Nicotto Town


しだれ桜❧


刻の流れー42

犬飼はひろみの言うように、とにかくトリニティーへ寄ってみることにした。新宿にある雑居ビルの最上階にその店はある。入り口からすぐに5人乗りの小さなエレベーターで5階まで上がると、申し訳程度の広さのエレベータホールから左側に短い廊下と3つのドアがあり、それぞれが小さな飲み屋である。その一つが、佐竹の店、トリニティーだった。犬飼がエレベーターから5階のホールに出てみると、各店の前には仕込み前に酒屋から配達されたビールのケースが山と積まれている。それを躱しながらトリニティーのドアを引っ張ってみると開店にはまだまだ時間があるのに、鍵は掛かっていなかった。カラ~ンとカウベルが鳴って奥から
「まだ準備中だよ」
と、声がし、佐竹が生ビールの樽をもって出てきた。サーバーにセットしようとしていたのだ。
「なんだ、犬飼さんか ビックリさせないでくれよ。」
犬飼を見る佐竹の目が一瞬うろたえた。
「なんだ?」
「あ・・・情報屋が死んだって聞いたからさ・・・」
佐竹の目があらぬほうへ泳ぐ。
「ふうん、もう広まってるんだな」
「あ、ああ、そうだよ。犬飼さんも気とつけないと危ないよ。」
その言い方に犬飼の守護天使が囁いた。
『気をつけろ・・・』
カウンターに腰を下ろしながら、犬飼は佐竹の横顔を覗き込んだ。
「そうか、じゃあ気をつけるとしよう。その前にビールをくれないか?」
ポケットから500円玉を取り出してカウンターに置く。そのころ流行りだしたワンコインの店なのだ。佐竹は迷惑そうな顔をした。明らかに犬飼の来店に困惑している。それでも仕方なくおしぼりを出して客の注文を受けた。樽の交換を終わって最初のエア抜きの泡をジョッキにうけながら、
「これからどうするんですか?」
と、探るように犬飼を見る。口調が急に丁寧になっている。
「さあそれだ、どうしたらいいかな?」
犬飼はまっすぐ睨み返した。
「なんで私に聞くんです?」
佐竹の目が尖った。
「ふん、どうやら此処みたいだな。」
ほら見たことかと犬飼はカウンターに両手を着いて乗り出した。
佐竹の目が咄嗟にアイスピックを探す。犬飼はカウンターを乗り越えて佐竹の胸ぐらを掴んでパンチを打ち込んだ。佐竹の手からジョッキが飛び、床で粉々になった。
「すまねえな、俺はそんなにお人好しじゃないぜ。」
尻餅をついた佐竹が顎を押さえて唸っている。切れた唇が、血で赤く染まっていた。
「手荒なことはしたくない。喋ってくれたらこのまま帰る。」
顎に手をやったまま、バーテンは目を下に落とした。

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2023/02/28 01:36
ころねちゃのは あの観察眼と思考パターンがすごいから真似できへんよ
それに主人公はどんどん勝手に進んじゃうしww
そこが面白けどね(*´艸`)
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2023/02/28 01:17
そんな(*ノωノ)
私のは普通のより書いてるうちにヘンテコな結末になりがちなんですよ。
今書いているミステリっぽいお話も、どうも本格派には程遠いおもしろ話になりそうです。
読んでもらっている人たちに、がっかりされないといいなと思ってるんですけど。
しーちゃんのお話は勢いがあってキャラクターも生き生きしていてエネルギーがある感じがします。
私は書きながら出てくる感じだから、最後まで読んでもらえるように、
テンポもよくできたらいいな~。
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2023/02/26 22:43
ころねちゃみたいに 読み手をうならせるのは難しいから
テンポだけ^^
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2023/02/26 21:56
ビール飲みたくなっちゃう~。
しーちゃん描写がやっぱり上手ですね。
やっぱりすごくテンポがいいから、読んでいるとドラマを観ているみたいに
イメージが次々出て来る感じです。




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