徒全員と教師が音のほうを見ると、それは教室の入り口のドアで、勢いよく開けられたドアから別の教師が教室へと入ってくる。
その教師は教室の生徒を見回し、僕の目と視線が合うと、やや緊張した面持ちで口を開いた。
「ライアス・リーエン、落ち着いて聴いて欲しい。
今君のご両親がいる施設から連絡があって、何か大変な事故が起きたらしい。
すぐに帰り支度をして私に着いて来なさい」
「え?」
なんて書きお越しの小説の冒頭を見せられたら
人はどう思うのだろうか
足跡があったので、訪問しました。そして日記に小説をみつけました
で、ココ、読ませていただきました
情景の見えるような文章表現にすごいなぁって思いながらよんでました
物語の最初の扉は知らない世界への冒険ですね
続きを読ませに来ていいですか?
私も、自作小説というカテゴリーで日記を書いていますが
絵本くらいしか読まない昨今、文章なんて書けないです
ただ、幼少期の思い出の中の子どものときの自分の妄想のようなものを書いてみています
いつか、ちゃんと文章が書けるようになりたいです
お邪魔しました。ありがとうございます
続きが読みたいに決まっているのですよΣ(・□・;)
いつもの脳内対談じゃないのね???
おにいちゃんの脳内は宇宙のように広くて
シマパンだけじゃない、こんなお話も散りばめられているのね!
第2回、第3回・・・じらさないで読ませてほしいw
気になる。。どんな事故が考えられるかなぁ。。。( 一一)
広場からお邪魔します。
え?・・・
それから?
ってなりますね^^
真剣に考えてしまった私はダメ人間^q^デナオシマス…
読み入っちゃいました♪
続きが気になります(❀´꒵ `)
山田悠介著「ニホンブンレツ」思い出しちゃった
なまにくさんから性欲をとったら、なにが残るのでしょうか~