Nicotto Town



くまくま絵日記【3】朝、ビリオン・シニュフォード

ここは「くまくまベーグル&ドーナツ」。3匹のクマが経営するベーグル&ドーナツのお店だ。

マリアとトリオンがゴールドピーマンのことをあれこれ話していたら「トリオン兄貴!」と声を掛けられた!
「あっ!やっぱり!トリオン兄貴だ!」
軽装の甲冑を着た女の子がトレイいっぱいに乗ったドーナツを持ちながら駆け寄ってきた。
「ビリオン。お前、そのドーナツ、全部食う気か?」
トリオンは呆れたように言い返す。ビリオンはトリオン隊長の妹だ。
「腹が減っては紛争根絶できないでしょ?」
「どこのソレスタルビーイングだ…」一応ツッコむトリオン兄貴。
「ビリオンさん、お久しぶりですぅ~」
「マリアさん!口の周りにいっぱいついてるよ!?」

「そういえば、フツツカ魔法学院は、もうそろそろ学年末テストだったな…」
「そうなんだよ~!ボクがいる聖騎士(パラディン)クラスは、
王国騎士団に入れるかどうかの瀬戸際だから、みんな必死だよ!」
「ビリオンさんは、どうするんですかぁ?」
「ボク?う~ん…やっぱり、兄貴の所へ行くよ!」
「ビリオン。お前、王国騎士団のカノンとソナタにスカウトされてたんじゃなかったか?」
「うん。カノン先輩やソナタ先輩には悪いけど、メンドーサ隊行きを変える気はないよ」
「ビリオン、もっとよく考えろ。王国騎士団の方が収入も安定してるし、何より名誉なことじゃないか」
「ところで、兄貴!近々、実家の「ナナイロ村」に帰るんだけど、兄貴も一緒にどう?」
ビリオンは露骨に話題をそらした。
「ナナイロ村?行ってみたいですぅ~!」マリアが興味を示した。
「じゃ、決まり!マリアさんが行くなら兄貴も行かなきゃだよね!」
「ビリオン~~!?」トリオンは折れざるをえない。
「あ、そうそう!流れの吟遊詩人「ブラン・ヨーク」さんがもうすぐ帰ってくるよ!」
「流れ、じゃなくて「たらし」の間違いじゃないのか?あんのセイレーンの笛吹き男!」
「ハーメルンのバイオリン弾き?」小首をかしげてボケるマリア。
「違ーう!」きっちりツッコむトリオン。

「ブラン・ヨークさん?ああ、フルートを吹いてた優男さん。
魅惑の笛の音で国中の女の人を虜にして、みんなを連れてどこへ行く気だったんでしょうかぁ?」
「その「女の人」にお前も含まれてたんだぞ?…というか、マリア!お前が奴の本命だったんだぞ!?
忘れたのか!?お前だって危なかったんだぞ!?」

マリアは、その時のことを思い返す。
「そんなやり方では、本当の愛は得られないですぅ!」
笛の音で虜にして、唇を奪おうとした寸前に言われたマリアの言葉にブランはハッとする。キスは未遂に終わる。
「ごめんね」と言いながらブランは、マリアの頭を優しく撫でた。
そして、マリアの目にうっすら浮かんでいる涙をキスで拭った。
解呪の音色を吹き、虜になった女性たちを元に戻した。

「そういえば…そうでしたね…」思い出して赤面するマリア。
「ったく、ウスラボケ~っとしやがって!」
「兄貴!そんな乱暴な言い方…」
「最近、富に「ウスラボケ~っと」の言い方が柔らかくなってきましたよねぇ~」
そう言って穏やかに微笑むマリアをどつきたくてもどつけないトリオン。
「あ!カノン先輩とソナタ先輩が呼んでるからもう行くね!じゃあね!兄貴!マリアさん!」
ビリオンは、いつの間にかトレイいっぱいにあったドーナツを平らげていた。
「ビリオンさんは、いつも忙しそうですねぇ~」
「ああ、そうだな。それにしても…「カノン・シードル」と「ソナタ・シードル」。双子の騎士団長か…」
妹のビリオンと話している双子の聖騎士の男と見やりながら、トリオン兄貴は、ぽつりと呟いた。

ーつづくー




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