海岸線
- カテゴリ:小説/詩
- 2022/05/23 15:58:50
いつの間にか
またこの海岸にたどり着いた
あの頃とは違う
一人きりで
側には誰もいない
潮風に髪をなびかせて
あの日を追走しても
あなたが出てくるはずもなく
短く切った髪がまたのびて
あの日と変わらない姿が悲しい
あなたを追いかけても
たどり着いけなかった
それはあの時も同じ
あなたが何を考えているのかも知らず
自分だけの世界に浸っていた
それが貴方には辛かったのだ
一人ではしゃいでいる私を見て
悲しい目をしていたのだ
私が気づかないうちに
なぜ私は感じなかったのだろう
あなたは言った
もう別れようと
その意味もわからずに
ただ呆然としてした
誰がそれを言うの
追えなかった
あなたのことを
悲しかった
二人のことが
もう二人は会うことはない
あなたとよく来た海岸線
今もこうして来るけれど
あなたを忘れるためじゃな痛い
あなたを抱きしめたいから
でももうそれも叶わないこと
いつかここに来ることもなくなるだろう
それはあなたを忘れることではなく
あなたから卒業すること
そしてその日が来たら
ここに来てあなたに涙を捧げよう
海岸線は何も知らない
ただ推して返す波の音だけを知っている
それ以外何を知ろうと言うのか
暮れゆく波の音だけを知っていればいい
素足に打ち寄せる波が冷たい
満ちる潮の香りと波の音
目をつぶるとそこにあなたがいた
そして肌に感じる
あなたの温もり
それは過去の残像ではない
今優しく音を奏でる
私の心の中に残る想いの欠片だ
もうすぐ陽が沈む
あの日の最後の口づけがよみがえる
その思いをさえぎるように
冷たい波が私の足元をさらっていく