Nicotto Town



王国歌合戦【3】海魔女ノ鎮魂歌【終】

「ねぇ、司会者のお兄さん。歌合戦は飛び入り参加OKなんだよね。私も参加させてもらえる?」

「え?…おーっと!ノエル・ヨークさん!ちょっと待ったコールからの飛び入り参加だぁ!」
一瞬、戸惑ったコトダ・マイクだったが、すぐにいつもの調子でまくし立てる。
「飛び入り参加。ノエル・ヨーク。海魔女ノ鎮魂歌(セイレーン・レクイエム)」
「!!、ライム!」
「海魔女ノ鎮魂歌(セイレーン・レクイエム)」と聞いて、ブランはすぐにライムに声をかけた。
『防魔協奏曲(プロテクション・コンチェルト)!!』
ブランとライムはフルートを吹いて結界を張り、ノエルの歌から身を守る。
竪琴で伴奏を奏でながら、この世のものとは思えぬ美しい歌声で歌い上げるノエル。
ノエルの歌を聴いているうちに、観客も司会者も出場者も魂を抜かれたように無気力になっていく。
ノエルは「海魔女ノ鎮魂歌(セイレーン・レクイエム)」を歌い終えると、ステージにふわりと降りた。
「私の歌、どうだった?鐘はいくつなの?あらら、私の歌に聞き惚れて鐘も打てないのかしら?」
「どういうつもりだ、ノエル・ヨーク…!」ブランはノエルを睨む。
「どういうつもりも何も、いつものようにみんなを黙らせてやっただけじゃない。
半分人間の血が入っている「セイレーンハーフ」を二人も生んだからっていう理由で、
お母さんがヨーク家を追い出されてから、極貧生活で不運続きの上、一家離散。
私はこの黒い翼を持って生まれたせいで、純粋種のセイレーン族や鳥人族、果ては悪賢い人間たちに、
恨まれ蔑まれ利用され、ずっと非道い目に遭わされてきたのよ!?
私に近づく奴は、みんな…敵なのよ…」ノエルは少し涙ぐむ。
「そ、そぼだっだんでふかぁ~」今のノエルの話を聞いていたマリアはボロ泣きしている。
「マリアちゃん!?」ライムが驚く。
「あの時、完全に出遅れていたから、マリアを守るので精一杯だったんだ…」
ブランは「防魔協奏曲(プロテクション・コンチェルト)」をマリアにも掛けていたのだ。
「本当に苦労なさったんですねぇ~。ブランさんのお姉さん~」マリアはノエルの手を取り、さらに泣いた。
「そうなのよ~。だから、セイレーンハーフだってことを隠さないといけなかったんだけど、
もうそうやって自分を偽るのもウンザリ~~!!」
もらい泣きして愚痴りまくるノエル。ノエルの話を涙ながらにちゃんと聞いているマリア。
そうして、ノエルは10時間も延々と話し、ようやく落ち着いた。
すでに、夜になっていた。ノエルは解呪の歌声で、無気力になっている会場のみんなを元に戻した。

そして、翌朝…。
「今日からメンドーサ隊に配属になった、ノエル・ヨークさんですぅ~!」
「ノエル・ヨークで~す!弟のブラン共々、コンゴトモ ヨロシクね♪」
「嘘…だろ…?嘘だと言ってくれ~!ノエル姉さーん!」
キャラ崩壊するほど錯乱するブランであった。

ーどうして、こうなった?おあとがよろしいようで…ー




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