Nicotto Town


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『空の中』

今回読んだのは、有川浩さんの『空の中』。自衛隊シリーズの一つで、有川さんにとって、単行本として出した一作目である(私が購入したのは文庫本だが)。500頁に及ぶものは久しぶりだったが、面白くてスラスラと読むことができた。



国産輸送機開発プロジェクトのスワローテイルと、航空自衛隊のF15J(イーグル)。相次いで二つの航空機が、高度2万メートルの場所で「何か」に衝突する。


私、SF小説ってまったく読んだことが無くて。アニメやマンガならいくらでも見たことあるはずなのに、その「何か」が未知の生物だったことにめちゃくちゃ驚いてしまった。今まで現実を見ていたのに、急に夢の中に放り出されたような。小説読んでるくせにね…。


イーグルのパイロットだった父を亡くした瞬と、幼馴染の佳江。
スワローテイルの事故調査委員である高己(たかみ)と、2機編隊だったイーグルの事故から生還した光稀(みき)。
子どもと大人のW主人公というのも面白く、SF重視ではあるものの、両者の恋愛描写も抜かりない。特に女性パイロットで男勝りな光稀が、高己に対して時にデレを見せるのがたまらん。ツンデレ最高である。



人類が誕生するよりもはるか昔から存在していた「白鯨」。スワローが衝突したことによって一部が剥落し、高度2万にいる方を「ディック」、剥落した一部であり瞬の手元に渡った方が「フェイク」と名付けられていたが、やはり”名付ける”という行為って愛着を持たせるのにかなり重要なんだなと。

非常に温厚な性格だったのもあるだろうが、喋る言葉がどことなく無機質な感じはしても、彼らにとても温かみを感じた。
読んでいる途中の心の声、

「あぁ、ディック…!」
「フェイク…!!!(涙)」

と、まぁ、こんな感じである。「白鯨」という名前のままだったらこうはならんかったかも。


W主人公の他にも、宮じいやスワローパイロットの娘だった真帆もすごくよかった。宮じいが出てきた時の安心感と言ったらこの上ない。土佐の訛りも最高なのよね。
瞬や佳江、真帆に対して静かに、優しく、厳しく、諭すように語りかける。宮じいみたいな人に育てられて、悪人になる人は一人もいないんじゃないかな。
人間は間違える生き物だから、何度も間違える。それはしょうがない。だけど、それを誤魔化してはいけないと。間違えたことは、間違えたと認めなければいけない。そうして生きていくしかない…。宮じいのセリフの中で、一番印象に残った部分。こんなこと、大人はなかなか教えてくれないよ。
ちなみに、文庫版にある「仁淀の神様」で泣きかけました。電車の中で読むときは注意した方がいい。


そして真帆。スワローの試験飛行の前日、真帆の進路で父と喧嘩をしていた。

「お父さんなんて大っ嫌い」

その言葉を最後に、真帆は父と死に別れた。真帆の母は神経衰弱に陥り、「あんたがあんなこと言ったから」と、父の死を真帆のせいにしてしまう。

真帆に対する第一印象は、もちろんあまり良いものじゃなかった。瞬をいいように言いくるめて利用しようとする、「敵」という認識が強かったが、真帆がそうなってしまった背景を知ってしまうと、「ああ、この子もちゃんと子供だったんだな」と気付かされた。ただ、お母さんに「あなたのせいじゃない、大丈夫よ」って言ってほしかっただけなんだよね。
有川さん、本当に人を書くのが上手いな。


実は、しばらく「フェイク」が瞬のお父さんなんじゃないかって思いながら読み進めていたんだけれども。だって、瞬のお父さんの携帯に電話を掛けたことがきっかけだったから。
まぁ、結局違ったわけだけど、「フェイク」の瞬に対する健気さを見ると親と重なる部分もあったように思う。

冒頭で瞬の父も真帆の父も、それぞれ瞬と真帆のことを気に掛けながら死んでいった。
私の両親は別に死と隣り合わせの職業についているわけじゃないけど、人間誰しもいつ死ぬか分からない。私だって、明日車に轢かれて死ぬかもしれない。
親が子を思うように、私も親を大事にしなければなと改めて思った。
大事にしてないわけじゃないけどね。微妙に続いてる反抗期、なんとかせねばあかんかも…。


もう読み始めているが、次は『空の中』より一つ前の作品である『海の底』について書こうと思う。

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