仮面舞踏会 (ぶちゅ~編)
- カテゴリ:自作小説
- 2022/03/31 00:10:03
ベッドから起き上がり、カーテンを開けると、太陽が高く昇っていた。日差しが眩しく、クラクラして目を開けていることができなかった。窓を開けて、煙草に火をつけたが、一口吸っただけで不味い。完全に二日酔いだ。焼肉屋のあとに、ワインバーに入ったのは覚えているが、その後の記憶がない。
ワクチン接種用に買ったおいたロキソニンの錠剤を手に取ると、ジャン・レノの『レオン』に出てくる悪徳警官スタンのように、口の中でかみ砕いた。早く効くかたと思ったら、苦い。たまらなく苦い。ミネラルウォーターを飲んでも、口の中に貼りついたように苦みが残る。
文雄は、ティーサーバーにダージリンをスプーン3杯入れて、お湯を注いだ。3分蒸らしてカップに注ぐと、赤ワインとロゼを混ぜたようにように赤みがった茶色の紅茶になった。頭をすっきりさせるために、濃くしたが苦い。たまらなく苦い。苦みを和らげるために、クッキーを浸して、一緒に食べることにした。
クッキーから紅茶の滴が落ちないないように、カップと一緒に口元に近づけた。ほのかに甘く爽やかなダージリン特有の香りが鼻腔をくすぐってと思ったが、鼻腔をくすぐったのは紅茶の香りではなく、スギ花粉だった。
文雄が大きなくしゃみをすると、手に持っていたティーカップからこぼれた紅茶がパジャマにかかった。文雄は、パジャマを脱ぐと床にこぼれた紅茶をぬぐった。茶色いシミだらけになったパジャマを持ちバスルームに行くと、洗面台に水をためてパジャマをすすいだ。
洗面台の鏡に写る姿を見ると、無精ひげが伸び、目の下にはクマができ、腹の周りはたるみ始めている。身体を斜めにしてみたら、鏡に写る姿は、お腹が出ていないように出て見え、息を吸ったらお腹が凹んだ。ポーズをいろいろとっていたら、乳首の横にある小さな黒子から伸びるムダ毛が目に入った。ひょろりと伸びたちち毛を見ていたら、昨夜の記憶が鮮やかに蘇った。
焼肉屋を出て、美穂と腕を組みながらワインバーに入った。グラスを傾けながら、得意のうどんの話をした。美穂もうどんの話を喜んでくれたので、調子にのってしまい、「うどんはコシや~」と言いながら、美穂の腰のあたりを触ろうとしたが、彼女は嫌がるそぶりを見せなかった。それどころか、美穂は、腰に回した文雄の手をとると、自分の太ももの上にのせた。
アルコールとカシミアの生地越しに感じる柔らかな太ももの感触に、文雄は舞い上がった。「一期一会」、人との出会いは一生に一度のものとして、相手に対して最善を尽くす。今夜は、茶道の精神で、ベッドの中でおもてなしをしようと思ったが、ちち毛が伸びたままなのを思い出した。
15才年下の女性を相手に、こんなことになるわけないと思って、ちち毛を伸ばしたままにしていた。社長に不可欠の危機管理能力が欠如していたが、不測の事態に直面したときは、一旦、冷静になり態勢を整え直すことが大切だ。お楽しみは次の機会にして、バーを出たあと、タクシーに美穂を乗せ、運転手に一万円を渡し、文雄は総武線で高円寺に帰った。
文雄は、胸を覗き込み、ちち毛をつまんだ。こいつのせいで、美穂との一夜を逃してしまった。抜こうと思ったが、おばあちゃんに、ムダ毛を抜くと増えると言われたことがあるのを思い出し、次に美穂と会うときに抜こうと思った。Tシャツに着替えて、ソファーに座り新聞に目を通した。
「アレクサ、みぽりんと、また会いたいんだけど、何て誘えばいい?」
《乳毛を見せたくないというちっぽけなプライドのために、みぽりんの今夜はいいわよというサインを無視し、彼女のプライドを深く傷つけてしまいました。共感の基本は相手の立場を理解するということです。女性は共感が出来なければ、竹内涼真でも付き合いません。みぽりんのことは忘れてください。》
「アレクサ、みぽりんのおっぱいをもみもみしたい。」
《・・・・みぽりんの事は忘れましょう》
ボフッとLineの着信音がなった。美穂からのLineだった。いくら世界中の情報と繋がっていても、しょせんは機械。AIに男女の機微が分かるはずもないのだよアレクサ君。
昨日も天気が良かったですが、今日も良さそう。晴れ女ですね。
お釣りが出るくらい渡している男性が偉いです。私なら、小銭混じりのギリギリの額しか渡さないでしょう。お金にきっちりしているので、彼女に財布を任せても安心ですね。しかし、キャバクラに行けなくなるのが困ります。
危ない、危ない (*≧m≦*)
>タクシーに美穂を乗せ、運転手に一万円を渡し
芸能人の誰かが、付き合い始めた彼女を
タクシーに乗せ、運転手に現金を渡したら
次に会った時に彼女から、領収書とお釣りを渡されて
ぁ~この人と結婚しよう!と、決めたという話を
思う出しちゃいました~
文雄君は、頑張ってくれるでしょう。
そうです。そのために、勝負パンツという言葉があるのです。そんな気構えでは、いけません。私は、例え、綾瀬はるかであっても、うどんより、蕎麦が好きだと言われたら、自分の前には置きません。横に置きます。
入念な備えが必要ですね。
その教訓、つい忘れがちですが、改めて肝に銘じます。
竹内涼真だったら、眺めているだけで目が喜ぶので、
とりあえず自分の前に置いておきたいですね~
ちち毛は、抜いたら増えるのに、髪の毛は抜けていく一方というのは、如何なものでしょうか。ヒゲの存在意義も不明です。是非、全ての毛根パワーを額の生え際に集中して欲しいものです。
この場合きにせず抜くべきだと思いました。
乳毛でせっかくのチャンスを棒に振るとは、
残念な男ですね~!
アレクサは人間よりよく分かっているのでは?と思いました。
後半読みに行ってきます。