Nicotto Town



シーナガルド【2】ピノとブランと家族の再会

ウェルカム王国の北東にある山奥の村「シーナガルド」。陸路ならば3日かかるが、飛んでいけば半日で着く。

「ノエル姉さん、飛ばしすぎ。もう疲れたよ…」
ブランは、セイレーンの翼で飛ぶこと自体がもう何年ぶりであり、
さらに、トリオンをおんぶして飛んでいたので二重の意味で慣れないことをしていた。
「もう、だらしないわね~。たまには背中の翼を動かさないとなまるわよ、ブラン!」
「あ!あれがシーナガルドの村ですかぁ!?」ノエルの背中からマリアが叫んだ。
「そうよ!ほら、あと少しよ、ブラン!頑張って!」「は~い」
そんなこんなで、ノエルたちは「シーナガルドの村」に到着した。

シーナガルドの村は、童話の絵本に出てきそうなメルヘンチックな雰囲気漂う可愛らしい村だった。
「背中と翼が痛い…」背中を丸めながら歩くブラン。彼の隣を歩くトリオン。
「ブランさん、大丈夫ですかぁ?」ブランの背中や翼をさすってあげるマリア。
「どうちたの?おせなか、いたいの?ピノがおまじないかけたげる!いたいのいたいのとんでけ~」
背中にピンク色の小さな翼が生えた幼い女の子がブランの翼を触っている。
「ピノ!お父さんとお母さんはどうしたの?」ノエルがピノに声をかける。
「ピノ!あんまり遠くに…あら、ノエル!…え?そこにいるのは…ブラン!ブランなのね!?」
母親らしき女性がブランに駆け寄り抱きしめた。

ここは、ノエルとブランの両親の家の中。
「私はタバサ・ヨーク。ノエルとブランと…そして、ピノの母です」
「えっ!?この子、僕の妹なの?」驚くブラン。
「ピノは、ここ「シーナガルドの村」で生まれた子だ。驚くのも無理はないよな」
スヤスヤ眠るピノの頭を撫でながら答える父「ジグルード・ヨーク」。
「それで、こちらのお二人は…」タバサはマリアとトリオンに視線を送る。
「ああ、彼らは僕がお世話になってるメンドーサ隊の…」と、ブランが紹介しようとしたが…。
「隊長のトリオンだ」「隊員のマリアですぅ~」自己紹介するトリオンとマリア。
「私もつい最近メンドーサ隊の隊員になったのよ」と、ノエル。
「まぁ、そうなの。ノエルもブランも元気でやってるのね…」タバサは少し涙ぐんでいた。
「ヨーク本家のお父様に勘当されてから、あなたたちには苦労ばかりかけさせてしまったわね…。
特に、ノエル。あなたには…」
「お母さん…。そりゃあ、昔は黒い翼のことでお母さんのことを恨んで責めたこともあったけど、
今はもう恨んでないわ」
手を取り合う母娘。それを見てマリアは思いっきりもらい泣きしていた。
(考えてみたら、僕もノエル姉さんもマリアに出会って変わったんだな…)
考えを巡らし、マリアを見つめるブランの眼差しはとても優しかった。

一方その頃、メンドーサ隊事務所では…。
チュニスの目利きでリモーネアマナツを品質別に選り分ける作業をしていた。
高品質のリモーネアマナツは、ウェルカム王国国王「ヨーコソ王」に献上したり、
純喫茶「月桜(つきおう)亭」に納品する手はずになっている。
それと同時進行でリモーネアマナツの皮を剥く作業に取り掛かる。
「皮は~、後でマーマレードにするから~、捨てないでね~」と、チュニス。
「これ、毎年やってるの?」と、ライム。ようやく皮むきのコツを掴んだらしい。
「せや。リモーネアマナツ以外にも色んな果物や野菜が大量に届くんや。
そのたんびにうちらは地獄を見ることになるんや…」
まるで怪談話でもするかのように怖い語り口調で喋るセリカ。
「チュニスの実家の果物や野菜が来るたびに、季節を感じるんだよね。風物詩っていうのかな?」
慣れた手つきで皮むきをしながら談笑するティルト。
「こないだのゴールドピーマンの時に手伝いに来てくれた学院の子たちが、
今回も手伝いに来てくれてるんだよね」と、リコシェ。
「ていうか、むしろ手伝いする人の数増えてるっていうか~」
「手伝ったら単位もらえるとかブラン先生に声かけられたとかそういうんじゃないのにね~」
魔法騎士クラスのミーハーコンビの女子二人がちゃっかりいたりする。
と、そこにお客さんが一人やってきた。

ーつづくー




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