最後の晩餐
- カテゴリ:自作小説
- 2022/01/28 21:25:03
パジャマの裾から手を入れ、隣で眠っている夫の下腹部に触れると、夫は寝返りを打ち、洋子を抱き寄せた。首筋に唇を押し付けてきたので、洋子は、「違うわよ」というと、夫を押しのけた。「あなた、最近、太ってきたんじゃない。」と夫の宏太郎に話しかけたが、幸太郎は仰向けになると、再び、眠り始めた。
翌朝、宏太郎が着替えているのを見ていると、スーツのズボンがベルトをしなくても、ぴったりと腹周りに収まり、少し腹に食い込んでいた。子供達の服は、丈が短くなっていないか気にすることもあったが、夫のことを気にしたことはなかった。
「あなた、週末に、デパートにスーツを新調しに行かない。ピチピチになっていて、見ていられないわ。」
「土曜日は、母さんのところに、行かないとだめだろ。日曜日にしよう。」
宏太郎は、紺と黒色のレジメンタルストライプのネクタイと占めると、ダイニングテーブルに新聞を広げ、珈琲を飲んだ。
「あなた、最近、朝ご飯を食べないから、太り始めたんじゃない。」
「朝ご飯、食べると、もっと太るだろ。洋子さんの料理が美味しいから、太っちゃうんじゃない。」
夫はそう言うが、おかわりもしなくなったし、以前と比べて食べる量も少なくない。洋子は、病気のせいかもしれないと不安になった。半年前に、宏太郎の母が癌に犯されていることが分かった。宏太郎の家系は、癌になりやすいのかもしれない。スーツをあつらえたら、宏太郎にがん検診を受けてもらおうと思った。
月に一度の土曜日には、宏太郎と一人で暮らす義母の家に向かった。癌だと分かってから、義母は断捨離をはじめ、その手伝いに呼ばれていた。
癌の治療技術が進み、癌と診断された後、3年経っても8割以上の患者が生存しているが、すい臓がんは、治療が難しく生存率は2割を切る。義母は、お迎えが早く来ただけだわと気丈に振舞い、夫の宏太郎の方が始終狼狽していた。
義母は、息子も娘も独り立ちしていて、旦那も向こうで待っているからと、癌の治療を拒否し、お迎えの時期を知りたいと、経過の診察だけを受けていた。
元来、義母は几帳面なたちなので、片付けないといけないものも少なかったし、何もなくなると寂しくなってしまうと、家具や調度はそのままにしていたので、残る断捨離は、納戸にしまっているものだけになっていた。
「かあさん、いいもの持っているじゃない。義姉さん、もらっとけば。」
「着物なんて、着たこともないし、着る機会もないからいいわ。」
「じゃあ、私が預かっとくわね。」
宏太郎の妹の明美が、ソテツを模した龍郷柄の大島紬を包んでいたたとう紙を広げていた。嫁の立場で、義母が長年使っていたものを貰うのは気がひけるし、義母の実の娘に譲りたいだろうと、これまでも、まだ、使えそうなものは、明美が預かっとくねと言って持ち帰っていた。
来月から義母が入院することが決まった。痛み止めが処方されていたが、痛み止めでは抑えられないことが多くなってきたとのことだった。明美の提案で、入院する前に、最後の旅行に出かけることになった。
客間の座敷机の上に豪華な夕飯が並んでいた。義母は、一口ずつ手を付けただけだったが、宏太郎や明美、孫たちが喜んでいる姿を見て、微笑んでいた。
「旅館の費用、全部、明美に払ってもらっていいのか?そんなに給料、貰ってないだろ。」
宏太郎が明美に聞いた。義母と明美、宏太郎家族の合わせて6人分を全て、明美が払うからと、皆を温泉旅館に誘っていた。
「私が払ったというより、母さんが払ってくれたようなものね。母さんがいらないっていったもの、メルカリに出していたの。結構な額になったけど、大島紬なんて、たったの3万よ。新しいの買ったら、数十万円するのにね。」
「あんた、有田焼の壺も売ったの。あれは、お父さんのお気に入りだったのに。」
「いいのよ。壺なんて持ってたって、飾るような家に住んでいないわ。こうやって、一緒にご飯を囲んだ方がいいわよ。お母さんも、賑やかな方がいいわよね。お兄さんだって、そう思ったから、お母さんと一緒にご飯を食べていたんでしょ。」
「洋子には、内緒にしていたんだから、言うなよ。」
「えっ、あんた、洋子さんに言ってなかったの。洋子さん、ごめんなさいね。宏太郎が、一人でご飯を食べていたら寂しいだろって、仕事帰りに寄って、一緒に夕飯を食べてくれていたの。」
「義姉さんだって、夕飯を手抜きできて良かったわよね。」
「馬鹿。洋子は、知らないんだから、毎晩、俺の分もちゃんと夕飯を作ってくれていたの。俺は、それも食べていたの。偉いだろ。」
「馬鹿じゃないの。義姉さんに、ちゃんと言っておけばいいじゃないの。」
「洋子に、いい年してマザコンだって思われたくないだろ。それに、マザコンじゃないし。」
義母は、宏太郎の明美のやりとりを聞きながら、お茶をすすっていた。その顔は、少しこけていたが、幸せさに溢れていた。
洋子は、夕飯を食べ始めた時には、だらしないと思っていた宏太郎の腹にゆるく巻かれた浴衣の帯に、夫の優しを感じるようになり、今夜は夫の柔らかいお腹をさすりたくなった。
良いおばちゃんになるためには、カバンにアメちゃんを入れて、知らない人にも配りましょう。いまだと、マスクも配れば完璧です。
『おっさん』にもいろいろありますが
沖人さんはとても よい子ならぬ よいおっさん なのですね^^
私も 周りに鬱陶しく思われないよう
よいおばちゃんにならなくてはですねぇ~(*´艸`*)
生物学的に、おっさんは、ストレスが溜まらないと思う。他人にどう思われようがかまわないし、既に、プライドもないので、蠅がたかっていても大丈夫なのです。1回先頭に参加すれば、勝とうが負けようが、5000Gが貰えるので、参加料を稼ぐとというせこい心持から、励んでいるのだと思います。
蠅が纏わりついている うどん打ち講師とは・・・
いかがなものでしょうかʅ( ‾⊖◝)ʃ
私は只今、2005年のDS初期のどう森にハマってますw
PCR検査と陽性者発生届でクタクタの心を癒すのは今はこれが一番ですw
沖人さんも 日頃のうっぷんを 戦車で打ちまくり潰しまくり解消してるのでしょうか?
我が社で、うどん打ち講座を2回ほど開いたので、後継者が出来ているのです。私は、スマホの戦車ゲームと二コタをしていたので、今夜は、お風呂に入っていませんが、ロールケーキは食べました。明日には、身体の周りに蠅が飛んでいそうな気がします。
コロナ禍の孤独で自暴自棄になった若者が増えていると 聞きましたが、
まさか?!高円寺方面のサラリーマンにも広がっていたとは・・・
沖人さんは出来る子!もとい 出来るおじさんなんですから
全然ダメじゃないですよ!
沖人さんの会社で うどんやパンを粉から作れるおじさんは そうはいませんよ!
ね、だから大丈夫です バンバン人を選んじゃいましょう~
本当のダメ人間は私なのです
今日もお風呂から出てカルピス片手にボーっとしてたら
つい カッパえびせ 1袋食べちゃってました(۞_۞)
これも コロナ禍のストレス食いなのです!
うぅ~~~~コロナめ!!!
メルカリを使ったことは、ありませんが、沢山出品しようとすると、手間暇がかかります。業者さんに引き取ってもらうと、二束三文どころか処分量を取られてしまいそうなので、小さなことからコツコツとです。
義姉もお金に換えて旅行に連れてくとかお洒落だと思いました。
最後のオチもとても素敵でした( *´艸`)
生意気にも、学生に、我が社を志望する動機はとか聞いていますが、私は、教官に誰も行かないから、お前、行ってくれと言われて入社しただけなのです。会社訪問も、徹まんしていて、連絡もせずにぶっちした不届きものなのです。入社以前に人間としてダメなので、人を選ぶ立場でないのです。
会社に求められているのだから 今後も面接官
辞退せずに頑張ってくださいw
だってぇ~ 沖人さんの存在に救われる
救われる若者たちがいると思います
沖人さんは人を見る目がありそうですもんw
就活サイトに登録して、就職する自信を失った。仕事の完遂能力は0点の評価だった。今後、面接官は辞退することにする。
【】の文章はほぼ私の沖人さんイメージでした
点数の方はよくわかりませんけどね
穏やかで平和で平凡が一番の私としては
本当に羨ましい限りです
いいなぁ〜 憧れちゃうなぁ〜
洋子さんは、いい家に嫁いだと思ったのでしょう。遺産の争いもないし、介護もしなくていいし、旦那さんも優しい。宏太郎さんの家族は、自分は我慢をしても、人に迷惑をかけないように生きようとしているのでしょう。
wineさん
太巻きが、7000円もする。恵方巻だとかぶりついたら、怒られます。
https://secretary.gnavi.co.jp/shop/gd8v900/souvenir/
つん
玉手箱を検索していたら、就活の時の適性検査の試験に玉手箱というのがあるらしい。山田太郎として、就活サイトに登録し、151問の問題に答えたら、以下の診断だった。
【相手の感情や状況を理解することが得意で、人の話を親身になって聴くことのできる最高の聴き役です。自分の意見を表出することを好んでおらず、感情表現は穏やかです。周囲には冷静で物静かな優しい印象を与えています。表立って人を引っ張っていくことよりも、目立たない所で人に影響を与えていくことの多いタイプです。】
100点満点だと以下の点数だが、上のまとめと点数があってない。その他も良識がないとか、知的好奇心がないとか、言われ放題で、性格に合う企業を紹介してくれたが、株式会社穴吹コミュニティ以外は、聞いたことがない会社ばかり。
・先を見抜くセンス 50点
・危険を察知するセンス 50点
・仕事の壺を抑えるセンス 25点
・社会の動きを見抜くセンス 25点
・異文化理解のセンス 11点
・人の気持ちを理解するセンス 0点
乙姫様は海底深くに住んでいるのでは?
カッコイイボートをさがすより 海岸でいじめられているカメを見つけて
今から乗り心地よくなるように育てた方が良いのでは?
きっと・・・沖人さんのことだから
巨乳の乙姫様の前で 自慢のうどん打ちを披露しつつ
乙姫様の胸元をチラ見しながら ほくそ笑むのでしょうねぇ~
洋子は・・・そう思うのかしら?
感情移入できないわぁ・・・
SDGs「(持続可能な開発目標)」に反してる気がする・・・(-.-)
マックかはなまるうどんしか思い浮かびません。あと、普段行くのは、餃子の王将です。
豪華な食事は、二日前にして、最後はお茶漬けがいいかなと思っています。食後に、塩昆布と善哉のデザート。それと抹茶アイスもあれば、言うことなしです。
うーん
迷う
好き嫌いがない代わりに好きすぎるものもない
うーん"(-""-;)"
間違いは、それだけではない。全部、見つけないと試験に合格できません。立てこもるなら、うどん屋さん。三食、焼肉だったら飽きてしまって、立てこもりを諦めてしまう。うどんなら、野菜不足が気になるけど、一週間は、立てこもりを続けることができる。美女というのは語弊がある。せめて、かつてのくらいの修飾語が必要です。
主人公『洋子さん』のダーリンの名は
宏太郎さん?それとも幸太郎さん?ハッキリしてね(*^m^)
冗談はさて置き・・・
パパの、ある方へのお返事が気になっちゃって
帰れないぢゃなーーーいっ!゚゚\(´O`/)°゜゚
お願いだから、人質取って焼き肉屋さんに立てこもったりしないでね~
パパには私を筆頭に、こんなにも大勢の美女ファンがいるのよ!
そのことを忘れてもらったら困るんだからぁ~!
妻には、言いたくても言えないこともあるのです。今夜は、銀座寿司よしたけで接待があるからとは、口が裂けても言えません。夜は、一人5万円からです。スシローに行ってきたと嘘つきます。
登場人物が皆さん、優しい方達のようで良いですね。
実感がこもってますね。しかし、自分は、癌を告知されても、平然としている気がするのです。生きている意味を見いだせず、世捨て人のようになっているので、死んでもいっかという感じです。
癌と告知され断捨離をされるなんて凄い事だと思います
癌と告知された人は正常心ではいられません
頭の中が真っ白に成り数時間涙が止めなく溢れ出る残される家族の事が走馬灯のように思い出されます
私がどうして人様に迷惑掛けず日々頑張ってきたのにと嘆きました
小説の中とは言え理想の家族だと思います
読ませて頂いて自身と重ね合わせ涙しました
私は、その時が来る前に、自ら旅立とうと思っています。大海に向かって船を漕ぎ出し、乙姫様と余生を過ごそうと思っています。ボートのカタログを収集中です。
多くの人が 通る道ではありますが
家族とは言え人の想いは様々で
こういう時こそ皆の気持ちが
まとまらない事も多く お話しのように
家族みんなが思いやりあって
過ごせる事が素敵ですね〜
私も洋子さんの義母のように
その時が来たら 動揺せず
静かに身辺整理して旅立ちに備えたい
と、思いました
とてもスランプとは思えない
物語をありがとうございます(◍•ᴗ•◍)
そうです。最初からオチが分かってしまったら、犯人が最初に分かる刑事コロンボや古畑任三郎のように、面白いストーリーが必要になり、ハードルが上がってしまいます。内緒が一番です。
自分の母親にも奥さんにも気を使う宏太郎さんのような人は
いるのかしら。いてほしいとは思います。
ただ、主婦の立場からは、ちゃんと言ってくれた方がいいよねと
思ってしまいます^^;だから、小説が書けないのかm(_ _)m
出だしのようなお話を期待する読者も多いと思うのですが、ココでは書けません。18歳以上限定というジャンルがあれば、うどんのことなど忘れ、そちらばかり書いてしまいそうですが、二コタ事務局に怒られないようにしています。
たまちゃん
今日は、二言しか話していません。コンビニのお兄さんに、「58番」と煙草の銘柄指定をしたのと、喫茶店で、「彦星ブレンドとモーニングサービス、ミルクはいりません。」の以上で終了です。食事も孤食。完璧なオミクロン対策になっています。このままでは、日本語を忘れてしまいまそうです。
今年に入ってからとってもいい展開で終わるものを他にも読んだような気が。
いやいや、いいことですよ。こういう雰囲気の物語も大好きですし。
私は親とはすっかり別々に食事するようになりましたけど、
父と母は一緒に食べざるをないことが多いので、間にアクリル板を立てて食べてますw
最初はどうなるのか?と心配しましたが (*≧m≦*)
先ほど、母から電話がかかってきて話しましたが、「あほちゃうか」と5回くらい言ってしまいました。私は、優しい息子にはなれそうもありません。しかし、お年玉をくれたら、その時だけは、優しい息子になれると思います。残念ながら、今年はもらえませんでしたので、一年間優しくない息子になります。
アリスさん
がん以外では、なかなか死ねなくなったということでしょう。その癌でも、なかなか死ねなくなってきました。早期に発見すると、ほとんど治っちゃいます。高齢化が進行して、医療費と年金で財政破綻が間近に迫ってきたような気がします。
2人に1人は、なるから、怖いね。
旦那様は、夜ご飯を二回も、食べて大変だったね。
言ったほうがいいと思うけれど。
母親思いの人は奥さんも大切にすると言います。
正にお手本だわ^ ^
愛すべきおじさんですね。私が聞かれたら、うどんか脂肪酸グリセリンエステルの中性脂肪と答えてしまい、やっぱりおっさんはダメだと思われたことでしょう。そのおじさんは、ろくさんに尋ねられた瞬間に、ぷーさんが浮かぶディズニー好きだと思います。太っ腹でおごってもらえそうだし、デートに誘わないといけません。
今回は、ホームドラマ調です。作者の得意技は、悪人が善人をやっつけるという悪逆非道のスカッとする話なので、今回は、アイデアが浮かばずに、やむを得ず、善人しか登場しなかったのだと思います。最近、サラダを食べていないので、ビタミン不足が原因の不調かもしれません。
登場人物皆優しいですね。