素直になれなくて （前編）
- カテゴリ：自作小説
- 2022/05/07 02:17:21
香川には、高松を起点に、琴平線と志度線、長尾線の3路線の私鉄が走っている。JR高徳線と並行して走る志度線は、営業路線12kmの間に15の駅があり、走り始めたと思ったら直ぐに停まる。瀬戸内海に突き出した岬沿いの急カーブを走ることができるように、小さな車両を使っていて乗り心地も悪い。
卓三は、苦虫をかみつぶしたような顔をしながらスプリングがへたりペコペコする座席に座っていた。昨日、75歳の誕生日を迎えたが、ケーキを食べ終わったあとに、息子と喧嘩になった。息子夫婦から贈られたプレゼントを開け、「補聴器なんかいるか、バカにするな。」と怒鳴ったら、息子にBluetoothのイヤホンだと言われた。
バツが悪いままお茶をすすっていたら、息子に、車の運転を止めたらどうかと言われた。卓三も、いつかは車の運転を止めないといけないと思っていたが、「まだ、老いぼれていない。」と言ってしまった。息子からは、事故が起きてからでは遅いと言われ、その通りだと思うが、事故が起きたら、こちらも迷惑すると言われて、カチンときてしまい「お前の世話にはならない。」と言うと、息子は妻や孫を連れて帰っていった。
素直に老いを認めることができない。子供の頃は、身体ばかり大きくなり、心はガキンチョのままだったが、今は、身体は衰えているが、心はガキンチョの頃のままだ。卓三は、カバンからイヤホンを取り出すと、スマホのミュージックボタンを押した。若い頃に聞いていたせつなく甘いメロディーが聞こえてくる。
https://www.youtube.com/watch?v=5Oaf10Ulz40
自分が悪いことは分かっていたので、いつもは市民会館で開かれる老人会の読書サークルに自動車で行くが、今日は電車で行った。車だと20分もあれば市の中心部にある市民会館に着いていたが、今日は、電車で30分、駅から降りて10分も歩いた。
それにしても許せないのは、金物屋の良子と瀬戸物屋の京子だ。これまで、読書サークルが終わると、二人を車に乗せて家まで送っていたが、今日は電車で来たから送れないと言うと、今までの恩も忘れて、卓三さん、75歳になったとの、お迎えも近いわねときたもんだ。
良子や今日子より、絶対に長生きしてやると思ったが、二人とも、身体も口も卓三よりずっと達者だ。今日の発表も、二人にこけにされてしまった。月に一度、読書の感想を発表する機会がある。卓三は、準備に三か月をかけて発表に臨んだ。
『小生、米国の雑誌を読んでいたところ、ハーバード大学の教授が、なぜ、ウエストの細い女性が魅力的かということを実証的に明らかにした論文を拝見したのであります。端的に結論を申しますと、ウエストが細いとお尻が大きく見えるからということであります。確かに、マリリンモンローもお尻をプリプリしながら歩いておりますが、あちらでは、子孫繁栄につながる安産タイプの女性が理想とされているのであります。
しかし、本邦の男性諸氏も安産タイプが好みかと問われますと、はなはだ疑念が沸くのであります。どちらかというとお尻より胸ではないかと。その点について、文化人類学的に考察をいたしました。
我が国は稲作文化ですが、欧米は狩猟民族、後には牧畜文化であり、ミルクが身近な存在でありました。赤子を育てる際にも、ミルクを飲ませていたことが想像に難くありません。しかしながら、我が国は、明治天皇が牛乳をお飲みになるまで、獣の乳を飲むなどもってのほかと忌避されておったのであります。しからば、母乳で育てるしかありません。
鎌倉殿の13人をご覧になっている方も多いと思いますが、巴御前は源義仲の乳母（乳父）の娘です。義経の正妻は、源頼朝の乳母の娘です。かように乳母は重要な存在でありました。鎌倉時代だけでなく、清少納言は枕草子の中で、「ただの女房にて候ふ人の御乳母になりたる。」と女房が乳母になった途端に、羽振りが良くなって羨ましいわと書いております。江戸時代には、江戸っ子の条件として、「御乳母日傘」と申しまして、乳母を雇うことが一人前とされておりました。
かように、我が国は古代から近世まで、乳母の存在が大きかったことから、お乳が良く出そうな大きなおっぱいに魅力を感じることが、日本男児のDNAに刻まれたと言っても過言ではありますまい。
小生の考察をまとめますと、和洋ともウエストの細い女性に魅力を感じますが、子孫繁栄の観点から、西洋では大きなお尻が、本邦では大きなお乳が重視されてきたという違いがあるということを申し述べさせていただきたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。』
卓三の発表が終わった途端、市民会館の小さな会議室に、非難の声が沸き起こった。
そもそも、体型の話や痩せている方が魅力的だとか、女性の反感を買うような発言をする卓三がいけないのです。創作日記に、何度も何度も、おっぱいと書く作者もどうかと思います。二コタ事務局に見つからないことを願っています。
環謝さん
何をおっしゃっているんですか。ハーバード大学の教授の論文についての考察です。そんな目で見てはいけません。お父さんは、正直な人だと思ってあげましょう。思ったことが、ついつい口に出てしまうのです。私のような、むっつりすけべより素直です。
大きいにしろ小さいにしろ、悪口ではないにしろ、女性の身体の話は良くなかったなぁｗｗ
うちの父は恥ずかしながら昔から（いつからか不明ですがｗ）女性の外見を色々言う人なんですが、、、、聞いていて気持ちのいいものではないですね。。。
男性がどんなにイケメンでも、外見をけなす発言は許せないのに、全くのチビで小太りのおっさんに言われたくはないので、父をいさめますが聞き入れませんね(。-`ω-)
人間としての格が下がるということに気付かないまま一生を終えると思います。
それはともかく、、、角野卓三さんのお顔が浮かんできて消えません、、、ｗｗｗｗｗｗｗ
三か月もかけて挑んだのに、今はジェンダーの勢いが凄いので、
歴史的観点からの考察でさえも、避難されるようになりましたね。
お笑いとしても捉えられないので寂しいですね・・・
羨ましがる必要はありません。時間は平等にやってきますので、誰しも爺婆になります。それを覆すためには、光速で走るのです。じかんがゆっくり流れ、若さを保てます。
確かに お爺ちゃん、お婆ちゃんは
自分時間で動いていますねぇ～＾＾
なんか・・・・ ちょっぴり羨ましいかもｗ
四国新聞にも、商店街のマンション建設の記事が載っていたし、建設現場の前も歩いたけど、一階は店舗になると書いてあった。スーパーが近くにあるのか気になったけど、田町のマルナカに行くのかな。
瓦町フラッグが大丈夫なのかと思ってしまう。ここの本屋はよく立ち寄るんだけどね。
志度線の木造で天井に扇風機がついているところが、マニアの心を揺さぶります。南新町や丸亀町は人があるいていますが、瓦町周辺の寂れ方が気になります。常盤街にうどんストリートを作って、県外客を呼び寄せましょう。
敬老の日4か月前記念作品です。敬老の日は、「としよりの日」、「老人の日」、「敬老の日」と名称が移り変わっています。近年、老人を敬う習慣が希薄になってきたため、令和5年から、端的に「じじばばの日」に変更になる予定です。
涼華さん
お母さんは、大人になった時があるだけ立派です。私の頭の中は、ガキンチョのまま成長していません。これから、精神的な成長期を迎えることになるのだと思います。
つん
老人にタイミングやＴＰＯはありません。我が道を突き進めるのが老人の特権です。ジョギングをしていても歩道の真ん中を歩いているのは、お爺ちゃんです。横断歩道のないところで、道路を横切るのはお婆ちゃんです。
まぁ タイミングが悪いですねぇ～ 残念(~_~;)
後編に期待しましょうｗ
母と暮らし始めて、本当に、人は歳を取ると
子供に戻るということが、よくわかりましたｗ
子供と同じように母に接すると、うまくいくことが多いですｗ
どどどどどっ☆≡≡≡≡ヘ(〃￣￣￣∇￣￣￣)ノ
そして卓三さん、スマホを操れるとは、すばらしいですよ～
卓三さんの女性の魅力に関する考察、私は異議を唱えます (^^)/
だって、日本人の体って2Dですもん。西洋人の3Dとの違いは明らか。
着物で体全体を締め付けてきたから胸もお尻も成長できなかったし、
そのDNAを私が一心に引き受けてるわけですよ。
どうしてくれるんですか（なぜか沖人さんにとばっちり）
お尻派と書き込んだばかりなのに、マッチョ派に乗り換えるとは。筋肉は裏切らないとのNHKの言葉を信じて、身体を鍛えたいですが、その度に自分の諦めの良さに驚嘆をしております。漬物石に変貌した鉄アレーを復活させて胸板の美しさを目指します。
地下鉄で行ける幕張臨海公園は、ファミリーとカップルしかいないので、ナンパができないのが残念です。
続きは、どうなるのかな？
想像できないな。
私は、達観をしていて、大宇宙と一体化しておりますので、人類の歴史など、ビックバン以来の宇宙の歴史から比べたら、うたかたのようなものであり芥子粒のような存在。地球が温暖化しようが核戦争が起ころうが、いずれ無に帰す存在であり、長生き、健康、子孫繁栄などどうでもいいと思っておりますが、未来を託す子供達は大事ですね。産むも産まざるの自由。それを分かっていないキー子さんは、太陽にでも放り込みましょう。
子を産むだけでは社会は繁栄しない。難しい社会になったもの。
私はひとりも産んでないので何とも言えないが、生んだことあるとある女が大きな顔をして大きな口をたたいてるので
理性ある人間になりたいと思う
私も、都合の悪いことは耳に入りにくくなってきたので、補聴器を買わないといけないかもしれません。車がなくなっても、不便は感じていないのですが、これからの季節、湘南にナンパにいけなくなったので、寂しいかぎりです。
拍手喝采をしたい男性陣はいたと思うけど
大きな胸の賞賛はセクハラになりそうですからね^^;
補聴器ではなかったんだね。
自動車は便利だね。
沖人さんレガシーがなくなって寂しいかな？