ストーブ
- カテゴリ:小説/詩
- 2022/02/10 08:53:11
冬の朝
雨が降る
ガラスをぬらす
水溜りの音
傘を跳ね返す音
大きな傘を買った
二人で入るほど大きい
今はもう
一人でさすから
そんなに大きな傘はいらない
寒いからブーツを履いた
あなたはいつもブーツ姿を褒めてくれた
なぜだろう
私の前の人もそうだったのか
人と比べるなんてずるい
あなたの次の人はどんな人だろう
まだ一人でいるのだろうか
なぜ私と別れたのだろう
私のどこがだめだったのか
それすらも言わないで
雨粒がガラスを滑り落ちる
雨粒におかしな顔が映る
これが本当の私なのかもしれない
心ねじ曲がって
あなたが忘れられない
火の気がない部屋は寒い
そっとストーブに火を付ける
あなたが何度もつけたストーブ
暖かな空気に包まれる
ゆらめくストーブの焔
きえていったあなた
私にも私の心にもさよならも言わずに
言いたかったさよなら
あなたもまたストーブの側か
夢があふれていますねぇ、もっと聞きたいから
伯父邪魔してもいいですかぁ
ほのかな光が燃えているのに、あなたはいない。こんなに淋しいなんて思わなかった。
そんな情景でしょうか。
赤い炎の中に揺らいでいる
パチパチと音を立てながら
優しく揺らいでいる
抱きしめたい
そう思った
もう少し近づけば
あなたと一緒に燃え尽きる事が出来るのに
窓の外から強い雨音が聞こえる
それはあまりにも冷たい雨
雨がこの炎を弱めてくれたなら
もっと長くあなたと居られるかもしれない
私は炎をじっと見続けている
あなたの面影が燃え尽きるまで
そして私たちの
過去のすべてが燃え尽きるまで