Nicotto Town



強制同泊の想いで

まだCM制作の仕事をしていた頃。

富士山麓でのロケというのがあり、1週間くらい富士山周辺に泊まり込んでロケ場所を探していました。これが私の最後の仕事でしたね。

その業務自体が私しかアサインされておらず、もう一人だけ誰かアシスタントをということで、一つ仕事が一段落して休みを取っていた後輩の女の子が指定され、せっかくの休みだというのに私から電話が。

「明日から富士山麓でロケハンなので、泊まり支度して出社して」
「あ・・・ はい・・・」

車で出向くのですが、車では細かいところウロウロとする機動力にならないので、私と彼女の分の2台の折り畳み自転車を会社近所の店で購入。そのあたりはニュー自転車の品定めなどして、楽しそうなアシスタント嬢。

そしてそのまま富士山へ出発し、さっそく一つ二つの候補地を確認し、その日は早めに投宿となりました。が、ここで私はある重大なミスに気が付きました。

やべえ、一部屋しか予約してねぇ。。

出発の前日に突然アシスタントが決まったので、自分一人で出向くことを想定して一部屋しか予約をしていませんでしたw 宿に着く直前にそのことに気が付いたので、到着したら「もう一部屋空いていますか」と聞けばいいのに、なんか動転したのかそのまま部屋に入ってしまいました。というか、予算がない仕事だったのに、何日間ここを放浪すればいいのか予想も立っていなかったので、無駄遣いしたくなかったというのもあった気がします。

そんなこんなで初日の夕食。
部屋でいただく感じなので、それはそれで旅行気分でアシスタント嬢も喜んではいた気がしますが、さて食事も終わり、じゃあ風呂でも入るかと風呂に出かけ、そして部屋に戻ったら。。。

まあ、そうなるわな。

「仕事で来ました」と宿の人にはボソボソと言ってはいた気もするのですが、部屋に戻ると10畳くらいある部屋の真ん中に、綺麗にピタリとくっつけて敷かれた布団が二組w

まあね、若い男女が同室で泊れば、何を言おうがそうなりますね。

何とも居心地の悪い空間。
だったからかどうかよく覚えていないのですが、たぶんその後で私はコンビニか何かに出かけたのですが、戻ってきたら、もうアシスタント嬢は布団に入って動かなくなっている。ホントに寝ているのか否かは判然としませんが、布団が30㎝くらいだけ離されていて、思わず笑ったことだけ覚えております。いや戦々恐々としたことでしょうね。笑っちゃ悪い。

ところが、もともと肝の据わった子だったので、2、3日して私に襲われる心配がなさそうなことを認識したら、だんだんと適当というか、だらしない感じになってきて、それはそれでこちらも困るというw

翌日だったでしょうか。地元の富士山専門のアマチュアカメラマンと打ち合わせ。
出発前に、もちろん色々な資料を見たり、まだ今ほどには発達していなかったインターネットなどを見ながら調べごとをしたり、出来る限りの情報を仕入れ、ロケハン場所の当たりをつけてはいたものの、とにかく山梨側の山中湖近辺から、静岡側の朝霧高原まで、何パターンか必要となるロケ地の候補は山のようにあります。
そこで、餅は餅屋ということで、たまたまWebで見つけた綺麗な富士山を取るアマチュアカメラマンのサイト(当時はホームページと言っていましたね)を見つけ、ダメもとで連絡をしてみました。

「これこれということでロケ地を探しているのですが、相談に乗ってもらえないでしょうかね」

頼んでみるものです。快諾してもらい、2日目に相談の打ち合わせとなりました。その彼のサイトは今でもたまに訪れ、年に1度くらいかもしれませんが、そのサイト上でのメッセージのやり取りなどがあります。懐かしくなりますね、そんなときは。

ああそういえば。
青木ヶ原樹海のあたりを自転車でウロウロとしていた時。アシスタント嬢は、すっかり私との同室生活にも慣れた肝っ玉アシスタントとかと思っていたら、オカルト系は全くダメだったようです。ちょっと樹海の入り口まで入り込んでいったら、くらい道端に端に手向けられた花束が。それを見るや「いや、無理無理無理です!」といって一目散でUターンしていきました。

なんだかんだで、1週間くらい富士山録を放浪していましたが、後日にメインスタッフたちに写真や撮影条件などあれこれと整理したものを見せ、そしてここが良いです!と見定めた撮影に必要となる数か所に皆を連れて行くと、「もうここでいい、他は行かなくていい」と即決してもらい、まずもって人を褒めない上司からも「完璧」と言われたことだけは、良い思い出です。まあその後の撮影本番が、これまた大変だったのですが。。

撮影は前日から数十人のスタッフがロケ場所近隣の宿に泊まり込み、明け方前の3時過ぎごろに最初のロケ地である三国峠に向かう予定だったのですが、その泊まり込んだ前夜が大雨。
もちろん撮影日の決定は天気予報との兼ね合いで決めていくのですが、山の天気はままならず。不安でロビーで私がぼんやりとしていると、上司やスタッフが数名近づいてきて、「まあ、そのうち止むさ」といってビールを差し出して一緒に飲んでくれたのは、本当にありがたかった記憶があります。

そして果たした翌朝。
快晴。
いや嬉しかったね。あれは本当に。

そして最初のロケ地の三国峠に到着し撮影準備をしていると、徐々に空が白み、夜が明け始めます。しまった…
焦りましたね。出発の時間、移動時間、カメラから照明からメイクから山のようにある準備の手続きと必要時間、そして日の出の時間を計算して予定を組んだのですが、想定以上に日の動きが早い。あと15分早く出るべきでした。

なのですが、あと少しで準備が終わるというその時に、空と湖と富士山と、風景のすべてが桃色に染まる物凄い絶景が現れました。急いで準備をしないとならないのに、あまりにも物凄い景色に全員の手が止まってしまい、ディレクターが「これは… 凄いな… いや早く、もう回すぞ!」と叫ぶとウワーッと準備が進み、無事にその絶景が何とか保たれているうちに、最初の撮影を終えることが出来ました。
撮影は3日くらいに及んでいた気がしますが、その後も中々ないラッキーが続き、想定以上の撮影成果で仕事が一段落しました。

後日に上司から、「あの撮影はさ、一回だけだよって山の神様がお前に味方してくれたんだよ」とポソリと言われて、ちょっとホロッとしたような記憶があります。


まだ若くて、良い時代でした。
ちょっと思い出したので、書いてみました。
そんだけです。

PS
その後に私は退職をしたのですが、例のアシスタント嬢はとても仲良くなり、退職後も顔を合わせることもあったのですが、残念ながらご期待の様な関係にはなりませんでした。
それでも、縁とは不思議なもので、まったく何も示し合わせていないのに、数年に一度くらい、ふいに顔を合わすことが続いています。一昨年あたりに、40代も後半になって、何を思ったのか付き合って数か月の人と突然結婚をしたそうです。
おめでとうございます。

PS2
後日、アシスタント嬢に「そういえばロケハンの時は、ずっと同室で悪かったな」というようなことを言ったら、「やだな、もえーんさんとそんなことになるわけないじゃないですかぁー!」と言いながら、物凄い真っ赤になっていたことを思い出しました。肝っ玉アシスタント嬢かと思っていましたが、そういうことでもなかったのかもしれません。
改めて、お詫び致しますw

アバター
2022/03/10 23:50
なんだかんだで、楽しい仕事でした。
でも金も時間もなくて、かなり会社泊まり込みのヤバい状態に突入。夜な夜な床に倒れ込んで、ボロ雑巾のようになって眠るアシスタント嬢の姿は哀れでしたが、だからと言って容赦なく仕事をさせるワタクシでした。
アバター
2022/03/10 23:23
美しい風景を奇跡的に撮影できたことと共にアシスタントさんとの同じ泊らなきゃならなくなったことがワンセットで思い出になったんですね^^




月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.