Nicotto Town



学院大誘惑【4】ブラン、学院を去る。【終】

ここは、フツツカ魔法学院の学院長室。学院大誘惑事件後、ブラン・ヨークは、トルテ学院長に呼び出された。

「ブラン・ヨーク…なぜ、ここに呼ばれたか分かっていますね?」
「はい…」
「海魔女級魔笛「運命の風のフルート」に選ばれるほどの神童のあなたが、なぜ…」
「僕はただ…」
ブランは切なそうに顔を歪めて言葉を切った。
「マリアを探していただけなのに…」と言っても頭ごなしに否定されるのは目に見えている。
「荷物をまとめて今すぐ学院から出ていきなさい!
あと、海魔女級魔笛「運命の風のフルート」は、ここに置いていきなさい!
それが学院を去る時の規則です!」
「!!」
「運命の風のフルート」は、ブランから離れたくないと言わんばかりに水色に光り、イヤイヤしている。
「そう…そんなにブランと離れるのが嫌なの?
いいでしょう…「運命の風のフルート」!あなたを追放します!
大好きなブランとどこへでも好きな所に行くといいわ!」
トルテ学院長は激昂した。

荷物といえるものは何もなかった。ブランはフツツカ魔法学院を去った。
ここでなら、うまくやっていけると思ったのにな…。また追い出されるのか…。
「セイレーンハーフ」であるが故に、ヨーク家から罵詈雑言(ばりぞうごん)を数限りなく浴びせられてきた。
一家離散の末、無一文。着のみ着のままの根無し草。生きるだけで精一杯の空虚な日々。
ブランの心は、マリアに助けられる以前の荒みきった状態に戻ってしまったかにみえた。
運命の風のフルートが「ごめんなさい、私のせいで…」と、しきりに謝っていた。
「どうして、謝るの?僕のために力を貸してくれたんだろう?」
ブランは、運命の風のフルートを優しく撫でてやる。運命の風のフルートは、嬉しそうにその身を委ねる。
「さてと…これからどこに行こうかな?」
ブランは、運命の風のフルートと共にウェルカム王国から旅立って行った。

「トルテ学院長、何もすぐにブランくんを退学させることなかったんじゃ…」と、シャイナ。
「シャイナ、今さら何言ってんの?」マリンが溜息をつく。
「あの時、ブランはね、こともあろうに学院長まで誘惑しちゃったのよ?」
ライムは、学院大誘惑事件のことをルルカに話して聞かせた。
「どうして、そんな事件を起こしたんですか?ブラン先輩」と、ルルカ。
「そ、それは…」ブランはテーブルに置かれたレシートに目を向けた。
「なぁ、キミたち。これ以上、長居するのも悪いだろ?そろそろ店を出ないか?」
ムジーククインテットの同窓会はこれでお開き…とは、ならなかった。

純喫茶「月桜(つきおう)亭」を出た後…。
「ブランは今、メンドーサ隊の事務所に住んでるんだよね?」と、ライム。
「うん、まぁね。
吟遊詩人クラスの先生としての仕事があるから、メンドーサ隊の隊員としてはあまり活動できないけど…」
「今からさぁ、メンドーサ隊の事務所に行かない?」
ライムが話を振ると、マリンもシャイナもルルカも乗ってきた。
「行こ行こ!例の「可愛い白衣の天使」にも会いたいし!」と、マリン。
「ブ、ブランくん…今、どんな生活してるのか気になるし…」シャイなシャイナ。
「もっともっとブラン先輩の伝説を聞きたいです!」冷静沈着なルルカでさえこの調子である。
こうして、ムジーククインテットの同窓会は、延長戦に突入することになった…!

ーおわり?ー




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.