Nicotto Town



栗仕事

今年も栗畑をお持ちの方から水曜日に「栗がとれたよ」とご連絡いただいたので、3キロ買ってきた。

会社は木曜日定休なので、どっぷり栗仕事ができる。
この時期に栗の渋皮煮を作ることを、もう20年くらい続けていると思う。
最盛期は1回2キロずつ、5回くらい作っていたが、今年は3キロ買って、これ1度で終わりにする。
以前は仲人さんや親せきに届けたり、運動会に持っていったり、子供のサッカーに差し入れたりするのですぐになくなったが、子供たちは大きくなったし、送る親戚もいなくなった。
自宅と実家の分だけあれば十分なのだが、栗仕事をするのは好きだ。
会社に持っていけば、休憩の時に誰かが食べてくれるだろう。

なぜ好きかというと、おいしいものだけを作るのはすごく難しいからだ。
渋皮煮は、本来渋いはずの渋皮から渋みを抜き、だけど栗の風味を残したまま過不足なくじっくり火を通し、最後に甘みを加えるというもの。
おろし大根で簡単に渋が取れる、とか、簡単な作り方、なんてのも一通り試してみたが、やはり正攻法で作ったものが一番おいしいと思う。

栗ってすぐに虫食いしたり痛んだりするのに、固い鬼皮と繊細な渋皮に包まれているから、中が見えない。
だから、せっかく丁寧に皮をむいても、身がぶよぶよしていたり変なにおいがしていたらダメ。
重層水に一晩漬けてから沸騰させて、渋皮についているモロモロしたものを取るのだが、重曹がきちんと溶けていないと、一部の栗の渋皮がドロッと溶けて、渋皮煮には使えなくなる。
重曹の量が多ければ簡単に渋は抜けるけれど、味が残ってしまう。
重曹の量が少ないと、うまく渋が抜けない。
ゆですぎると渋皮に傷がつきやすくなる。
外のモロモロを取る時、一部が黒く残っているときは、その部分だけ傷んでいることが多い。
思い切って皮をむくとわかる。
この時点で皮を剥き、悪くなったところを削れば、甘露煮や栗ご飯に転用可能。
今回、20個くらいが栗ご飯に入った。

渋皮煮に適していない栗が多いこともある。
今回、台風の去った後に栗を呼ばれたので、渋皮が厚くなってしまったものも多かった。
栗を譲ってくださるところはかなり丁寧に選別してくださるので、未熟だったり虫食いだったりするものは全く入っていないのだが、落ちてから時間が経つと渋皮は厚く、複雑な形になっていく。
身の中に食い込んだ部分の渋はなかなか取れないので、何度も水替えをせねばならないし、そのうちに簡単に向けた栗から風味が抜けてしまう。
それが嫌で、渋皮が分厚いものだけを何度も水にさらしていたが、皮が厚いと舌触りもよくないので、ここ数年はそういったものは栗ご飯や甘露煮にして、つるりととれたものだけを渋皮煮にしていた。
そこまで手をかけても、砂糖を入れるといくつかはしぼんでしまう。
これは多分、完熟しないうちに風で落ちてしまった実だ。
内部が充実する前に木から落ちてしまったせいで、砂糖の重圧に負けてしまうのだと思う。
渋皮が真っ白で初々しい実に起こることが多い。

今年は、渋がつるりと剥けなかった2番手は、マロングラッセにすることにした。
マロングラッセは、硬めのちょっと古い栗が合うと書いてあるのを思い出したからだ。
本来は、和栗はマロングラッセには向かないらしい。
西洋や中国の栗は、もっと渋皮がパカっと剥けるのだという。
そういえば、天津甘栗は、渋皮なんて簡単に剥けるし、表面は真ん丸だ。
起伏に富んだ和栗を剥くのは面倒だけれど、今回はそうたくさんな訳ではなし、と一つずつ剥いていく。
そのあと、煮た時の衝撃で栗がバラバラにならないようにガーゼで縛るという工程が面倒で仕方なかったが、今回、ガーゼに4つずつ入れてキャンディ縛りで間隔をあけ、端同士を縛る、という方法をネットで見つけたので、順守してみる。
なるほど、ガーゼは横が30センチだから、ちょうどいい。
ゆで汁を揺らさないよう弱火で90分ほど煮てから煮汁を50度の糖液にして一晩漬け、朝晩に少しずつ糖度を上げていく。
レシピサイトでは1日1回糖度を上げていたが、私は朝晩2回上げ、今朝めでたく砂糖の結晶が出てきたので、コンロの火をつけ、ゆっくり温めていく。
温まったくりをガーゼから取り出し、一つずつ並べていくのだが、1/3くらいがバラバラになった。
実を言えば、ガーゼに包む前から2つに割れたものもそれなりにあったので仕方ない。
栗の皮を剥くのは、本当に難しいのだ。

それを日光に当てて、乾かしていくと、表面に糖衣が固まる。
このしゃりっとした部分を出すために苦労したのだ。
途中でラム酒を入れているので、かなり強く洋酒の風味がある。
渋皮煮に比べると明らかに甘いし、繊細な栗の風味を楽しむなら圧倒的に渋皮煮に軍配が上がる。
だけど、この口の中でどこまでも解けていく味わいも、捨てがたい。

3キロの栗は、渋皮煮完成形730グラム、皮に傷がついてしまったもの300グラム、マロングラッセで形を保ったもの400グラム、崩れたもの380グラムになった。
このほかに栗ご飯になったものもあるのだから、歩留まり半分以上じゃないか、と思われるかもしれないが、砂糖の重量も加わっている。
(砂糖は2キロくらい使用。渋皮煮のシロップは少し渋みがあるので煮ものくらいしか使えないが、マロングラッセのシロップはラム酒の薫り高くトロリとしているので、コーヒー・紅茶の供に良さそうだ)
手間と時間をたっぷりかけているが、特にマロングラッセは初めて満足できる出来になったので嬉しい。
ちょうど来た(というか、今日来ることが分かっていたから日に二度も糖度を上げていたのだが)長男とその婚約者におすそ分けもできたので、今年の栗仕事はこれで終了とする。

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2022/09/26 21:13
秋コアラさん
よく梅干しや梅酒を作るのを「梅仕事」というので、いつの間にかうちでは栗仕事、と呼んでいました。
生栗は、家に帰ったらバケツかボウルに入れて、ひたひたになるまで熱湯を加え、触れる程度に冷めたところで剥き始めると、皮むきしやすいですよ。
もしくは先に5分くらいゆでてしまった栗の皮をむくという方法もあります。
栗がボロボロになりやすいのが難点ですが…
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2022/09/26 01:29
深夜に失礼します^^(睡眠のリズムが崩れました)。

栗仕事、初めて知った言葉ですが、glycogenさんが「精錬」された渋皮煮やマロングラッセのように、味わいのある、趣深い言葉ですね^^。

スーパーの店頭に生栗が並んだら、せめて栗ご飯を1回くらい作りたいのですが、鬼皮(?)を剥くと考えただけで・・・^^;



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