Nicotto Town


しだれ桜❧


刻の流れー5

昼休み男たちと少年が食堂で昼食を取っていると、石橋が様子をのぞきに来た。
まず興津が石橋の気配を察して、顔を上げた。それに釣られるように、続いて梶と原田が入り口に目をやる。
部屋に入ってきた石橋は、少年ひとりがパンにかじりついているのを見ると、笑った目を興津に向けた。興津が肩をすくめる。それに納得したように石橋は興津の隣の椅子に腰を降ろした。
「お前は手加減してないというが、こんなに飯を食ってるぞ。」
ニヤニヤしながら小声で問いただすのだった。しごき倒すと胃が食べ物を受け付けない。その本人がパンをパクついてるのだ。
「タフなガキなんでね、びっくりしてるんですよ。なぁ・・・」
興津は同意を求めて同僚たちを見まわしたが、梶は露骨に面白く無い顔をして紅茶を飲んでいる。原田はと言うと、梶の反応に目に涙をためて笑いをこらえている。
「ははっ そうか。」
ボスがこの男には珍しく声を出して笑った。要はまだ腹がへっているのか大人たちの会話をよそに次のパンに手を伸ばした。
「もうそのくらいにしておけ。腹をこわす。」
興津がその手を押さえた。
石橋は、元気そうな要に満足した様子で、女を一人呼び、要と買い物に出かけさせた。

「どんな具合だ。つかえそうか?」
要が女と部屋を出て行くのを待って、石橋が興津に聞く。
「軍人だったじいさんにかなり鍛えられてきたようですね。大いに見込みがあります。」
朝食時の要に対する否定的な言動からは打って変わった興津の態度に梶と原田は少なからず驚いた。
「うまくいけばすぐにでも俺の補佐になれるかも知れませんが・・・」
と興津が続けると、
「ほお、ネズミ小僧には随分簡単になれるもんなんだな。」
と梶が皮肉を挟む。興津はそれを無視して、
「折角だから他にも仕込んで見てはどうかな?」
と、原田の顔を見た。
「おれが?」とばかりに自分を指差した原田は
「子守は嫌だなあ。」
と口ではぼやいたが、まんざらでもない顔をした。その目をしばらく宙にあそばせていたかと思うと、石橋を向き直り、
「ボス、要のためにバイクと装具一式が欲しいですね。、用意してください。」
と頼んだ。6歳児にはそれなりのバイクがある。オートマなのだ。これで山野を走れる。
「おいおい、お遊びじゃないんだぞ・・・」
すかさず異議を申し立てようとする梶を石橋は片手で制した。
「いいだろう。午後はお前に任そう。」
ボスの言葉に、原田は満面の笑みで応えた。

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2022/11/14 21:27
お~なんだかヒントになりそうな言葉が出て来たかな?
バイクを操る要くんカッコ良さそうです。
想像してみたらどんな外見をしているのかこれから描写があるのかな。
楽しみです~♬
たくさんしごかれてもモリモリ食べられるってことは体力持久力がありそうですね。
私にも少し分けて欲しいな~(*^^*)




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