Nicotto Town



ナナイロ村に里帰り【1】ゴールドピーマン地獄

フツツカ魔法学院の学年末テストが終わった。結果待ちの間、授業や講義はなく、1週間お休み。

帰郷するなり寮で過ごすなり生徒の自由である。
聖騎士(パラディン)クラスのビリオンは、トリオンとマリアと一緒に実家の「ナナイロ村」に里帰りしていた。

「わぁっ、虹の架け橋ですぅ~」青空に掛かる大きな虹を見てはしゃぐマリア。
「ナナイロ村は、いつでも虹が見られるんだよ」ビリオンが嬉しそうに説明する。
「この虹を見ると、帰ってきたって実感するぜ」と、トリオン兄貴。
「それにしてもよぉ~、ビリオン。そんなにたくさんのゴールドピーマン、どうする気だよ?」
ビリオンは、自分の荷物の他に、
ゴールドピーマンとゴールドピーマンドリンクがぎっしり詰まった大きな木箱を二つも抱えていた。
「金の色素って結構貴重でさ、ゴールドピーマンなら簡単に金色が取れるし、安上がりだからってお父さんが…」
「親父に頼まれてたって訳か…」と、トリオン。
「持っていってくれてむしろ大助かりですぅ~。何せ今年はゴールドピーマンの当たり年ですから…」

一方その頃、メンドーサ隊の事務所では…。
チュニスの実家から届いた大量のゴールドピーマンが木箱単位で食堂や玄関を埋め尽くすほどあり、
その中でゴールドピーマンドリンク製作に勤しむ4人の女の子たちの姿があった。
「ビリオンはんが少し持っててくれたんはええけど…これじゃあ、焼け石に水や~ん!」
「セリカ、愚痴ってる暇があるなら手を動かしなさいよ」ツッコミつつ、黙々と作業するリコシェ。
「こっちのラベル張り、終わったよ」ティルトは、ゴールドピーマンドリンクを空箱に敷き詰めていく。
「みなさん~、今日の夕食は~、
肉詰めゴールドピーマンに~、ゴールドピーマン入り酢豚に~、ゴールドピーマンのチンジャオロースだよ~」
チュニスが慣れた手つきでゴールドピーマンを絞りながら、痛恨の一言。
「もうイヤや~!トリオンはん、マリアはん!早よ帰ってきて~~!!」
ゴールドピーマン地獄を前に、セリカはとうとう泣き言を言い始めた。
「え?マリアは今、ここにいないのかい?
へぇ…トリオン・ビリオン兄妹の里帰りの付き添いでナナイロ村に行っているのか…」
水牛のスイとギューと話をしながら、食堂へ入ってきたのは…。
「ちょっと!スイ!ギュー!今忙しいんだから、お客さんの相手をしている暇はないって…
あ、あなたは…『ブラン・ヨーク』!?」
「やぁ、しばらくぶりだね。リコシェ・スピッツさん。それにメンドーサ隊の淑女(レディ)たち」
優しいハスキーボイスで挨拶した優男は、流れの吟遊詩人「ブラン・ヨーク」であった!

ーつづくー




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