11冊目、読了
- カテゴリ:日記
- 2022/05/23 00:13:57
直木賞受賞作 「ブラックボックス」 砂川 文次 著
私は、読んでいて頭がおかしくなりそうだった。どうしてこんな簡単なことができなかったのか、気持ちを抑えることができなかったのかと。結局刑務所暮らしになるが、遅かれ早かれあの性格では、当然行くところだろうなと思わせた。
主人公サクマは、メッセンジャーの仕事をしていた。自転車でさっそうと走る様子は気持ち良さそうで描写もスピード感があって、すばらしかった。しかし、残念なことにそういう自転車の正式な部品名は私の知識の中にはなく、( )か *注でいいから 説明が欲しかった。また、最初の事故の様子も行けるかもしれないとの自信過剰な判断で、もしや事故るのではとも予感させられた。
サクマの考えは、ある意味興味のないもの、あるいは人には深入りしないし、スルーする。争いを極力控えるという考えは立派だ。仕事もほどほどの給料がもらえて、精神的に肉体的にある程度の自由があればいいかと妥協点も持っていた。しかし、「もう少しなんとかしたら?」などと人に言われるとその反動が、暴力の爆発となってしまうからどうにもならない。「分かっちゃいるけど止められない」と言ったところか、自制心がなくなる。かつての職場もそういった事情でいくつも首になっている。確かに相手の行為は、誰も良くないことと思いながら我慢している。社会とはすべてが正直では生きていけないから。
ある意味「純粋」なのかもしれないが、子供のころからの育った環境も影響していることは確かだ。もう少しきちんと。もう少しちゃんとしようと思いながらもできない。誰も導いてくれなかった。刑務所に行くきっかけになったのも、無知としか言いようがない。社会に余り関わって生きたくないという考えがそうなってしまったのかもしれない。切れる若者は一見おとなしそうで急に変わる。本当は社会の一員になりたいが、認めてもらえないジレンマが暴力となって出るのかもしれない。そんな男のあきらめに似た心理描写は緻密に書かれている。
ひとつひとつの積み重ねが「もう少しちゃんとした」何かになるのだと分かってきたのが刑務所生活の効果になったが、更生するまでには相当な困難があることには間違いない。世の中はそんなに甘くない。
本によって気分良くなったり、考えさせられたり、
分野によって色々受ける感じが違いますね。
私にとってこの「ブラックボックス」は、気持ちが滅入ってしまう方でした。
新しい本を読んだら、是非感想をお聞かせください。
私も読んでみました。
サクマの性格は理解しがたいものでしたが、
問題が見受けられた中学生の頃に、何らかのケアを受けさせてあげることはできなかったのであろうかと思いました。
住んでいる世界は違うかもしれない。
でも、同じ生身の人間であることに変わりはないのだよと、
本を読み終えて、刑務所の中のサクマにはそう思いました。
次は、東野圭吾さんの『透明な螺旋』を読もうと思います。