小説「こころ」 前編
- カテゴリ：自作小説
- 2023/04/03 00:52:11
コの字型の校舎に囲まれた中庭に、山桜の老木が植わっている。日当たりのよい場所を好む山桜は、校舎で日差しを遮られながらも遅咲きの花を咲かせている。窓側の席のKは、机に片肘をつき、風に吹かれ、時折舞い落ちる桜の花びらを眺めていた。
級友同士の話し声や足音が響く昼休みの教室の中で、端正な顔立ちのKが桜を眺める姿は一枚の絵のようであり、静寂に包まれた別の空間のように感じられた。そして、その静寂を破る、Kに声をかけようとする級友はいなかった。
Kは、顔立ちがいいだけでなく、成績もクラスで一番で、クラスのリーダーや人気者になる資質があったが、極端に寡黙だった。声をかけられても返事をせず、表情すら変えない姿は、相手に、無関心あるいは、拒絶されている印象を与え、しだいにKに声をかける級友はいなくなった。
元来、野山の動物たちも、弱い者たちは群れるが、強い者たちは群れたがらない。Kは、孤立していることも苦にならず、クラスメートのLineグループにも、ただ一人、参加していなかった。そのKが唯一心を許す親友が私だったが、私はKを裏切ることになった。
Kと友人になるきっかけは、去年の夏休みに新宿のファッションビルで偶然に出会ったことであった。新宿三丁目に近いマルイアネックスの5階に駿河屋が出店している。駿河屋は、室町時代から続く練り羊羹発祥の和菓子屋として有名だが、新宿の駿河屋は、ゲーム、アニメ雑貨、プラモデルなどを扱っているおもちゃ屋である。
Kは、魔法少女めぐみん猫みみVer.というフィギュアを手にした。Kと言葉を交わしたことのない私は、気づかないふりをして立ち去ろうとしたが、Kは、私を呼び止めた。
「君が手にしているのは、めぐみんの体操服Ver.かね。随分、マニアックな志向だね。嫌いじゃないけど。」
「俺のじゃないんだ。今日発売日だから、兄に買うのを頼まれたんだ。」
「君のお兄さんは、どんな人なんだい。」
Kが他人に関心をいだくのは意外だった。私は、兄のことをKに話したくなった。兄は理工学系の大学に通い、家庭教師で稼いだバイト代を全てアニメ関連に注ぎ込んでいる。理想という言葉が示すとおり、理想の女性は想像の世界にのみ存在するというのが信念だ。
Kに、兄に会わせてくれないかと言われ、普段見せることのないKの姿に、少しばかりの動揺と私だけに見せるその姿が嬉しくなり快く承諾した。Kは、数日後に私の家を訪ねてきた。それから私の家に、時折、遊びに来るようになり、Kは、兄のことを「神」と呼び、兄の部屋を「聖地」と呼ぶようになった。
ガラス越しに桜を見るKは、いつもの達観したような無表情ではなく、苦悶に満ちていた。私は、Kに声をかけることができなかった。
Kほどではないが、私も人付き合いは苦手だった。表面的な付き合いはできるが、それ以上踏み込んだ人間関係になることはできない。自信のない自分のこころの中に、踏み込まれることが怖いのだろう。
Kは、放課後も苦悶の表情を浮かべたまま、窓越しに桜を見続けていた。私は、Kを残して帰ることができず、Kに貸そうと持ってきていた魔法少女めぐみんの第15巻を何度も読み返していた。
日が傾きはじめ、中庭が薄暗くなってきたとき、Kは立ち上がり私の方に向かってきた。
「君は、人を好きになったことがあるか。」
「俺、めぐみんもK君のことも好きだよ。はい、15巻持ってきたよ。」
Kは、漫画には視線を向けず、僕の目を見ながら言った。
「いや、そういう意味じゃない。現実世界の異性のことだ。例えば、彼女のアルトリコーダーをたまらなく吹きたくなるような気持ちだ。」
「ない。」
「そうか。ならいいんだ。」
Kは、漫画カバンに入れると、教室から出て行こうとした。私は、Kが遠くに行ってしまうような気がした。
授業中もKは、何も手につかないような感じで、窓の外を見続けていた。Kの成績はクラスで一番だったが、私は二番だった。ライバルと思ったことはなかったが、アニメを通じて親しくなってからは、Kは良き目標になっていた。僕は、Kを呼び止めた。
「どうしたんだよ。」
Kは、立ち止まり、こぶしを握り締め沈黙した。そして、Kは、私に一つの頼みごとを告げた。それが、私のKへの裏切りのはじまりになった。
なにが良くて、なにがダメ、思い込み、決めつけ、本当にそれが正しい心なのか、自分自身の軸は本当にこれで良いのか、考える日もあります。しかし、それらは自分自身の感情により一変してしまうから、人生は、なにがあるか分かりません。ひとつだけ言えるとすれば、自分自身に後悔のない選択なのかもしれません。
日記の題名から、いろいろな「こころ」について私の考えを書きました。本当に聞きたいこと、沖人さん、元気ですか？ニコタ辞めないでください。
自分ちの庭に来客（？）があるなんて何年ぶりだったろう
一応記念撮影しておきました
またお越しやす(/ω・＼)ﾁﾗｯ
庭で、キャンプさせていただきます
うちのお庭は人がほとんど来ないのでごゆっくりどうぞ(。-ω-)zzz. . .
ストーカーか寝落ちでしょう
ただいま我がお庭に沖人さんの抜け殻が放置されております(^o^;)
何か御用があったのかな？と思いましたが巡回中でしょうかね？
そっと見守っておきますね^_^
おやすみなさい～☆
一旦休んでしまうと、なかなか再開できないのは、ダイエットも執筆も同じような気がします。再開するには、プレッシャーが必要なのですが、読者はフィギアオタクに引いているのか、続きへの期待はなさそうです。そのため、作者は、安心してさぼっているところです。私は、一人にはしぼれないようで、綾瀬はるかファンでありながら、最近、シン・ウルトラマンを見たので、長澤まさみもいいなと思いつつあるところです。
今夜は、ハンバーグかトンカツか、お母さんが何を作ってくれるか考えていたんじゃないでしょうか。昨日、ハンバーグを作りましたが、焼きすぎて肉汁がなくなり、パサパサになってしまいました。ハンバーグもアルデンテが大事です。
サッカー部の遠藤君を ふと思い出しました
あの時 彼もK君のように 誰かのアルトリコーダーを噴きたかったのでしょうか？
彼は1週間後 学校を去ってしまいわからずじまいです
どこから、パンツの話が出てきたのか不思議ですが、きっと出てこないと思います。
ｍさん
何故か、保安検査場がフルオープンじゃないので、人出不足なのではないでしょうか。
どうです？あの千歳空港の混雑は？何とか改善の方向に向かってますか？
私がえらい目にあったのは新型コロナ禍の前、中国人があふれかえってた頃で
並ぶ場所を変えられたり・・・しまいに搭乗手続きが間に合わず離陸が遅れてました。
私が小学生の頃も、コの字型の校舎でした。
向き合う教室の窓から目が合うこともありドキドキなったこと思い出しました。
Kは、どんな頼みごとをしたのか、まさか兄のパンツを持ってきて～そんな分けないですよねw
裏切りのはじまり…沢山裏切ったのですね。
どんな裏切りがはじまるのか続きが気になります。
北海道は、梅も桜も桃も一緒に咲きます。きっと、チューリップも一緒に咲くでしょう。ひょっとしたら、ひまわりも一緒かもしれません。帯広や旭川には、六花の森など素敵なガーデンがあります。是非、花を愛でにきてください。
近所ではチューリップがきれいに咲いてます。
ゴールデンウイーク開催のチューリップフェア
今年はチューリップフェア開会式4月22日（一寸早いんじゃないかしら？）
今は寒い山奥に植木鉢置いたり、地植えのは黒い不織布かけたり・・・大変だとか
チューリップはゴールデンウイークあたりに咲きそうですか？
札幌の満開予想は、4月25日。ゴールデンウィーク粘って欲しいものです。ソメイヨシノは、五稜郭くらいまでなので、こちらは、エゾヤマザクラでしょうか
リンゴさん
急に方向を変えて、京都のお寺に向かったり、東と西に分かれて競っていたら、味方チームに向かっていったりすることでしょうか
続きが楽しみです＾＾
男性にとっての裏切りとはどんなことなのかな。
ソメイヨシノが葉桜になり、八重桜は満開です。
そちらは？
女子の椅子に座り、ウキウキしたことはありますが、リコーダーは、未体験です
涼華さん
そうです、兄ではありません。三人以上書き分けられないので、兄は登場しないと思います
私の兄？ かな、と思ったんですがｗ
＞現実世界の異性のことだ。
とあるので、違いますよねｗ
後編を楽しみに待ちます (^O^)/
沖人さんがそのアンケートに答えたのでしょう？
そろそろ書かないと、ただの大食いのおっさんだとバレてしまうので、追い込まれての執筆です。そのため、巨匠のパクリです。
ｍさん
ドキドキする展開になるか微妙です。これまで、ドキドキする展開の話を書いたことがありません。大抵、明後日方向に向かっていきます。
すずめちゃん
見分けるポイントは明白です。フィギュアの胸の大きさで判明すると思います。とても分かりやすい性格なのです。
wineさん
なんと、男性の13.7％が女子のリコーダーを舐めたことがあるとのアンケート結果があります。いったい、誰にアンケートをしたのだと思います。
たまちゃん
リアリティーを追求する作者は、Amazonで、猫耳バージョンと体操服バージョンがあることを確認しました。褒めてつかわすが、50点。
スク水 ver. もあれば、即完売ですよ。
私も人付き合いが苦手だから、理想とか妄想とか大好きです。
あ、そうだ、昨日、うどんを食べましたっ！ そばでなく！
でも讃岐うどんではありませんでした（汗）
この気持ちはわからんのう。
続きを楽しみに待ってますね。
「漱石ー母に愛されなかった子」三浦雅士著 岩波新書 を読んで間がないだけに
著者が小説で吐き出そうとしてるところを主題と捉えたい今のわたしです
よくある麗しい若者に近づく同級生の葛藤かなと思わせる件だけど
流石沖人さんの小説だけあって、２次元からの３次元に移行していくという
高度な葛藤になってますねー！
後半がどうなるか楽しみです。