沖人さんの日記 | ニコッとタウン

沖人

先週、出張で京都に行くことになり、部下が飛行機を手配した。日曜日に出張をしなければいけないが、部下がとったのは、夕方の6時に新千歳空港を出発する便である。伊丹に降り、バスで京都に着いたら真っ暗である。

ホタルにチェックインして、夕飯を食べに外にでたが、どの店もオーダーストップ間近で、入店を断られる。開いていたのは、京都駅前にあるスカイラウンジのイタリアン。

薄暗い店内のカウンター席では、いい雰囲気のカップルが、ライトアップされた京都タワーを見下ろしながらワイングラスを傾けている。正しいこの店の使い方であろう。おっさん二人組は、隅っこの方に案内されて、カシスオレンジとパスタを注文する。ナポリであれば、ぴったりであるが、ここは京都である。

午前中の打ち合わせが終わり、先方と一緒に幕の内弁当を食べる。天ぷら、お造り、煮物など、全国共通の素材である。せっかく、京都に来たのに、京都らしいものは、ホテルの朝食バイキングで食べた湯葉だけである。

しかし、ちっとも美味しいと思わなかった。味のしないたんぱく質の膜である。しかし、奈良時代から伝わる湯葉は、高たんぱく低カロリーの健康食として、女性に人気である。しかし、おっさんは、断言する。低カロリーに旨い物なし！

ちなみに、自分で掬う湯葉セットが出てきたら、最初は、「あなたからどうぞ～」と譲ることをお勧めする。最初は、泡や不純物が混じり、すくいにくい。二枚目が、最も美しく美味しい湯葉になる。それからは、だんだん、黄色くなり、味も落ちていく。

幕の内弁当を食べ終わり、部下に飛行機の時間を聞くと、夕方4時に伊丹発である。ダッシュで向かわないといけない。かくして、京都出張は、蓬莱の豚まんを買いましたとしか、二コタで報告することができなかった。今度から、出張は一人で行くことにしよう。

この金曜日に、札幌にいる大学時代の同級生4人と居酒屋で飲んだ。会社は違うが、みな、同じような業界に勤めている。主賓は、この夏に、本店から島流しにあったＫ君である。とっても親近感を覚える。

女性と違い、本質を理解しているおっさん達は、から揚げ、ポテトフライ、焼き鳥と高カロリーの品々を次々と注文する。唯一の野菜は、枝豆である。学生時代に、一緒に遊んだこともなく、たいして仲がいいわけではないが、気楽な飲み会なので、カポカポ、カシスオレンジを飲む。

酒を飲めない体質なので、一、二杯が限界なのだが、5杯くらい飲んでしまった。飲み会が終わり、地下鉄を待っていると、目の前が真っ暗になり、ふらつき後ろの人にぶつかってしまった。

すいません、すいませんと言って、しゃがみ込む。親切な大学生二人組に大丈夫ですかと言われ、大丈夫ですと答えても、青年に信用してもらえない。駅員がやってきて、駅員室で休みますかと聞かれたが、大丈夫ですと、その場にしゃがみ続けていた。

完璧にダメなおっさんである。数分後、意識が戻り立ち上がったら、また、ふらふらする。なんとか電車に乗り込んだが、胃がむかむかしてきた。まずい。次の駅で降りる。

トイレに駆け込もうとするが、トイレが見当たらない。改札を出て、地上に向かう階段で、第一波がやってくる。第一波は、決死の覚悟で抑え込んだが、地上に出たあと第二波がやってきた。

地震の第一波のＰ波は、速度は速いが揺れは小さな縦揺れである。第二波のS波は、横揺れで振幅が大きく破壊力がある。手の平で口をきつく抑えていたが、衝撃波に耐えきれない。

少し噴き出してしまったが、不織布のマスクが、しっかりと抑え込んでくれて、一滴ももらすことがなかった。おそらく、二枚目の膜で作ったマスクであったのだろう。

ティッシュで顔を拭き袋に詰め、替えのマスクをつけて空を見上げると、月がうっすらと見える。

『月見れば　ちぢに物こそ　悲しけれ　わが身ひとつの　秋にはあらねど』

平安時代初期の大江千里の歌であるが、大江氏の末裔に、先週の「鎌倉殿の十三人」で政子といい雰囲気だった大江広本がいる。さあ、先週のことは忘れて、今夜の鎌倉殿を楽しみにしよう。