Nicotto Town


しだれ桜❧


刻の流れー6

バイクが届くまでに原田は一度タンデムでツーリングに出かけることにした。
「おれに、しっかりしがみついとけ。」
バイクに跨りながら要にそう言うと、原田はサイドスタンドをカチャンと跳ね上げた。要は後ろのステップに足を載せてシートにまたがり原田の腰に両手をまわしてしがみついた。要は初めてのバイクを味わう事になったのだ。
メインスイッチをオンにしてセルを回す。キシュシュッ オン オ~~ン エンジンの音がガレージに響き、オイルの匂いがした。カシャッ チェンジがいれられる。
「いくぞ」
バイクが走り出し公道へと出た。しばらくはゆっくりと流していたが、町外れまで来ると要は一瞬のけぞり手を離しそうになった。バイクは瞬く間に時速100キロまで加速したのだ。びっくりして要は必死に原田にしがみつく。要の両側の景色が後ろに飛んでいく、車では感じることのできない加速感だ。
やがてバイクが山道のコーナーを攻め始めた。曲がる時に原田はスピードを落とさず突っ込んで、斬り込んでいく。原田の体重移動が要の腕に伝わってくる。要は最初反射的に反対側に逃げようとした。すると、原田がコーナーを抜けたところで、左手を後ろに回して要を自分の体に押し付けた。「一緒に動け。」それが何を意味するかを要は感じ取った。
始めは少なからず怖がっていた要だったがそれからはコーナーを抜けるのが楽しくなった。地面が左膝スレスレまで迫ってくる。どうやら原田の思惑通り、要はバイクを気に入ったようだった。

数日後バイクが届くと要は目を輝かせてそれに駆け寄った。いつまでも飽きもせずボディーを撫で回したり、また少し離れては全体を眺めたりする。
「やはり男の子だな、俺の子供の時と一緒だ。」
原田はひとり頷き
「そのうちカートにも乗せてやる。」
と面白そうに、餌をちらつかせたりするのだった。

自分のバイクを持つと言う事は、整備の知識も必要になるということだ。原田は、バイクや車の構造、仕組みをガレージで教え始めた。もともと機械いじりが好きな要は原田の説明を熱心に聞く。いつもエンジンをバラしては組み立ている原田の手元を瞬きもせずに覗き込んでくるのだ。
「この赤いタンクは何?」
要はいろんな事をよく質問をした。子どもの質問は素朴だがよく本質を突いている。その上、興味のあることには疑問も際限がない。
「ああ、それはガソリンだ。」
原田は、ガレージの隅のポリタンクを横目で見た。
「ガソリンは火をつけるとどうなるか知ってるか?」
要は見たことのある映画のシーンを思い出して、
「ドカーンと爆発する。」
と答えた。
原田はにっと笑った。
「みんなそう思っているけど、そんな事はないんだ。ガソリンはある一定の比率で空気と混ぜないと爆発しない。」
ボンネットを上げて要に手招きする。エンジンをあちこち指差しながら、説明を始めた。
「上手く混ぜると爆発する。キャブレターで上手く混ぜるんだな。そうしたらシリンダーの中で小さな爆発を繰り返してピストンが上下に動く。それを回転運動にするのがコンロッドだ。」
 原田は今度はピストンとコンロッドを棚から持ってきて動きを要に見せる。
要は教えられるとすぐにその名前を覚えてしまう。そして原田を次から次へと質問攻めするのだ。そして原田の方も要の質問に飽きもせず分かりやすく説明するのだった。

アバター
2022/11/18 00:35
要君はバイクに興味を持ったのかな?
私も昔白バイ隊員になりたいと一時期思っていたことが。
小さい頃ですけどね。バイクに憧れがありました。
今は車もバイクも乗らない大人になりましたけど、その分自力で移動するから
健康にいいからいいかな(*^^*)
要君沢山質問する子なんですね~。これまた私もそうだったりして(´艸`*)
家族が段々呆れちゃうくらい質問してたらしいです。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.