Nicotto Town


しだれ桜❧


微かな南風ー19

「じゃあ出発しましょう」

すずらんが声をかけた

タイヤが1mくらいあるトラック 運転席はその上にあるから運転席は見上げる位置にある
運転席も頑丈な太いパイプが 内側でロールバーとして組み込まれている
バケットシートに 4点シートベルト 3列並ぶと狭い感じがする

真ん中のシートにすずらんが座ると右側にアルフが乗ってきた
「すずらん様 ドライバーズシートはそちらですが」

すずらんは微笑んで
「運転はスティーブにお願いすることにします」

「おや あんなに楽しみにしていたのに 如何いたしましたか?」

「さっき話したように 目が増えたのね」
「そのぅ 目がとおっしゃいますが・・・」
さすがにアルフもわからない
「そうね 野球中継だとカメラがいっぱいあるでしょ」
「そうですね」
「その7台くらいのカメラをスイッチャーで切り替えてるのね 私の目も今4つくらいあるの」
「さっきアインが言っていた 妖精たちの目がそれぞれのカメラに当たるわけですね」
「そう ただ切り替えのきっかけがまだわからないの」
「なるほど スイッチでの切り替えではないので そのあたりが 慣れるまで問題ですね」
そこへスティーブが乗り込んできた
すずらんがスティーブに
「運転はしばらく任せるわね 説明はあとでしますから 私の言うとおりに
コースを取ってほしいの」

スティーブはちょっと顎が落ちたような顔をしたが
「わかりました」
とだけ言ってドライバーズシートに座りシートベルトをした

すずらんもアルフもそれに倣った

スティーブがエンジンをかけると アルフがモービルトランシーバーのスイッチを入れ ヘッドセットをテストをする
「こちらすずらん車 感あれば応答せよ」
「こちら2号車 感あり」
「こちら3号車 感あり 異常なし」

すぐに応答があった
「では これより出発しますので すずらん車のトレースをお願いします」
「ラジャー」
「ラジャー」
アルフは スティーブに右手を振ってgoサインを出して出発を促した
スティーブは クラッチをつなぐとトラックはゆっくりと走り出した

「このまま しばらくまっすぐね」

すずらんは目をつぶったままそう指図をした
まだこの辺りは 比較的固い砂で平らなのだ
といっても小さな起伏があるので 運転席はお祭り状態
体がシートから右に左に前後に上下 ボンボン跳ねる ジュースなど持っていたらそこらじゅうがジュースだらけになるのは想像に難くない






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