Nicotto Town



海魔女の笛吹き【2】マリアを見つけた!

ウェルカム王国に帰ってきたブランは、看護兵のマリアがいるメンドーサ隊事務所を訪ねたが留守だった。

よく見たら、ドアに掛かっているドアプレートに丸文字で「お出かけ中ですぅ~」と書いてある。

そうして、幾度もすれ違いを繰り返し、いつまで経ってもマリアに会うことができないでいる。
さすがのブラン・ヨークもイライラし始めてきた。
(そうか…!自分から出てきてもらえばいいんだ…!)
ブランは、ウェルカム王国城の前で笛を吹き始めた。
「いや~ん♡ブラン・ヨーク様ぁ~♡ここにいらしたのね♡」
出てきたのはマリアではなく、ヨーコ王妃だった。
城のメイドやお世話係までヨーコ王妃と同じくブランにメロメロになりながらついてきている。
「ヨーコ王妃!急にどうなされたのだ!?」うろたえるカノン。
「ブラン・ヨークとか言ったな!ヨーコ王妃に一体何をした!?」目を瞑って笛を吹くブランに剣を向けるソナタ。
「彼女は、ここにはいないようだな…。
今、キミたちに兵を呼ばれちゃかなわないな。少しの間、大人しくしててよ…」
ブランはそう言うと、笛を吹きながら歩き始めた。その後をヨーコ王妃たちがついていく。
双子の王国騎士団団長のカノンとソナタは、後を追いかけようにも、笛の音に聞き惚れてしまって動けない。

ブランは、笛の音を国中に響かせてマリアを探し続けた。
笛の音を聴いて虜になった女性たちが、ブランの後ろにぞろぞろと列をなしてついていく。
虜になった女性たちの中に、学院を卒業したてのティルトたち「リリカルフォース」の面々やビリオンもいた。
(ここで焦って笛の調べを鈍らせれば、あの時と同じようにトルテ学院長に止められる…)
二度と同じ失敗はしない。ブランは至って冷静だった。
「マリア!どこへ行くんだ!?」マリアを止めようにも笛の音の魔力で身動きが取れないトリオン。
「…ブラン…さま…」うわ言のようにブランの名前を口にしながらフラフラと歩くマリア。
「マリア!やっと、見つけた…!」マリアの姿を認めたブランは思わず愛おしそうに目を細める。
「あ、あなたは…あの時…浜辺で助けた…ブラン・ヨーク…さん…?」
マリアの大きな青い瞳が澄んだり濁ったりしている。
マリアに対して笛の音の効き目が悪くなっている。その原因は彼女の心に誰か他に男がいるから。
「マリア…」ブランはマリアにゆっくり歩み寄り、彼女の唇を奪おうとした。
マリアは笛の音の魔力を自ら破り、毅然としてブランに言った。
「笛の音で虜にして、いくら心を奪っても、本当の愛は得られないです!」
マリアの言葉にブランはハッとした。これ以上、距離を縮められなくなった。
マリアは急にどうしたんだろうと不安そうにブランを見つめている。
その目尻にはうっすら涙が滲んでいた。キスは未遂に終わる。
「マリア、ごめんね…」キミにそんな表情(かお)をさせてしまった。泣かせてしまった…。
ブランは、マリアの頭を優しく撫でた後、マリアの涙をそっとキスで拭った。
(今はこれで退くけど、僕はキミを諦めたわけじゃないからね。このキスはその意思表示さ…)
ブランは、解呪の旋律を吹いて、みんなを元に戻し、いずこかへと去っていった…。

ーつづくー




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