安倍元首相殺害事件についてのコメント その1
- カテゴリ:日記
- 2022/07/15 11:27:52
2022年7月8日に発生した安倍元首相殺害事件について、
私が考えたことを、ここにメモしておこうと思います。
○事件の政治的利用、特に民主主義を否定する利用の仕方に注意する必要
・テロとは何か
まず、テロリズムの本を読むと、テロの定義はむずかしいという言葉を
必ずといってよいほど見つけることができます。
それでもあえて定義するとすれば、暴力による政治、暴力の政治的利用。
・テロとは言いがたい犯人の殺害動機
とはいえ、マスコミ報道を見る限り、容疑者の犯行動機には、
政治的な主義主張もなければ、政治的背景も見られません。
政治団体の関与もないと言っていいと思います。
その点で、個人的な逆恨みによる計画的な犯行としか言いようがないです。
2019年に発生した京都アニメーション放火殺人事件や、
2021年に発生した大阪北新地での精神科クリニックへの放火事件の方が、
事件の性格としては近いように思われます。
・テロに対する対抗手段として民主主義
ですが、各政党もマスコミも一斉にコメントしているように、
“暴力に訴えることを許してはならない。
それは、言論による政治と言える民主主義への挑戦”。
という言葉で、この事件を、
そして、政治におけるあらゆる暴力手段の使用を非難しました。
個人的な逆恨みのような犯罪を、
民主主義への挑戦、政治テロであるかのように語ってしまうことには
違和感があるかもしれませんが、
しかし、言論による政治としての民主主義を守るというメッセージを
明確に打ち出すことは意味があったと思います。
なぜならば、
・注意すべきなのは、事件の政治的利用であり、事件後の暴力の連鎖。
テロは暴力の政治的利用と言えますが、
テロ事件発生後には、事件の影響を政治的に利用しようとする論調が、
必ずといってよいほどが起きてくるからです。
そして、その論調は、暴力の連鎖を生み出しかねないからです。
今回もすでに、
「自民党の長期政権が招いた事件と言わざるを得ない」
「社会が安定して良い政治が行われていれば、
こんな過激な事件は起きない。
自民党がおごり高ぶり、勝手なことをやった結果だ」
という論調が見られました。
「あんなひどい政治をやっているから、殺されたのだ」という論調ですが、
これは「あんなひどい政治をやっているのだから、殺されても仕方が無い」
というテロリストの論理と紙一重です。
しかし、どんなにひどい政治が行われていようと、
その政治に対する批判は言論で行われるべきであり、それが民主主義です。
暴力の行使に対して理解を示すような発言、
その結果、暴力の行使を容認することになるかのような発言は、軽率ですし、
発言が与える影響というものをよく考えていない発言と言えます。
そしてこの発言では、ほとんど政治的背景や意図のない銃撃事件を、
安倍政権・自民党政治と結びつけ、
安倍政権・自民党政治への批判として利用するような、
事件の政治的利用が見られます。
逆に、安倍元首相の死を間接的に呼び寄せたのは、
安倍批判・安倍バッシングなら何をしてもよいという社会の空気ではないか
という論調も見られました。
そう語ることで、事件発生の責任を、
安倍政権に対する批判を行ってきた人々に間接的に負わせていく。
そうすることで、安倍政権・自民党政治に対する批判を封じ込める。
つまり、このような論調は、この事件を、
政権批判を行う人々への攻撃材料として利用していると言えます。
しかし、安倍さん個人の不慮の死を悼むからと言って、
それで安倍政権・自民党政権への批判を叩くことは、おかしいと思います。
ましてや、この事件によって政治・政権への批判を封じることは、
これもまた言論による政治である民主主義を否定することに繋がります。
このように、事件の影響を政治的に利用しようとする人たち、
特に言論による政治である民主主義を否定する方向に利用する人たちは、
今後も現れてくるように思われます。
そして、そのような事件の意味づけと、事件の政治的利用に対して、
私たちは、常に警戒する必要があるように思います。
政治的意図や背景がなかった事件を政治に関連づけて語ることは、
そう語りたい、そう語ることで事件を政治的に利用したい人たちによる
世論操作・大衆煽動ではないのか。
その発言は、結果的に民主主義を否定する方向に作用してはいないかと。
ですから、事件そのものよりも、事件が起きた後の、
事件の政治的利用に私たちは注意すべきです。
事件の政治的利用によって、偶発的な事件が、
その後の歴史を動かす大きなキッカケになってしまうことは
よくあることだからです。
今回は、マスコミの報道の仕方も問題でしたね。
まず、事件の経過を緊急報道する必要がどこまであったのか。
震災のような災害報道とは異なって、新しい情報が更新されないわけで、
その結果、銃撃シーンを何度も繰り返したり、
ネットに流れている情報を流してしまったり、
事件現場にいた高校生の証言を顔出しで生中継してしまったりと…、
落ち着け!
そこまで慌てて報道しなければならないことなのか、
情報をもっと精査してから報道しても遅くはないだろうに。
ましてや狙われたのが政治家であるからこそ、
どのような形で情報を発信すべきなのか、
もう少し考えてから発信すべきだったように思います。