タケシの武勇伝…(17)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/10/19 20:28:21
「北野さん、貴方がケガをしたあのビル…実は真也さんのお父様の持ち物なんです」
落ち着いてるように見えた塙さんにしては、妙にぎこちないしゃべりになっていた。
「実は貴方がケガをした頃、あのビルを売って欲しいという話がありましたが、旦那さまはずっとお断りしておりました。なにしろ相手がとある暴力団とつながりがある会社だったからです・・・」
塙さんはさらにぎこちなくなった。
「ところが、あのビルの間借り人の中にすでにその暴力団とつながりがある人間がいまして…そこで…」
今度は完全に気まずいのか、話をためらうように一旦タケシから視線を外すと、口元をかみ締めたまま一度大きく深呼吸した。そして、唐突に床の上に正座すると吐き出すように一気にしゃべった。
「その人間を追い出す手段をあるところに頼んだのです。ところが、その方法というのがあの銃撃によって暴力団関係の人間を追い出すというものだったのです…大変申し訳ございません!」
塙さんはひたいを床にこすりつけ、タケシが言葉を発するまでその姿勢を崩さなかった。
タケシは黙ったままだった。というより、言葉を発することができなかった・・・
瞬間、アタマの中が真っ白になったがすぐに怒りが全身を駆けめぐった。だが、この怒りは単純に言葉に出せるようなものではなかった。
…俺の将来、俺の夢、病室の匂い、母の顔、医者の言葉、そして今の自分。色んな出来事がアタマの中に山ほど浮かんだ。だが、どれをとっても良いものは一つもなかった。
タケシは、ただじっと土下座した塙さんの背中をにらみつけるしかなかった。
ただ長い長い沈黙がその場を支配していた・・・
※※つづく※※
しかし、ますます続きが楽しみになってきました。
次が楽しみです!!(全部見ました)
うまいですね!!
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