Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


きらきら、黒耀石がふりそそぐ その4

仮想タウンでキラキラを集めました。

2022/08/18
キラキラ
集めた場所 個数
ショップ広場 3
自然広場 4

四択 お寿司

(長野旅行続きです)
 このあたりは標高が高いと先ほど書いた。ミュージアムのすぐ近くにブランシュたかやまスキー場というのがあり、向かう宿もエコーバレースキー場の近くだ。雪がないスキー場を見るのはそういえばあまりない。芝のような緑のなだらかな斜面。雪のころにきたら、別世界が拡がっているのだろう。宿はペンションと別荘街のいちばん奥のほうだった。街と書いたが、森の中の細い道を進むので、街の感じはない。番号のついた標式があり、番号ごとにペンションの名前がまとめて書いて案内されているので、道に迷うことなく、宿についた。
 5時にチェックインとあらかじめ予約していたが、着いたのは4時ちょっと過ぎ。ちょうどいい時間だ。
 少し休んだあと、夕食前に時間制の貸し切りの温泉に入る。久しぶりの温泉だ。実は食事などがいまいちだったので、宿の詳細ははぶく。
 窓から木々が見えた。さきほども書いた、たぶんマツ科のコメツガやシラビソ。盆栽などで見るクロマツを、すっくと立たせた感じ。若い頃というか、ほんの数年前まで、実はこういう景を旅先で見ることに、興味がなかった。基本旅といえば海辺へだったし、海のないところであれば、湖畔や川辺に宿を取った。前に諏訪に来たときは諏訪湖半の宿だったし。水が見えるところというのにこだわっていた。だがここ何年かで、ようやく、水以外のものも、感じたいと思うようになった。木々のむこうに、まだ青い、昼の空、雲が見える。家の近くでは聞かない鳥の声もする。そういえば、くる途中、鷹の仲間が飛んでいるのを何度も見た。木々もそうだが、こんなとき、名前を知らないことがもどかしくなる。名前を知らないと世界が狭まったままになるような気がして。せめて声を覚えておこうと思った。鳴き声を知っている鳥では、ウグイス、シジュウカラ、ホトトギス。そしてシジュウカラにすこし似ている、あれは多分コゲラ。
 このあたりは星降る里、星のかけら、星糞たちが落ちているというぐらいだから、夜になると星がきれいらしい。窓の外からちらっとみただけだが、あいにく雲が多くて星がほとんど見えなかった。日中もそういえば青空は見えたが、雲が多かったと思い起こす。
 朝早くから移動していたので、夜は早く床に入った。部屋にエアコンがなく、暑さが心配だったが、さすがに高原。網戸ごしの外気と扇風機だけで、びっくりするぐらい、過ごしやすい温度だった。
 眠りのなかで波音のようなものを聞く。ざわざわ、ざー。森林をわたる風の音だった。知らなかった心地よい風と木々の調べだ。
 朝、もう一度貸し切り温泉に入り、朝食後にチェックアウト。宿から大門街道へ、街道近くに姫木湖というのがあるらしいので、寄ってみたかったのだが、車を停める場所がない。小さな、池のような湖を車窓ごしにながめて、大門街道を上田方面へ向かい、道の駅へ。このあたりで一番大きな道の駅。マルメロの駅ながとという。「マルシェ黒耀」という直売所や、温泉、無料の足湯もある。お土産、野沢菜、ジャガイモやトマトなどが安かったので購入。足湯にもつかった。ぬるめの温泉で、出たあとも、それによって身体が熱く感じられるということがなかった。暑いのはあくまで夏のせいだった。とはいっても、足元がしばらくぽかぽかしていたけれど。
 次の目的地は長門牧場だったが、そこに行く道すがら、白樺湖を通ったので、せっかくだから湖をすこしでもながめたいと、無料の駐車場に車を止めた。一周することはなかったが、湖畔を感じられてよかった。湖水は意外なぐらい澄んでいた。月曜だというのに賑わっている。ああ、夏休みに入っているのだった。
 このあたりはあちこちに牧場がある。白樺湖から諏訪白樺湖小諸線という道を入って、長門牧場へ。ここは昼食を食べるということもあって寄った。牛が草を食んでいる。羊や馬もいた。ちょうどお昼時ということもあってか、比較的レストランは混んでいて、食べようと思っていたものが売り切れになっていた。選択肢がカレーライスしか残っていなかったので、牧場の牛乳と一緒に注文する。ビーフカレーはサラサラとしていて、意外と美味しかった。そして牛乳。濃厚で、ほのかに甘い。家でいつも飲んでいる牛乳はいったい何だったのか。外でアイスクリームも食べた。こちらも濃くてクリーミー。ひさしぶりにおいしいアイスを頂いた。
 売店で、チーズなどを買って、帰路へ。ビーナスラインという、風光明媚な道を通って、諏訪インターへ向かう。標高がさらに上がってゆく。1700メートルまでになったときは驚いた。起伏があるが、辺りが木々などで遮られることの少ない、青い草原、高原の風景というのが珍しかった。今まで海などにばかり目がいっていたから、こんな草たちの、台地の拡がりに気づかなかったのだ。車山高原、霧ヶ峰。途中何カ所か展望台があったので、ほんの少しだけ、車を降りてあたりを見渡した。八ヶ岳の裾野のむこうに小さな富士が見える。そして、「標高1660m 旅の駅 霧ヶ峰ビーナス」というお土産屋さんがあり、駐車場もひろかったので、また車を停めてもらい、景色をながめた。これが最後の観光だ。台地と空が近いような気がした。深呼吸するように景を吸い込む。
 中央自動車道に乗るために諏訪のほうへ下ってゆく。車窓から諏訪湖が見えた。前回来たところだったから、車窓からでも水を感じることができてよかった。だいぶ標高は下がっている。それでもまだ900メートルぐらいだったが。諏訪で高速に乗って、しばらくは順調だったが、例の談合坂あたりで渋滞した。やっぱりニュースなどで聞く場所なのだなと苦笑する。月曜、平日だから空いているかと思ったが、平日の夕方は仕事などでかえって混むのかもしれない。
 カーナビの最初の予定では午後6時前に家に着く予定だったが、着いたのは8時ぐらいだった。早朝バイトに翌日から行かないとだったので、少々身体がしんどい。旅の余韻を味わう間もなく、あたふたと眠りのための準備をする。明日起きられるだろうか。
 翌日は、意外と普段通りに起きることができ、さして疲れてもいなかったので、驚いた。温泉のおかげかもしれない。翌日の夢のなかで、黒耀石の夢を見た。かけらたちが集まって、太陽に照らされて、きらきら耀いている。比較的大きな黒耀石をノミと槌のようなもので、石片にしている。こんなふうにやれば良かったんだ。ああ、夜の星のかけらだから、黒いのか。
 黒耀の水で汲んできた水がおいしい。ついいつもより多めに飲んでしまうので、思ったよりも早くなくなってしまう。もう少し持って帰ってくれば良かったとも思うが、この名残惜しいぐらいのほうがいいのかもしれない。
 それと牛乳。長門牧場の牛乳は家で飲むには、少々値が張ったので、あのあたりの道の駅かお土産屋さんで見かけた八ヶ岳の牛乳が、こちらのスーパーでも売られていたので、買って飲んだ。いつも飲んでいるものより、少し高い程度。牧場の牛乳のほうが濃いのは当然だが、普段飲んでいるものより美味しい。たぶんもう前のものには戻れない。こんなふうに少しずつ、旅が日常に変化をもたらすこともあるのだろう。
 黒耀石は、黒いのに、光にかざすと透けてみえる。闇と明るさが共存している。

(この項おわり。ありがとうございました)




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